羽衣澪

時は昭和の初期頃までにさかのぼる


姑獲鳥村は巫女である、羽衣 澪の活躍のおかげで村の繁栄がより一層増していた


「巫女様!本当にあんたはすごいよ!今までの巫女様の中で一番じゃないのかい?」

時刻はちょうど昼食を終えたころなのだろうか、村の青年たちが食休みで世間話をしていたところだった


「やめてください、私は自分の出来ることを一生懸命やっているだけです」

そこには羽衣 澪の姿もあった、どうやら澪も村の手伝いをしていた中での出来事らしい

村の青年たちはこれまでの澪の功績を褒め称えているようだったが

当の本人は頑なに否定をしていた


「やーっ!謙虚なところもいいね!さすが我が村の巫女様だ!」

周りの者はその謙虚な姿に感心し、それぞれ思ったことを言葉にしていると


「コラ!!なに油を売ってるんだい!?もうとっくに休憩は終わってるんだよ!早く持ち場に戻りな!!」

かっぷくの良い女性が村の青年たちの後ろに立ち怒声を上げた

途端に青年たちは蜘蛛の子を散らす様に持ち場に戻り、辺りはその女性と澪だけになった


「すまないね巫女様、うちの若造共が」

「いいえ、おかみさんお気になさらないでください」



おかみと呼ばれたのは、先ほどの女性の事なのだろう

おかみは走り去る青年たちを一瞥し目の前の澪に軽く謝罪の言葉を述べるが、本人は気にしていない様子だった


すると突然、澪の名を呼ぶ声が遠くの方から聞こえた



「澪!」


澪とおかみは声のした方へと振り向く、そこには1人の男性が小走りに近づいているところだった


「っ!清孝さん」

「屋敷にいないから心配したよ」

呼んだのは澪の婚約者の清孝だった、随分走り回ったのか額が少し汗ばんでいた、どうやら必死になって澪の事を探していたようだ


「あらあら、旦那様の登場かい?」

そんな2人のやり取りをおかみは微笑ましそうに、少しだけ茶化す


「だ、旦那様だなんて…っ」

途端に澪は顔が真っ赤になり、おかみの言葉に慌ただしくうろたえてしまう

さすがにその反応にはおかみも笑うしかなかった


「なに赤くなってるんだい、婚約者なんだから旦那も同然だろ?」

「そ、そうですが…」

こういう茶化しには慣れていないのか、澪はいまだ顔が赤いまま必死に落ち着かせるように自身の手のひらを頬にあて熱を冷ましていた


「すみませんおかみさん、どうも澪はそういう言葉にまだ慣れてない様子でして」

すかさず清孝が間に入り、澪を落ち着かせるように背後に手を伸ばしてなだめる

さすがにそこまで見せられたおかみも、笑うしかなかった


「あっはは、やーね、いじらしいったらありゃしない!わかったよ、私が悪かった、許しておくれよ巫女様」

余程ツボに入ったのだろう、しばらく笑ったあと少し涙目になりながら2人を見れば、降参だと言わんばかりに両手を上げた


そんな和やかな雰囲気に包まれこの村は動いていた



「…っ!……」

突然、澪が吐えづきだしその場でしゃがみ込んでしまう

「澪!?」

咄嗟の判断で清孝も寄り沿う、おかみは拭くものを持ってくるため一旦その場を離れた


「……っ!ゲホゲホ!」

