最悪の出会い
この人達...知ってる!
「それじゃあ、あそこの開いている席に座ってね」
自己紹介を終えた三つ子の三姉妹が、俺の右隣、右斜め後ろ、後ろの席に座った。
なんか睨まれてる気がするが、気のせいだろう。
ガンっ!と、後ろの席に座っていた、ロングヘアのひらりに椅子の足を蹴られた。
「おい!何しとんじゃわれ!」
「は?急に何?キモ」
後ろを振り向くと、ひらりがゴミを見るような目をして、俺に逆ギレをカマしてきた。
「うわ...。優斗くんひど...。転校生に急に切れるとか。ひらりちゃん可愛そー」
俺たちのやり取りを見ていたクラスメイトが、ヒソヒソと話ている。
俺が被害者だ!馬鹿か低脳ども!
と、言ってやれる勇気があれば良かったのだが、あいにくその勇気は俺にはなく、
ひらりを睨んでいると、
「急に怒るのはだめですよ、優斗くん!」
「サイてー」
横にいた紗季とかなえにまで罵られた。
「お前ら....!」
ここで怒って反論しては、相手の思うつぼではないか!我慢するんだ、零優斗。
「(おい。確かにさっきあったことは俺が悪かったかもしれないが、やりすぎだ!)
小声でひらりに話しかけると、もう一回、ガンッ!と、椅子を蹴られた。
...最悪だ。これからコイツらの下で働くってのに、仕事をする前から嫌われてるんじゃまずすぎる!あんなことさえなければ....
朝、雲ひとつない快晴の下、いつもどおりに学校の校門に入ろうとすると、校門前にある道路に、一台の黒いリムジンが止まっていた。
「すっげえ!どんな金持ちだよ...」
初めて見るリムジンに感動していると、中から三人の少女が出てきた。
「ありがと、運転手さん。....。なにしてんの、あんた?」
声のする方に顔を向けると、超お嬢様学校である桐蔭学園高校の制服を着た三人の少女が、こちらを訝しげに見ていた。
「はっ!こんにちは!ここの高校に通っております、零優斗と申します!...。お金を貸してください!」
俺はお嬢様たちに、あろうことか初対面で金を貸せと口走ってしまった。
しかしこれには訳がある。最近俺には仕事が回ってこないため、本格的に貧困を極めているのだ。そのため、金持ちを見つけたら飛びついてしまうのも仕方がない。
「は?何いってんのあんた。さよなら」
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
どうにかして引き止めなければと思い、腕を掴んだら、俺の引く力が強すぎたのか、掴んだ相手はバランスを崩して床に尻もちをついた。
「っ!いったぁ」
「あ、すみません!本当に、すまない..」
...やらかした...。
少女は俺を横目で睨むと、
「最悪。死ね」
腹の底からだしたような低い声で、怒鳴りもせずにそう吐き捨て、歩いていってしまった。
「や、やらかした!初対面の人に俺はなんてことをしたんだ!最悪だアアァァァ!」
今思い出してみると、完全に俺が悪い。椅子を蹴られるのも、当たり前だろう。
一人で脳内反省会を開いていると、授業開始を知らせる鐘がなり、先生が教室に入ってきた。
.....授業が終わったら、謝るか....
どう謝ればうまく伝わるのかを考えていて、授業は全然耳に入ってこなかった。
お読みいただき、ありがとうございます!
直したほうがいい点等ありましたら、言ってくれると大ダスカリデス!
ではまた!
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