【27曲目】ギルド
<intro>
ブルーノは受け身を取ってすぐに起き上がり態勢を立て直した。
「旦那・・・すまん、舐めてた。こっからは本気だ」
そう言って斬りかかるブルーノの攻撃はスピードも圧力も、
にゃるほどね。やっぱり
ブルーノは攻勢の手をゆるめることなく続けざまに斬りかかるが、圧倒的に速度で上回るうえに
「どう? 圧倒的?」
「・・・まいった」
「モニカちゃん・・・大丈夫だよ、
ニヤリと笑うノーマンの後ろで、モニカはブルーノを援護するために攻撃魔法の準備をしていた。ノーマンは二人と距離をとるように後方に飛ぶと、急にやる気をなくしたように不満を漏らす。
「あーあ、なんか消化不良だなあ」
そう言って持っていた剣をブルーノに投げて返すと、ブルーノはそれを掴んで鞘に納める。
「けっこう本気で挑んだんだが・・・」
「本気だったけど、全力じゃないでしょ? まだまだ手の内隠してる感じ? 全力だったら、僕に剣を抜かせることくらいはできそうだったけどね」
「?」
「なんか値踏みされたみたいで気分悪い」
「スマン。だが、どうしても旦那の・・・☆7の
ブルーノはギルドマスターらしいキリっとした表情でノーマンに向き合う。
まあ、わかってもらえただけで良しとするか。
「じゃあ、僕の話は信じてもらえたってことでいい?」
「今はまだ咀嚼中だが飲み込めるように頑張る」
「アハハ、その表現いいね。じゃあ改めて、冒険者ギルドに登録させてもらうよ。いいでしょ?モニカちゃん」
モニカは凛とした姿勢でツカツカとノーマンの方に歩み寄り、目の前で立ち止まり目が合うとニコリと笑った。そして、ノーマンの両手を強く握り瞳をキラキラさせる。
「よろしくお願いしますね、ノーマンさん」
難易度の高い仕事をどんどん押し付けてやろうという企みを、瞳の輝きから察したノーマンの全身に戦慄が走る。
「ははは・・・お手柔らかにお願いします。とっ、とりあえずは☆5の
<side-A>
「おいブルよ、なんでそんな不満気な顔してんだよ?」
並んで歩くブルーノの仏頂面にノーマンはクレームを入れた。
「だってよ、旦那。いくら☆の差があるとはいえ、一応ギルドマスターやってる人間があまりにもだろ・・・」
「いやいやいや。それを言ったら、僕だってあんたを殺さないまでも気絶くらいはさせてやろうって力加減で蹴ったのに、すぐに立ち上がって来やがってさ。☆の差があるのに、こっちがへこむって話だっての」
「へえ、そうだったのか。
「で、今はどこに向かってるんだ」
「とりあえず、職人ギルドに行く」
「職人ギルド?」
「ああ。旦那の話がホントなら冒険者ギルドだけの問題じゃなくなる」
「ホントならって、まだ疑ってんのか?」
「いやいや、そういうことじゃなくて。とにかくここは俺に任せてくれ」
「ふーん」
まあ、仮にもこのフィリトンにおける冒険者の責任者だ。一人で迷走するよりコイツのすすめに従うべきだろうな。
「で、職人ギルドってどういうところなの?」
「大公直属の三大ギルドの1つだ」
「三大ギルド?」
ブルーノは何も知らないノーマンに得意気に説明をはじめた。
「もしかして、ブルってめちゃくちゃ偉いの?」
「ふふーん。恐れ入ったか?」
腕組みしてふんぞり返ってみせるブルーノに、ノーマンは少しイラっとしてあえて無視した。
「つまり、これから向かう職人ギルドのマスターにも筋を通しといたほうがいいってことだな?」
「まあな。旦那がここまでで集めた不要なアイテムやら装備品やらも処分できるしな」
「そんなん道具屋とか武器屋とかでいいんじゃないのか?」
「もちろんそれでもいいけど、鑑定が必要な品物は結局職人ギルドに回されるからな。二度手間で面倒くさいだろ?」
「ふーん、もう考えるも面倒くさいから任せるよ」
投げやりなノーマンの態度にやれやれといった調子でブルーノは少しあきれた。
「アイテムの処分の他に、フィリトンで済ませたい用事はあんのか?旦那」
「そうだなあ、
「だったらなおさら職人ギルドのマスターには会っとくべきだ」
「どういうこと?」
「あいつはロカーナでは最強クラスの
「職人ギルドのマスターが?」
「おう」
なんかよくわからないが、とりあえずその人も重要人物なわけだ。
「それで、ここが職人ギルドの本部だ」
会話しながら歩いていた二人はいつの間にか職人ギルドの本部に到着していた。
「へえ、冒険者ギルドよりでかいな。門も立派だし、塀もえらく高いし随分厳重だね」
「冒険者ギルドは貴重品があるわけでもないし、そもそも、出入りしている連中が守衛みたいなもんだから、厳重にする必要がないだろ? それに、ここは冒険者ギルドと商業ギルドの倉庫も兼ねているからな。フィリトンの物流にとって最重要拠点なんだ」
「倉庫?
