【14曲目】大きな古時計
<intro>
約20年前にはじまった魔王軍侵攻の前夜、魔王はレウラ半島に勇者が出現することを預言した。
有史以来、魔王の脅威であり天敵でもある勇者を早い段階で排除することを目論んだ魔王は、侵攻に先んじてこの
『早い段階で勇者を発見し排除する』事を目的としたこの計画は、はじめのうちは順調に進んでいた。しかし、魔王軍の一部の
本来であればじゅうぶんに戦力を整え、圧倒的な力を人間に見せつけるはずであったが、開戦の前倒しは人間に激しい抵抗の余地を与えてしまう。
これにより戦略の大幅な変更を余儀なくされた魔王は、魔王軍の戦力増強と再編のため、やむを得ず勇者排除計画の規模縮小に舵を切る。
「思考能力のない建造物と人形には複雑な命令は与えられない」
魔王は出来るだけ
こうしてこの
実際、勇者が覚醒後にリオウ山脈に訪れていたなら、この
またそのころになると統制を欠いた人間の抵抗勢力が共闘体制をとり勇者たちを支援する動きが活発にり、抵抗勢力の中に『魔王討伐』の気運がいっそう高まっていった。
この時点で、すでに布石としての価値を失っていた
その後、魔王と勇者の直接対決ののちに魔王軍が撤退をはじめ、この戦争が一応の終結を迎えそこから約15年の時がたったのだが、魔王しか知らない無人の
魔王に登録された
<side-A>
そしてある晩、その時は突如としてやってきた。リオウ山脈でノーマンが解放したとてつもない殺気は山脈中を駆け巡り『
「強き者が現れた」
9体の
「バカでかい人型の敵が9体、こちらに接近してるのはわかってる。ただそれが、
ノーマンはそう嘆きながら戦いの準備をしていた。
「もし
かつて
「だけど
「ああ面倒だ。面倒な敵は逃げてしまえばいいと考えていたが、それが出来ないところが一番やっかいだ。なんで俺を追ってくるのかもだいたい想像がつく。どうせ、勇者かなんかがテリトリーに踏み入れたら自動で攻撃の命令が発動するみたいな感じなんだろうさ、ってことはやっぱり
そして目視できる位置まで接近した敵を見てうなだれる。
「やっぱ
9つ並んだ切り株の一つは可燃性の高いミューカスクロウラーの粘液につけておいたもので煙草の火を引火させると激しく燃え上がった。山を登ってくる
「やれやれ、じゃあお次は」ノーマンは二つ目の切り株を
「これならどうだ?」2つの
「この距離感でとりあえず試せることは全部やったかな」そう言って
物理的な防御力は相当高い。熱膨張で岩を割るにはあの火力じゃ足りないし、毒も岩に効くタイプではなかったみたいだな。攻撃力はどうなんだろう?
ノーマンは並列の陣形が完成する前に次の行動に移る。
「足を止めて陣を整えるなんて投石する気満々だからなあ、とりあえず1対1の時間が欲しい」
ノーマンは思いついたように
「よく漫画やアニメで出てくる振動剣を即興でやってみたけど、どうだろう?」
即興の新技『
「これは成功だな」
ところが、残された1体の
「何?しくったか?行軍速度にくらべて攻撃速度が圧倒的に速い」
「やばい、こんなの食らったら首がもげる」必死になって首をすくめてできる限りの防御を試みる。
すると、
「ウオン」
「ガウ太!」
<side-B>
☆7の勇者を排除するために作られた
「レオとカー助は無事か?」
「ウオン(うん)。ウオン(ふたりけが)。ウオン(うごけない)」
ノーマンは回復薬と治療薬をガウに渡す。
「
「ウオン(わかった)」素早くその場を離れる。
「とりあえず心配事が一つ減ったな。しかしこのスピードはやっかいだ。っていうか、一度攻撃を食らってみようかしら?」
危険な好奇心が突然生まれたノーマンは立ち上がった
「これはヤバい。とにかく痛い。全身骨折レベル。電車の追突事故だな」天を仰ぎながら
回復を確認してすぐさま戦線に復帰すると、
「痛みを感じる分、俺が不利かもしれないな。これならどうだ?」
相手の懐に入り先ほど覚えた
