【20曲目】ホネホネ・ロック
<intro>
「師匠、いよいよですね。一気に突入しますか」
なんでこの子はこんなに好戦的なのかね・・・さっきまでゲロ吐いてたくせに。
「いや、ここはコー四郎にひと肌脱いでもらう」
と言っても、脱皮しろということではない。
「コーザ?」
「ここの大将の
「
「パイアお姉さまとバジリスクの野郎の時は
「でも
「
「いてっ」痛くはないが肩をすくめるレオ。
「
「あっ、元冒険者か」
「たしかに個々の
「そうですね」
「そりゃ、お前たち個々と
「そうなんすか?」
「だって自称最強チームの連中がピギ夫とらえるのに罠まで仕掛けてどんだけ苦労したと思う?」
「ああ、そういえば」
「とにかくだ、相手が強かろうと弱かろうと初めて対峙する相手に油断はナシだ。今回だけじゃなくて、これからもずっとだよ。忘れないでくれ」
「
「まず、コー四郎はリサイズでどこまで小さくできる?」
「やってみます」
レオが
「うん、上出来。レオはコー四郎と
「できます」
「範囲はどこまでいける?」
「うーん。わかんないっすけど、この山の中くらいなら余裕っす」
「よし。とりあえず僕の
ノーマンはコーザをひょいと持ち上げ腕に巻き付けた。
「俺はなにすれば?」
「レオはコーザから得た情報をまとめろ。そんでガウ太、カー助、ピギ夫は僕と一緒に陽動だ。できるだけコー四郎から注意をそらすぞ」
「というかさ、ずっと気にはなってたんだけど、なんでみんな体のサイズがデカくないの?お前らホントはもっと馬鹿デカいだろ?」
「それが、体が大きくなると魔力の消費が激しいらしくて。こんくらいが丁度いいみたいっす」
「そういうもんなんだ。まあたしかにデカい奴って、体力の
「デカい状態で
「うんうん、わかった。とりあえず陽動作戦だからそんなに破壊力はいらんか。そのまま僕についてきなさい」
<side-A>
3匹を従えて
「おいおいおい骨野郎。おめえのとこのパイアとバジリスクは、ぶっ殺してやったぞ。あーん。骨カチカチいわせて震えてる音がここまで聞こえてんぞ。ビビッてねーで出てこいや骨。ボッキボキに砕いて粉々にしてやんよー」
普段が比較的紳士的で温厚なノーマンの言動に、少し引き気味の3匹に向かってノーマンが指示をだす。
(お前らもやんだよ、目一杯バカにしてやれ)
3匹は顔を見合わせ意地悪い笑顔を浮かべると、一斉に吠えはじめた。
「ウオン、ウオン、ウオン」
「カー、カー、カー」
「フギー、フギー、フギー」
俺にはわからんが
「ふん、下らん。なんのつもりだ? というよりなぜ
この時点で
側近の
「乗ってこないな。っていうか聞こえてないのかな?言葉責めがダメなら実力行使だな」
そして、ノーマンが3匹に新たな指令を出すと3匹はウンウンとうなずき横一列に並び、ノーマンの「撃て」の合図で一斉に各々の攻撃魔法を連続で城門に向けて放った。そして、ノーマンも追撃とばかりに
「やっとノって来たな。あそこに
ノーマンはコーザを蛇団子にして城壁の上部へトルネード投法で放り込んだ。こうして、
ノーマンたちは攻撃対象を城門から
ゆるいな。
その様子を観察していた
今は
(城壁へ向かった約40体の
「コーザ、ありがとう。あまり深入りしないでいいからね。ザックリわかれば師匠は大丈夫だから」
(かしこまりました。では)
レオと友人のように接する古参の
<side-B>
「レオ、コー四郎からの報告は?」
「城内警備の
さっきのレベルで40体なら楽勝だな。
「でもそれは主力じゃなくて、主力は一箇所に集められているらしいです。コーザが今そこに向かってます」
「そっか、そしたらあまり深入りさせるな。ザックリ数だけ確認したらすぐに
「ちゃんと言ってありますよ、任せてください」
師匠の考えていることを先回りして行動できたことに、レオは少し嬉しくなった。
増援の
先ほどの
冒険者ギルド最強って言われてた連中が☆5だろ?ってことはレオの親父とフィオの親父が参加したマレディ山討伐の冒険者は強くてもせいぜい☆4くらいだったはずだ。
ノーマンの不安を知ってか知らずか、3匹が口裏を合わせたように急に攻勢に転ずると形勢が一気に逆転して、ほどなくして約40体の
「あれ?この子たちなんで急に優勢になったの?」
そんな疑問を感じながらもノーマンは城壁に手を当て
うーん、構造は簡単だな。様式美っつーか、特に誰かの侵攻に備えた施設じゃあないね。って、そりゃそうだわな。油断とは思わんよ。標高4000m近いこの山頂に人間が攻め込んでくるとは普通は考えんだろうよ。攻め込んできたって大概は連中は高山病なり疲労なりで使い物にならんだろうし。戦略拠点ってよりも公園?って感じの印象かも。
マレディ山の山頂に置かれたこの
「レオ、コー四郎はどうなってる?」
「中央の大広場に到着して
(想像していたよりも数が多いです。たしかに人型の
コーザがレオに報告をしているその時、500m離れた謁見台から放たれた
「そこの蛇。お前は
「
遠く離れた南門でレオが慌ててコーザを収容すると、コーザを襲った
「消えただと?いたのは間違いないようだな。何の魔法だ、忌々しい」
「敵は南より現れる。それを半包囲するように城壁の上から魔法と弓矢で攻撃、広場には
声なき声で