「バカ言うなよ旦那。冒険者ギルドはともかくギルドの職員全員が
「あっ、なるほど」
「
「なるほどねえ」
まあこの国のシステムがそうなんだからそれでいいか。俺にはあまり関係ない。
「じゃあ中に入ろう。おう、お疲れ」
ブルーノは警備兵に話しかける。
「あっ、ギルドマスター。お疲れ様です」
「
「はい、今朝方二日酔いでフラフラしながら出勤しましたよ」
二日酔い?最強クラスの
「マスターに用事があるんで通してもらうぞ」
「はい、どうぞ」
二人は大門の脇にある通用口から中に入ると中庭を抜け、入り口の警備兵に軽く挨拶をして建物の中に入った。
「ここの警備兵も冒険者ギルドから派遣した冒険者なんだ。ついでに言うと、フィリトンは他の貴族領や大都市と違って軍隊がない」
「はい?」
「有事の際には大公陛下からの依頼で冒険者ギルドが兵士を用意する」
その仕組みがずいぶん変わっているのは異世界から来た俺でもわかるが、それも俺には関係ない。とは言うものの自然と疑問が沸いてくる。
「警察とかも冒険者ギルド?」
「警察?ああ憲兵のことか。王都からロカーナ王立軍の憲兵が出張で駐在しているが、ありゃフィリトンを監視しているようなもんさ。犯罪の取り締まりに関しても結局のところ
ってことは、ブルは日本で言ったら防衛大臣兼警察庁長官?
「ブル・・・お前ホントに偉いんだな」
ブルーノはニヤケた顔で自慢気に答える。
「まあな」
ノーマンはその顔にまた少し腹が立った。
「ところで、外観からもっと広いのかと思ったが、中の造りは冒険者ギルドとさほど変わらないな」
「ああ、この建物がでかいのはほとんど倉庫部分で窓口はこんなもんだ」
ギルド内に入り受付をブルーノの顔パスでスルーすると、二人は奥の階段まで進んでいく。
ギルドマスターが大臣クラスの要職であることはだいぶわかった。ってことは当然、職人ギルドのマスター兼最強クラス
階段を上がって4階にあるマスターの執務室に到着すると鍵がかかっており、ブルーノは乱暴にドアノブをガチャガチャとしてドアを叩きながら声を上げる。
「おい、起きてるか?っていうか寝てても起きろ」
「乱暴だな。いいのか?最強クラスの
「いいんだよ。おい早く鍵を開けろ」
ブルーノがドアを叩き続けていると部屋の中から怒声が飛ぶ。
「うるさいなあ。頭痛いんだから静かにしてよ」
女?というかこの声。
しばらくしてカチャっと鍵を開ける音がするとドアが開き、黒髪の美女が
「もう何なのよ、二日酔いなんだから放っておいてよ・・・あっ」
ノーマンと美女の目が合う。
まじか?男に捨てられて泣いてたマリカが職人ギルドのマスターで、ロカーナで最強クラスの
「ははは。旦那、驚いただろ?」
「うん、まあね」
ノーマンは興味なさげな
ブルーノはドッキリ大成功とばかりに豪快に笑っていたが、マリカは二日酔いで痛む頭を抱えながら力ない声をしぼりだす。
「そうね、ノーマンは昨日この街に来たばかりで知らなかったんだよね。それで何?二人して酒に呑まれた私を笑いに来たわけ?」
ノーマンは二人の会話を他人事のように煙草を吸いながら聞いていた。
「いや、極めて重要な問題が発生した」
問題って・・・でも、まあ確かに勇者と同レベルの存在は、国家間のミリタリーバランスやら、この世界のパワーバランスに影響を与えかねないわけだし、問題といえば問題か・・・。
「何よ問題って、緊急なの?」
「うまく説明できないから、ノーマンの口から聞いてくれ」
「えーっ、まじか?お前さっき任せろって言ったじゃん」
まあ、間違って説明されても困るし俺の口から伝える方が安全かもな。