しばらくして、落ち着いたのか澪はゆっくりと顔を上げた


「大丈夫かい?」

「だ、大丈夫です、いつものですから気にしないで」

表情はまだ青ざめてはいるが、良くなった澪に、清孝も少しだけ安堵のため息を吐いた

だが、おかみは澪の様子にある疑問を抱いた


「もしかして、巫女様、あんたそれつわりかい?」

「「!?」」

図星なのか2人は分かり易く反応する

おかみは気にせず話を続けた


「さっきの昼食もあんまり口にしてなかったし、おかしいと思ったんだよ」

既に数人の子供の母親であるおかみは、澪の状態を何となく察知しているようだった


しかし、巫女とは本来清らかなでなくてはならいもの

正式に夫婦になっていない者が子を授かるなどご法度だった


「あ、あのおかみさん……、この事は…」

体調とは違う青ざめた様子で、澪はおかみに懇願したが言葉が詰まり上手く言えずにいた

だが、その言葉は最後まで伝えるまえに、おかみは優しい笑顔で答えた


「黙っておくよ、神聖な巫女様が嫁入り前にってのはご法度だけど、それでも変わらず村は栄えているからね、きっと姑獲鳥様の思し召しだろう」

おかみは、この当時の常識にしては寛大な心を持ち主だったようだ、人差し指を口にあて2人に内緒だと身振りで伝えた


「……ありがとうございます!」

おかみの懐の深さに澪は感激したのか、必死になって頭を下げ全面に感謝の意思を伝えており、顔を上げるとその目は潤んでいた



「ほらほら、そんな勢いよくすると体に毒だよ、清孝さん!早いとこ巫女様を送ってやんなさいな」

「おかみさん、恩に着ます」

おかみは早々に気を取り直して清孝に声を掛ける、清孝もおかみに感謝を簡潔に述べるが、しっかりとした声とその目は澪と同様おかみへの感謝に溢れていた


「あっはは!!真面目な子たちだねぇ!式の時は盛大にお祝いさせて貰うよ!」


そんな2人におおらかな笑い声と暖かい目で、2人の姿が見えなくなるまで見送った





「本当に良かったのでしょうか……」


屋敷までの道のりをゆっくりと歩を進める澪と清孝

澪は先ほどまでと違って浮かない顔をしていた


「どうしたんだい?唐突に…」

澪の歩幅に合わせて歩く清孝は、そんな澪の言葉に疑問を投げた


「私はこの村の巫女として生まれました、それなのに……」

どうやら妊娠してしまった事を誰よりも責任を感じていたようだった

今までは2人だけの秘密にしていただけに、改めて第三者にバレた事で自身の罪悪感が膨れ上がった様子だった


「澪…」

「決して許されない事なのに、私は浅ましくも許して欲しいとおかみさんに縋ってしまいました」

澪の大きな瞳には、ハラハラと大粒の涙が流れていた


「なんて私は醜い人間なのでしょう…!」

「澪」

しかし澪の言葉は清孝によって優しく遮られた

黙り込んだ澪に清孝は両肩に手を載せ宥める


「おかみさんも言っていただろう?もし君が君の言う通りの人間なら村はこんなに栄えていない」

ほら見てごらん、と清孝が辺りを見渡すように促せば、遠くの方で村人が切磋琢磨しあいながら仕事に励んでいる姿、そしてその傍らで夢中になって遊んでいる子供たちの姿があった


