第19話 冒険心
びっくりするほど順調に進んでいた。
大規模戦闘は一度もなく、みんなの体力にも余裕がある。
金鉱脈も複数見つかった。
まだ道半ばだというのにすでに今回の
うまくいきすぎだった。
神経質になりすぎるくらい万端の準備をしても不測に陥るのが
誘い込まれている?
確かに
トラップにかけるような仕組みを持つ階層も存在する。
周りを見る。
不自然なところはないか?
空がある。洞窟型で草木は一本も生えてない、半水生型のモンスターが増えてきて、そろそろ多数。
斜度も上がってきた。きっと水脈が近い。
トラップがあるとしたらなんだ、このタイミングでどこかから水が溢れ出してきて全員溺れ死ぬとか?
ダメだいくらでも疑える。考えれば考えるほど不安が大きくなっていく。
「あ、やばいかも」
脚が震えてきた。我ながら肝が小さい。
*
昼の休憩に入り、また会議が招集された。
カミラさんも含め、幹部のみなさんの面持ちは似たり寄ったり。
議題の想像はついていた。
「諸君、問いたい。我々はどう進むべきだ?」
その問いの意図はみんなが理解していた。
漠然と感じている不安はみんな同じ。しかし引き返すほどの理由はない。
仮にトラップが存在したとして、その存在を最初に解き明かすのは我々【
「一応言っておくが、状況的に誘い込まれているとは言えない」
索敵班総括のジーモンさんが口を開く。
「一度も大型と戦闘していないのは、幸運もあるがそれ以上に我々の陣形が機能しているからだ。現に観測した大型は四十三体で、そのうち種類が断定できたのは二十五体。残り十八体は恐らく新種で、もしかすると
みんなが頷く。
そう、俺たちはやるべきことをやって、その結果うまくいっている。
何か異常なほどうまく行きすぎていると感じるのはいつもより準備が入念だから。
それ以上の感覚はない。
「その通りだが、ジーモン、この階層は明らかに不自然だ」
ハンスさんが言う。
「わかっている。でもこの漠然とした不安だけで引き返せない。
「前線パーティーの大規模調査とはいえ引き返した例はいくらでもある。今回はむしろ、深奥にまでは至ってなくとも
「いや、他パーティーを募るには情報が少なすぎるだろう。予感だけで何を対策するんだ」
「ここで帰ってみろ、闇地図がフィールブロンに溢れかえる羽目になるぞ」
「俺たちが全滅しても同じことだろう」
次々に意見が出て、話が進む。
そのどれもに一理があり、説得力がある。
【
若い冒険者が金のために無理な
その一方で当然仲間の命が大事だ。パーティー全体の行く末も考えねばならない。
難しい判断だったけど、俺は一方でどこか安心していた。
【
不要なものだと思っていたけど、こうしてみんなで共有する場もあるのだと思うと、嬉しかった。
「諸君、出尽くしたかね」
ある程度意見が出て、話が硬直したとき、カミラさんが口を開いた。
「危険は承知した。全員が恐れを共有できた。そして恐れは覚悟へと昇華できる。覚悟はかえって生存率を上げる一因になる」
みんな、目端をちょっとずつ合わせあって、微笑んだように見えた。
誰かが小声で言った。
また大将のいつものが始まった、と。
「こんな馬鹿げた理屈が通じるのは、我々が愚かな冒険者であるからだ」
何を指しているか、俺にもわかった。
──
冒険者という馬鹿者たちの、深奥への憧れ。
死ぬことを恐れるならそもそも
「ヴィム少年、君が言いあぐねている、想定される最悪の状況は?」
突然名指しされる。
戸惑いそうになったけど、カミラさん相手には仕方がない。
覚悟を決めた。
「はい、枝分かれした道も含めて、昨日から斜度が上がっていて、ついに下りと足し引き零になりました」
「それは何を表している?」
「膨大な水量が存在し、流れ込んできた場合、我々の後方がすべて水で埋まります。つまり
「わかった」
カミラさんは一拍置いて、言った。
「まだしばらくは進もう。もしもの場合に備え
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