ノーマンはあきらめたように先ほど冒険者ギルドで話した内容を繰り返した。話を全て聞き終えるとブルーノたちが狼狽して見せたのとはうって変わり、マリカは極めて冷静に事態を受け止めて見せる。
「そういうことね」
「どういうこと?」
「ノーマンの歌に魔力を感じたことよ。あれは
へえ目の付け所が違うねえ。てかやっぱり俺の歌は人にも影響を与える
「驚かないの?」
「何を?」
「☆7とか
「別に・・・あっ、もしかして驚いて欲しかった?」
いやそういうわけではないけれど、ブルやモニカの反応とはえらく違うな。
「お前は相変わらず何事にも動じないやつだな」
いやいや、男に振られて荒れてましたけど。
「はあ?あのね、アンタがいちいち驚きすぎなのよブルーノ。知らない
二日酔いつらそうだな。でも、冒険の話は正論だ。さすが職人ギルドのマスターだけあって職人気質のあくなき探求心。これは少し恩を売っておくか。
「あの良かったら、これ飲んで」
ノーマンは
「何これ?酔い覚まし?」
「まあいいから、だまされたと思って一口飲んで見てよ」
マリカは蓋を開けて渋々口を付けると、全身にブルブルっと震えを感じる。そしてその震えが一瞬でおさまると、二日酔いの頭痛が消えていることに気づいた。
「凄い・・・なにこれ? 回復薬じゃないわよね」
「微量の『浄化結晶』を『ウルズ泉水』に溶かしたんだ。まだちゃんとは調べてないけど、状態異常に効果があるみたいでね。ただし薬効が強すぎるから濃度は慎重に見極めなきゃならんのだけど・・」
「浄化結晶?ウルズ泉水?それなに?」
マリカが瞳を輝かせながら身を乗り出してノーマンに尋ねると、ノーマンはその圧に少し引きながら答える。
「ラっ、ラーガ森林で採集したアイテムだけど・・・珍しいの?」
「ラーガ森林でそんなの採れるの?ブルーノ、聞いたことある?」
「ない」
そこからノーマンは、自身が初めて毒に侵されたところからウルズの泉で回復したところまでの体験談を諸々の詳細を省いて説明した。
「それでこれがその浄化結晶とウルズ泉水だ」
「これ、職人ギルドに提供できるの?」
今後のためにも恩は売っとくべきだな・・・できるだけ小出しに。
「いや、マリカ個人にあげるよ。研究したいでしょ?未知のアイテム。僕が調べるより専門家に任せた方がいいかなって」
「おい旦那、いいのか? こういう未知の素材は価値があるんだぞ」
「うん、まだ持ってるし、詳しい薬効とかも知りたかったし、むしろこちらが依頼したようなもんさ。今飲んだ
「ノーマン、あんた最高。☆7大歓迎よ!」
マリカはもはや失恋のことなど忘れ去ったかのように上機嫌になった。
<side-B>
「旦那はどうやら、俺たちの知らない事を色々と知っていそうだな」
ブルーノが真顔になってノーマンに詰め寄ると、ノーマンはそれに嫌味で返す。
「かもね。でも逆にブルたちが当たり前に知ってる事を、結構知らないみたいだけど。でも、ラーガ森林なんて
まあ、
「いやいやいや旦那ぁ、冗談だろ? ラーガ森林は並みの冒険者が立ち入れる場所じゃあない。古代種だってウヨウヨいるんだぞ?」
「それそれ。さっきも古代種がうんぬんと言ってたけどさ、ラーガ森林の
「それ誰に聞いたんだ?」
「僕を保護してくれた、博識な爺さん」
マリカはノーマンからの
「あのさ、その知識って随分古くない?」
「爺さんだからな」
「違う違う、そんなレベルじゃないわ。それって古文書なんかで書かれてる四・五百年以上昔のレウラ半島の話よ」
へっ?・・・やっぱり、あの爺さんは人外決定だな。そういう時間の中で生きて来たお
「レウラ半島は大公陛下の領地でな、
「えっ、聞いてない」
「もちろん、迷い込んだ冒険者の
「が・・・なんだよ?」
「後日いろいろ聞かれることになるかもしれんな」
