ふわふわの中身

第20話 イチゴ大福(イチゴはピンクだとなお良し)

谷藤宅での疑惑の一夜からしばらくたった頃、

「送別会の二次会で、あなた聖子ちゃんとベタベタしてたじゃない?見てて苛々したの。」

と言う彼女の言葉がフラッシュバックした。


正直、飲みの席で社員にベタベタするのは日常茶飯時だったのだが、あぁそうか、谷藤さんは飲みの席にはほとんどいないからな、と納得した。

当時は有難いことに社員たちに可愛がられており、仕事終わりの飲み会にはかなりの頻度で参加させてもらっていた。宅飲みにもお呼ばれすることが多く、いずれの飲み会でも、終盤になると社員誰かしらに抱き締められたり、頭を撫でられたり、膝枕をしてもらったり…そんな感じで過ごしていた。


社員最年少の斉藤(聖子ちゃん)は、色白で小柄、ピンクのぷっくりした唇と大きな胸が特徴的な−−例えるならイチゴ大福のような女性だった。話し方もふわっとしており、本人が「昔から同性に好かれない」と言っていたことが妙にしっくりきた。仕事はきっちりやるタイプだったので私にとっては頼れる社員の1人であり、また歳も近いことから姉のように慕う先輩の1人でもあった。


斉藤は仕事終わりにほぼ毎回彼氏が迎えに来ており、飲み会の参加頻度はあまり高くなかったため、まれに彼女がいる場では率先して話をしに行った。

その場で斉藤はよく、「彼氏がいなかったら連れて帰るのに。」と私を抱きしめながら頭を撫でていた。私もふわふわとした彼女の胸の谷間に顔を埋め、すごく癒される、彼氏さんが羨ましい、ずっとふわふわしていたい、帰りたくない、帰らないで、と甘えるのがルーティンだった。谷藤は、おそらくこんなシーンを目撃したのだろう。別にこんなのは聖子さんに限ったことじゃないし、ただ甘えてただけで変な意図はなかったのにな、と溜息を吐く。


その状況が一変したのは、疑惑の一夜からそんなに経っていない、雪が静かに降る夜だった。

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