「うん知ってる。元の世界で買おうと思った『超音波カッター』の説明文にガラス・鉱物・金属には適さないって書いてあったもん」
その後も
「カー助?」
今でこそ人間の少年の
カークは両翼から強力な竜巻をおこすとその竜巻と羽の散弾攻撃を重ねて
あれ? 弾くだけのつもりだったけど割れちゃった。まあいい。
「カー助、離れろ」
相手の注意を自分に引き付けるためにノーマンは切り株を一つ
あれ、カー助の羽が所々に刺さってるな。天然の岩石だったらヒビやら脆い箇所くらいあるか。墓石も風化から劣化するって聞いたことあるしな。待てよ、俺さっき岩石を
先入観を捨てよう、まず
ノーマンはニヤリと笑った。
こんな使い道もあるんだね。さゆりちゃんの大きなお腹の中にいたさとこのカワイイ顔を、産婦人科で拝見いたしましたよ。これが『超音波検査エコー』だ。
ノーマンは
上空高くに退避中のカークを
「カー助。さっきの羽の竜巻、残りの8体にもバンバンぶつけろ」
「カー(りょうかい)」
山を登ってくる
すべての
「師匠。バケモンでしたね」
「どっちが?」
「どっちが?って?」
「どでかいバケモンみたいな連中の方か、それを倒した僕かだよ」
「どっちもですよ。でもね師匠、師匠がバケモンじゃなきゃ弟子になった意味がないです」
こいつは大物だよ。あきれながら、ノーマンは回復薬を一口飲んだ。
「これからどうしますか?」
「とりあえず、こいつらが出て来た場所に行ってみようかな」
「アイテムの回収は?」
「するよ、こんなに疲れたのにただ働きは性に合わない」
「じゃぁ、さっさと回収しちゃってくださいよ。自分が倒したわけじゃないんで」
「なに?そのツンデレ。あとで分配すればいいじゃん」
「嫌ですよ。俺ほとんどなんもしてないし」
「いやいや、カー助とガウ太の成果はお前のもんだろ?」
「俺はそう思ってませんから」
こいつ面倒くさいな。
「じゃあ、アイテムはいただくから弟子として手伝え」
「チッ、はいはい」
態度悪っ。戦闘に参加・貢献できなかったのが相当に悔しいんだな。
ノーマンたちは『魔鉱』と『魔晶石』という使い道のわからないアイテムを大量に回収すると、
「これって魔王軍の砦かなんかですかね?」
「俺が知るわけあるまい。ただ、
「これはもう役割を終えているね、魔力が活動していない」
「役割?」
「おそらくこのデカい石が俺を見つけて、それを
「それだけですか?」
「うんそれだけ。誰かがいた気配もないし使っていた形跡もない」
「どうします、壊しますか?」
「このデカい魔晶石は回収するけど、建物は放っておこう。そうだなあ、人が立ち入るような場所でもないし、入口の扉をしっかり閉じておけば
「秘密基地」レオの口元が緩む。
少し機嫌が直ったな。やっぱり子どもだ。
「
「いよいよカトリヤ村ですね」
「嬉しそうだね、レオ」
「俺、レウラ村以外知らないから楽しみなんです」
「僕も楽しみだよ」
「お酒がでしょ?」
「うるさいな」
ノーマンは煙草に火をつけ、格納庫の
どんな理由で何の目的で、どんな風に作られて、どれくらいの時間待ってたんだろうな。大変お待たせいたしました・・・お役目ご苦労様でした。
格納庫の扉をしっかり閉めて、
同じ☆4でも上位と下位で強さにかなり差があるな。☆5寄りの☆4と☆3寄りの☆4って感じか。☆の色の事も考えるとこれから先、☆の数だけで判断するのはやっぱり危険かもしれないね。
ノーマンはそんなことを考えながらレオたちの苦戦を悠長に見物していた。いざとなったら、自分がフォローすればいいくらいに考えているのだ。そして、そんなノーマンの期待通りレオたちは次々と
「よし、あの山越えたら山脈脱出だ」
「ずいぶんと時間がかかりましたね」
「予想より敵が強かったからね」
「師匠の手を借りずに倒せましたよ」
「えらいえらい。もう狩りはいいから一気に行くよ」
「
※【15曲目】は2022年6月14日に公開です。
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