「誰に?」
「俺に」
「だから今、話してんじゃん」
「まあな」
なんだこの不毛な会話は。超面倒くさい・・・っていうかディオさんよ。そんなヤバいエリアに、よくもこの世界初心者の俺を放り込んでくれたな。
「一応、マリウスたちの
「ふーん。じゃあ、無事だったら彼らが色々発見できたかもね」
「いやあ、
「
「そうかあ、アイツらの武器や装備品は高価な
命より装備品の方に後悔を感じるあたり、冒険者という職業はなかなかドライなのかもしれないな。ん? 装備品・・・そうだ、あの件を早々に解決してしまおう。
「あのさ、処分したいというか取り扱いに困ってる品物があるんだが、相談に乗ってもらえんだろうか?」
ノーマンとブルーノの会話そっちのけでお土産を愛で続けていたマリカは、ノーマンの取り扱いに困っている品物に反応し満面の笑みを浮かべる。
「もちろんよ。そしたら場所を変えましょう。アイテムのお礼にあたしの特別室に招待するわ」
三人は執務室を出て倉庫へと向かって歩いている。
「ねえねえ、マリカには秘書とかいないの?」
「必要ないねえ」
「優秀なんだ」
「別にあたしが優秀ってわけじゃないよ。ブルーノは脳筋だからモニカがいないとギルドの運営ができないのよ」
「おいっ」
「ああ、なるほどね。モニカちゃん切れ者っぽいもんね」
「なるほどってなんだよ。でも・・・正直モニカがいないとどうにもならないんだよな」
頭を掻きながら反省の表情を見せるブルーノ。
あはは、
「着いたよ」
マリカが厳重に閉ざされた扉の鍵を開け倉庫内に入ると、広大な敷地に大小様々なアイテムが所狭しと並んでいた。マリカとブルーノにとっての見慣れた光景にノーマンは目を丸くする。
「こりゃ凄い」
「でしょ?さあ、こっちよ」
マリカは広大な倉庫の一角にある専用の研究室に二人を招き入れる。
「ここが、私専用のの特別室だよ」
おやおや、見事な実験機材たちだね。学校の理科室みたい。見たことない機材もあるし、こりゃ楽しそうだ。
「そんで、ノーマン。相談したい品物ってのはなんなの?」
「けっこう大量なんだ」
ノーマンは二人をいったん特別室から連れ出し、約千人分の装備品の山を
「冒険者ギルドと職人ギルドの代表が二人そろってるからね。この件を相談するにはちょうど良いかなと思って」
「これって、あれか?」
ブルーノの問いかけにノーマンはうなずいた。
「認識票を付けてた骸骨の装備品、一応できるだけ回収してきたんだ。これも持ち主の関係者に遺品として返却するべきかなと考えたんだけど・・・どうだろう?」
ブルーノとマリカは目を丸くしたまま装備品のいくつかを手に取って、見覚えのあるいくつかの装備品を感慨深げに見つめた。そして、多くの同僚の死を実感した冒険者ギルドのマスターは、少し涙ぐみながら感情を押し殺す。
「旦那。あんたの言ってた事が全部事実なんだと思い知らされる光景だな」
「ああ」
「気持ちの中で帰らぬ人ってことで済ましてたんだ。でも、やっぱりちゃんと受け入れなきゃならんな。ありがとな、旦那」
「まあ・・・その・・・うん」
「無駄死にじゃなかったんだと思いたい」
「あのね、冒険者ギルドに登録する人もマレディ討伐に参加した人も、誰かにやらされたわけでもなく自分で選んだわけでしょ? 自分で選んだ道を進めて、みんなイイ人生だったんじゃねえかな?」
「旦那」
ノーマンとブルーノは大勢の冒険者の死に対し、少し感傷に浸りながら会話を交わしていたが、そんな2人を職人ギルドのマスターが容赦なく現実に引き戻した。
「で、これはどうするの冒険者ギルドの責任者さん」
こいつ、男に捨てられてあんなに泣いてたくせに。自分大好きか?