「おかえり、コー四郎。でかした、俺の腕に絡まれ」
そう指示されると
「ケガしてるな、治療しとこう」
そういってノーマンが治療薬を施すと、コーザはペコリと頭を下げて謝意をあらわした。ノーマンはその仕草が可愛く思えたのか、コーザの頭をツンツンと撫でてやった。
「師匠、どうします?」
「へっ?行くよ」
「そうじゃなくて、どう戦いますか」
確かにさっきの戦いを見る限りじゃ、これまでみたいに楽勝というわけにはいかんかもな・・・。
「自分に考えがあるんすけど」
でたでた。またはじまった。今度は何を言い出すんだろう・・・コワいなあ、もう。
「聞かせておくれ」
「さっきの戦い見てて・・・師匠、やっぱり
そこからノーマンはレオの発言の理由と作戦概要を聞かされ、呆然としてしまった。
だからこいつは・・・どう考えても主人公キャラなんだよ。だいたい『レオナルド』って名前も『レオ』って愛称も、両親を失った少年ってところも全部主人公っぽいじゃん。ただな、俺だって絶対に脇役のままじゃ、終わんねえからな。
「ククク、どんな手を使ってパイアとバジリスクを倒したかは知らぬが、対人間の最強集団たるわが
思えば戦闘自体久しぶりだな。魔王陛下が前回の戦争を停戦して以来、冒険者の亡骸を収集して地道に戦力を増強してきたものの、厳命によって人間への大規模な侵攻は禁止され専守防衛に徹してきた。かといってここまで攻め込んでくる敵もなく、私は退屈していたのかもしれない・・・柄にもなく興奮している。一方的な虐殺になるのは分かり切ったことだが、退屈よりも幾分かはましだな。
自慢の軍勢を運用する機会に恵まれなかった
「よくぞここまでたどり着いたな、人間。我が名はリッチー。名を聞こう人間」
こいつはバジリスクの馬鹿と違って、油断しないタイプの将軍だな。
「僕はノーマン、こっちはレオナルド。短い間になるとは思いますがどうぞお見知りおきを」
ノーマンは先ほどの下品な挑発を詫びはしないものの、あえて丁寧にあいさつしてみせた。
「魔王軍の将帥2人を倒した強き者よ、我が軍門に下るなら命は助けてやるがどうだ」
うわっ、冷静だし合理的だわ。こういうタイプと駆け引きしたくないんだよな。
するとレオが突然ぶち切れたように挑発的な怒声をリッチーに浴びせる。
「ごちゃごちゃうるせーぞ、この骸骨野郎。師匠がお前の下につくわけないだろ」
そう言って全力の
「レオさん。もうお前の作戦通りにやるしかないからな」
「
レオはピギーに乗って敵左翼、ガウは入り口で倒した
『あの程度なら、一体一体とまともに戦う必要はないっす。俺はピギーに乗って、
作戦を聞いた時は『究極の
作戦通りに
『だって、さっき城壁の
『コーザが気づかれないための陽動って言ったの、師匠じゃないっすか』
『苦戦してるふりだったってこと?』
『だって、あっさりと倒したら陽動にも時間稼ぎにもならないでしょ?』
『・・・』
『みんな
『そ、そ、そういうことね』
だから突然、優勢になったんだ。
決して
何が起きている。我が
想像だにしなかった展開に
同情するよリッチー閣下、人間の軍隊にあんなやつらいないもんな。あんたは間違っちゃいないし無能でもない。しっかり軍備を整え、ちゃんと立案し実行していた。立派な指揮官だし立派な将帥だよ。人間との戦争だったらアンタのカワイイ
謁見台で呆然とするリッチーを大広場の中央から観察していたノーマンは、敵ながらあまりに不憫なリッチーに同情と憐れみの眼差しを向けざるを得なかった。
ほぼ壊滅状態の
軍勢はまた時間をかけて作り出せばいい。ただこいつらだけは絶対に生かしては帰さない。そうだ、こいつらを我が軍勢の手駒にしよう。そうすれば、新生・
・・・って思ってる雰囲気だな。
ノーマンはリッチーを観察しながらそう思う。
リッチーは自身のプライドを守るためか勝算があるのか、精一杯の虚勢を張って強者の側の態度を崩さないまま、謁見台からノーマンたちに余裕の拍手とともに語りかける。
「やるじゃないか人間。ここまでとはね。これならあの成り上がり
「成り上がり?」
「パイアもバジリスクも
なるほど、
「なあ、大将。
「いや、我に従属することで生前よりも強化される」
教えてくれるんだ、意外といい奴だな。でもそれなら確かに負けるとは思わんな。
「だからノーマン。お前たちを殺し、今よりさらに強くなったお前たちを従え、我が
そう言ってリッチーが指揮棒で合図をすると、
「こ奴らは従属させた時、飛躍的にレベルが上がった
「強いの?」
「当然だ。わが最高傑作にして
げっ、パイアやバジリスク級ってことか?あれ×《かける》5体はキビシーぞ。
「師匠」
少しだけ焦っているノーマンにレオが歩み寄り、
「みんな、お疲れちゃん」
「こいつらと
でたでた。また、はじまったよ。
「うんうん、もう好きにしたらいいよ」
後始末はどうせ俺がやればいいんだろ。
もう完全に少年漫画ノリになってしまった展開に呆れてい、少し投げやりになったノーマンはレオの提案を諦めたように受け入れた。
さとこ。お前は、あんまり無茶しない子に育つといいな。
※【21曲目】は2022年7月26日に公開です。
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