「君がこれまで巫女としてちゃんと努めて来たからこそ皆がこうしていられるんだ」

「清孝さん………」

澪は泣き腫らした目で清孝を見つめる


「それに、君が不思議な力を持っているのも何よりの証拠だ、あの力は姑獲鳥様のご加護以外の何物でもない」


清孝の言う通り、澪には不思議な力があった

天候を言い当てたり村に起こる災いを見抜くことが出来た、そのおかげで村はここ数年の間大きな問題もなく平和な日々が続いていた


「噂を聞いてやってきた学者連中はうるさいが、いつか絶対澪の力を認める日は来るさ」

もちろん、澪の事をどこかで噂を聞いてやって来た学者たちも村に来て実験台のように調べられたが、澪は難無く学者たちの予想をいい意味で裏切り自身の力を見せつけた


「だといいのですが…」

中には諦めずに村に住み着いてまで澪の力を調べているものまでいるが、それも時間の問題だろう


「きっとそうなるさ…、それに…」

というと、清孝はそのまま顔を赤くなり喋らなくなった


「清孝さん?」

「君を身籠らせてしまったのは、僕にも責任がある…」


澪が不思議に思い声を掛けると同時に清孝は続きを話した


「いっ!いいえ!!あの時私が服を脱いだりなどしなければ!」

澪もつられて顔が赤くなった、当時の事を思い出したのだろう


「いいや、君は間違っていない!君はあの時秘密を打ち明けるためにしたことなのに、僕が…!」

言い返すように清孝も真っ赤な顔をしたまま反論した


清孝の話ではこうだった

婚約が正式に決まる前日に澪は浮かない顔をしていた

理由は自身の体の事だ、半陰陽として生まれた澪の肉体は瞬く間に村のタブーとして隠されていた


もちろん、清孝もその事実を知らなかった


そのため婚約前からお互いを好いて付き合っていただけに、婚約前日に澪はいままで清孝に隠していたことを謝罪し真実を伝えたのだが


「君が僕の前で体を見せた時、情けないことに綺麗だと見とれてしまい、…つい…、…本当に悪いのは僕の方だ」

そう語る清孝の顔はこれ以上ないくらい真っ赤に染まっており、自身を責めるようにぐしゃぐしゃと髪を掻き毟った


だが、澪はそんな清孝を責めるような言葉を掛けることなどなく、優しく笑った


「あんな体を綺麗だと言ってくれたのは、清孝さんだけです」


こんな時でも自己評価が低い澪に清孝は傷ついた顔をして、澪をきつく抱きしめた


「そんなに卑下しないでくれ、僕が誰よりも愛しいと思っている人の事なんだ」

「………清孝さん」


その言葉に澪は心から救われるような暖かい気持ちに包まれた

お返しと言わんばかりに、澪からもそっと手を清孝に回す


「澪…」

「ふふ、…お返しです」


そんな優しいぬくもりに包まれ、幸せに満ちた2人はお互いを抱きしめ合った




そんな2人を遠くから恨めしそうに睨みつける男が立っている事など知らずに



ある時、悲劇は唐突に起きた


「やめてください!人を呼びますよ!!」


寝静まる夜に突然、澪の悲鳴が響き渡る

場所は澪の寝室、ある男がその寝室に忍び込んできたのだった


「何言ってるんだ、澪、君と私は愛し合っていたじゃないか…」


湿った息を吐きながらその男は澪に近づく

その男とはあの日、澪と清孝の抱擁を恨めしそうに睨んでいた男性だった


「何を勘違いなされているか存じませんが、私は既に婚約者がいる身です、それに貴方は私の力を調べる目的でここに来たのではありませんか!?」


そして澪の力を調べに移住までした学者の人間だった


「そうだよ、でも私は君をの力を調べていく度に君そのものに惹かれた、君だってそのはずだ」


学者の男は焦点があっていない目で澪を見ながら鼻息を荒くし詰め寄る



「戯言もそのぐらいになさいませ!私は一言もそのような事を言った覚えはございません!」

「言わなくても僕にはわかる!本当は君だって僕に惹かれてるに違いない!」


男は狂ったように顔で澪に近づき手を伸ばす

しかし、澪は学者の男の手を払いのけ


「私が生涯愛すると決めたのは、清孝っ…!清孝様ただ一人だけでございます!」


だが、それを皮切りに男は半狂乱し暴れだした