ブルーノは自分の顔を平手でパシッと叩き気合を入れなおす。
「そうだな、旦那の気持ちは正直ありがたい。だが、冒険者のルールとしてアイテムの所有権は回収した奴にあるんだ。それに、世界各地に散らばる遺族に個別に装備品を返却するのは物理的にも予算的にも難しい。現実問題、旦那が回収してくれた認識票だって一部の遺族にしか届けられないだろうから、ほとんどは冒険者ギルド内の慰霊碑に納めることになるだろう・・・ってことで、全部旦那の物ってことにしてくれんか?」
「職人ギルドマスターのご意見は?」
「あたしもそれでいいと思う。それに、どうせ全部うちが引き取るんでしょ?」
「うん、まあね」
「どうせ価値のありそうなものは抜いてあるんでしょ?」
マリカは意地悪な笑みを浮かべながらノーマンに問いかける。
ドキッ・・・嫌な女。
「あはは、価値の有無は僕には判断できないよ。
「まあ、いいわ。でも、数が数だから査定に時間かかるけど」
「ああ、それは問題ない。別にお金には困ってないから、のんびりやってよ」
こうして話がひと段落したところで、ブルーノが思い出したよう話題を変える。
「そうだ、旦那。
「ああ、そうそう。図書館みたいのがあれば、調べてみたいんだけど・・・」
「水臭いじゃないノーマン。魔法はあたしの専門分野だし、調べもんなら手伝うよ」
どう見ても下心のありそうな表情で、マリカはノーマンに協力を申し出た。
マリカは俺がまだ何か隠し持っていることに完全に気づいているな。まあ、それは今後の関係性次第ってことかな。
「そうだね。じゃあ、色々教えてもらおうかな」
そう言ってノーマンが右手を差し出すと、マリカはニヤニヤと笑いながらその手を取り、いわくありげな契約のような握手が交わされた。
「そしたら、俺はギルドに戻るから、旦那のことはよろしくな、マリカ」
「はーい」
「えっ、帰っちゃうの?」
「俺だって暇じゃないんだ。それに、あんまり席を外してるとモニカに叱られるしな」
完全に尻に敷かれとるな、ブル。
「あはは、とりあえず今日は色々ありがと」
「おう、またな」
背中越しに手を振ったまま哀愁を漂わせながら、ブルーノは倉庫から一人先に出ていった。
「さっ、あたしらも行くよ」
「どこに?」
「図書室」
「館じゃなくて室なんだ」
「
「そうなの?」
「だから、図書室なの」
つまり職人ギルド内にあるってことね。
「ねえねえ、マリカって☆いくつなの?」
並んで歩くマリカに、ノーマンは恐る恐る尋ねてみた。
「興味あるの?」
「まあね。だって気になるじゃん? ロカーナ最強クラスの
「ブルーノと同じ★6よ。あたしもアイツも、もっと上でもいいくらいの経験はあるんだけどね・・・」
「頭打ちってこと?」
「かもね。たぶん☆6の壁を超えるには、
「
「ええ、アタシは
「2人とも、なんで
「アタシは専門で極めたいから。ブルーノも多分おなじ・・・違うか」
「違う?」
「アイツは脳筋だから、
「なるほど」
「ノーマンはどうするの?」
「うーん、それはまだ考えてないかな。自分の
「そりゃそうね」
ふむふむ、中々奥深い世界だな。そもそも、そのとっかかりの最初の
※【28曲目】は2022年9月20日に公開です。
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