第67話「頭脳戦 囚われの子どもたちVS海賊たち②」
「それじゃあ、その兄弟以外はどこに消えた? なんでお前らは逃げずに、ここに残っているんだ?」
船大工の手下はそう訊いた。
「足手まといは連れていかないんだってさ。なんか、やることがあるとか言って、元気のいい子たちだけ連れて行っちゃった」
「やること? なんと言っていたのだ?」
そう言って身を乗り出したのは、海兵隊長だった。彼の目つきは鋭かった。この捕虜牢を託された少女の眼には、この男にだけは、まだ人間性のようなものが残っているように思われた。肌の色こそ灰色に近いが、黄ばんだその瞳には、魂が宿っている感じがするのだ。
海兵隊長は、ジェイドを侮ってしまったことを後悔していた。自分がおとりになって、弟を潜伏させて、まんまと見張りを出し抜いて脱出したのだ。彼は、これを自分の失敗と認識していた。
海兵隊長の圧力に、自分がリーダーかのように振る舞う女の子は、ごくりとつばを飲み込んだ。
「わたしたちのこと、どうするつもりか知らないけどさ。わ、わたしたちとしても、早くあの二人を見つけてほしいよ。だ、だって、ここを出て行った子たち、この船を沈めるつもりなんだから」
「なにっ!?」
その言葉に、海賊たちが驚きの声をあげる。
「どういうことだ? あぁ!?」
銃器室長がすごむ。
「この船の底には、火薬がたくさん積んであるんでしょ? そこに火をつけて船底を爆破して燃やすつもりなんだよ」
その一言で、明らかに海賊たちが動揺した。もともと血の気など通っていないその顔からも、血の気が引いたのがわかった。
「船が落ちたとしても、下が海なら助かるかもしれないってさ。ど、どっちみちここにいても殺されるだけだから、それなら派手に船ごと木っ端みじんにしてやるって息巻いてたよ」
「バカか! ここは雲の上なんだぞ!? そんなことしても、助かるわけはないだろ。どこまでバカなガキたちなんだ!」
船大工の手下が地団駄を踏む。
「そんなことを言っている場合かっ!!」
銃器室長が一喝する。
「見張りの連中も、寝ている連中もたたき起こせ! 全員、今すぐだ! 船倉を捜索する。見つけ次第に殺せっ!!」
海賊たちは、慌てふためくように捕虜牢がある部屋を出ていった。ただ、海兵隊長ひとりが、釈然としないという表情で牢に残る。じっと子どもたちを見やった。
「な、なによ?」
「…………」
海兵隊長は、黙ったまま牢の部屋を見渡すと、そのまま考え込んだようにしてそこを出ていった。
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