「そんな訳ない!そんな訳ないだろぉお!!あんな笑顔を俺にむけて!!好意を向けてないなんて有り得ない!!…絶対にあってはならない!!」


「ぃたっ……!!」


暴れだした男は澪を羽交い締めにし、組み敷いた


「わかった…!そうやって俺の事を焦らしているのか!?どこまでも愛い奴だな!」

「………ひっ」

突然の出来事と背中に感じる痛さに、澪はもう怯むことしか出来なかった

それに気をよくした男はさらにヒートアップした


「まっていろ、今お前を気持ちよくさせれば俺に言っている事が全て理解できる!お前は自分の本心に気づいていないだけなんだ…」


「た、…たすけて…、」


そして、無残にも澪のまとっていた衣服が男の手によって脱がされる

瞬時に露わになった澪の裸体



「ひぃ…、!ぅわあああああああああああああ!!!」

しかし先に悲鳴をあげたのは男のほうだった


「?、…」

澪は困惑と呆然が混ざった目で男の方を見る


「ばっ…バケモノ!!!」

男はみっともなく澪から離れると、吐き捨てるように澪の体を見ながら暴言を吐いた

そこで、澪は自身の体のことに気づいた

清孝に綺麗と言われたことで救われた心がまた深く傷付くのを感じる


「………っ!」

澪は咄嗟に衣服をまとめて乱雑に自身の体を隠した

それでも男の暴言は止まなかった


「わかった!…わかったぞ!!お前はそうやって人を惑わしていたのか!!その奇妙な体が何よりの証拠だ!!俺を惑わしやがって!」


その時だった


「澪!!どうした!!」

足音を立てて澪の寝室に清孝がやって来た


「………き、よたか、さん………」

「………っ!!」

清孝が見たのは信じがたい光景だった、衣服がはだけ裸同然の澪の姿

そして壁に張り付くように学者の男が驚愕した表情でそこいた


この状況を瞬時に判断した清孝はすぐさま男に近づいた


「貴様!!そこで何をしている!!」

温厚な清孝からは想像もできないぐらいの形相で男に詰め寄る


「………お前は知っていたのか、こいつが化け物だってことに」

その言葉が言い切る前に清孝が男を殴りつけた


「ぐぁ…っ!!」


清孝が男を殴ったことにより、みっともない声をあげ男が転がる


「自分が何したかわかっているのか?」

さらに清孝は男に近づき胸倉を掴んだ、掴まれた男は殴られてもなお下げずんだ目線で清孝を見る


「まさか、お前あのバケモノとヤッたのか…?」

「なんだと…!?」

「は、ははは…否定しないってことはヤッたってことかぁ!!こいつは傑作だぁ!!!いかれてやがる!!」


男は狂った様に笑い出した、だがその言葉は清孝の怒りを増幅させたようで

さらに重い一撃を男に喰らわせ、ようやく男は気絶し倒れた


「すまなかった、怖かっただろう」

男を倒し、ゆらりと立ち上がった清孝は澪に近づいた


「清孝さん……」

一部始終を見ていた澪は呆然としたまま清孝を見る


「何もされなかったかい…?」

「はい、…服を、…脱がされただけで…っ!」

清孝の優しい声色に安心したのか、澪はその言葉の後に泣き出した


「僕が早くに来ればこんなことに…っ」

対応が遅かった自身を清孝は責める

しかし、澪は必死になって否定した


「いいえ!清孝さんが来なければ私はどうなっていたか、例え穢されなくても心がズタボロにされるところでした…っ!」

大きな瞳にボロボロと涙を流し清孝が来たことでどんなに自分が安心したかを主張した


「どこまで優しいんだ…君は…っ」


たまらず清孝は澪を抱きしめる、あの時の心から温かい抱擁とは違った切なく悲しい抱擁だった



こうして、辛い夜が明けるのを2人で必死に待った…





こうして一夜明けた…


しかし意外なことに村は平穏だった

澪を襲った学者の男は翌日から「あの巫女はバケモノだ」と昨夜の体験をもとに広めようとしたのだが

どうやら調査目的で移住したにもかかわらず昼間から酒を飲んだり、暴れたりしており、そのことを村の人間が訴えると「俺は学者だ文句があるなら研究所に言え」などの日頃の行いが原因で、村の人間は聞く耳を持たなかったらしい


そうこうしている間に月日は過ぎ2人は挙式を上げ

それと同時にお腹の中の子も成長したようだ、そのころには正式に夫婦になったことで2人も村の人達に知らせていたようだった


「澪、これを…」

「これは…」

「この間記念に撮って貰った写真だよ、現像してもらったんだ」


嬉しそうに清孝は一枚の写真を澪に渡した


「素敵…」

「この子が生れたら見せてあげよう」

「そうですね…」

澪もつられるように笑顔で答えた




その写真は間違いなく、谷浦が資料図書館で見つけた写真だった





「素敵な話だろう?…そのお腹の子供が僕だよ」


青年は自慢げに大げさな素振りで両手を広げる

自分たちの両親がどれほどすごいのかと解らせるように


「そうか…」

そんな青年を谷浦は静かに青年の話を聞いていた


「だとしてもおかしいな、なんでお前は姿?」

同じく話を聞いていた江國は疑問を感じたのだろう率直に聞くが、そんな江國の問いに青年は嬉しそうに笑った


「せっかちだな、続きを話してあげるよ…」




そして、話は再び澪と清孝が生きていた時代へと戻す




澪の秘密がバレたものの、当事者の学者の男は訴えるが日頃の行いによりおざなりにされていた

しかし、無下にされたことでさすがに男も腹がたったのだろう

あの手この手で澪の話を持ち掛けたことで、次第に男の話に興味を持つ輩が出てきた

最初は興味本位で関わったが、腐っても学者である男の説得力と本来は真実である事に、澪を不審がる人間が増えていった



「村の人間は学者の男のいう事を信じる者が多くなり、いつしか羽衣 澪の腹の中の子、つまり僕は「呪いの子」と呼ばれてるようになった」


「呪いの子…」

谷浦はその言葉が当初聞いた「呪いの神社」が妙に通じる不思議な何かを感じた


「そして、暴動が起きた…」


青年はゆっくりと最後の結末を語りだした




秘密がバレたことで、2人は村を逃げた

説得しようにもすべてが事実である事、そして何より男は噂を広めたとき同時に澪が妊娠している事も話していたのだ

それはすなわち、澪が式の前に子を孕ませたことによる巫女としてあってはならない事だったからだ


2人は懸命になって追いかける村の人間達から逃げた

清孝は必死になって身籠っている澪を支えて走る


「澪、もう少しの辛抱だしっかりしてくれ…!」


汗だくになりながら懸命に走った

どこに向かうなど目的はないが

ただ、安全な場所を求めるように必死になって走った


しかし、途端に澪が足を止める


「澪!」

慌てた清孝は澪を呼びかける


「すまない!君に辛い思いをさせているのはわかっている、だが…」

「もう、止めにしませんか?」

澪は静かに口を開いた


「どうして!」

清孝は澪の肩に手を置き必死になった


「あの方が仰っている事は何も間違えていません、悪いのはすべて真実をうやむやにしてきた私です」


澪は清孝の手を振り払い泣き叫んだ


「それなら、僕だってそうだ、だがもう今さら後に引くことはできない!このままでは僕も君も殺されてしまうんだ!」

澪の言っていることはもっともなのだが、清孝の言い分も確かだった

現に村人達が澪を殺そうとして探している


「都合のいい時だけ澪に頼って、いざ都合が悪くなると今度は化け物扱いするなんて…、そんなこと納得が出来るわけないだろう!!」


そして、ずっと澪の傍らで見守っていた清孝はもう限界だった


「澪の力が無かったら何度村が滅びかけていたかわからないくせに!どうしてそれに気づかないで…っ!!」


清孝は叫ぶ、ずっと貯めてきた思いなのだろう

はじめて清孝は澪の前で涙を流した


「清孝さん………」


澪は初めて見る清孝の涙に戸惑った


「君もそうだ、どうしていつも全てを受け止めてしまうんだ…っ」

清孝はそのまま澪の体をきつく抱きしめる


その姿を見た澪はこんな時ですら、清孝の優しさに愛おしさを感じる


「なんて優しい方なのでしょう…、私はこんな素敵な方に愛されていたのですね…っ」


澪も清孝を抱きしめ、涙を流す


「私は全てを受け止めます、それが世の流れだと、姑獲鳥様の意思だと信じ、どんな困難でも乗り越えた先に何かあるのだと私は思うのです」


「澪…」


「これは、私のわがままです…だから…」

「なら、僕も君と共に行こう…」


「清孝さん…?」

「僕は君といつまでも一緒にいたい、これは僕のわがままだ…」



こうして、2人は手を繋ぎ村の人間が待ち構えている中心となる神社へと向かった…


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