第13話「運命を分けるアイテム選択」
「なら、これを持ってけよ」
ベリルは、足元に転がってきた玉ねぎを手にすると兄に放った。
ジェイドが、パシリと片手で受け取る。
「海賊相手にオニオンスープでも作れってのか?」
兄を無視し、ベリルは、また考えをめぐらせる。
「で?これからどうするよ?平和主義な航海士さんよ?」
皮肉めいた口調でジェイドが言う。ベリルは部屋を注意深く観察した。
「ん?」
すると、部屋の奥に積み上げられた木箱の上で、小さな二つの光がこちらを見つめていた。
ネズミだ。太ったネズミが、チーズの切れ端をくわえて、こちらをじっと見ていた。
──チ、チュッ!
短く鳴く。
「アイツら、どこにでもいるな。俺たちと同じで地上でもぐり込んだか。もともと船底の船員をやってたのか」
ジェイドは、呆れたようにそう言った。
「ずいぶん人慣れしたネズミだね。目が合っても逃げないなんて」
ベリルがそう言うと、「チ、チュッ!」と、もう一度鳴いて、ネズミは、木箱の裏へ身を隠した。
「…………」
「どうかしたのか?」
「待って。この奥って」
ベリルは、積み上がった木箱によじのぼった。隙間から暗がりをのぞく。
「なにかあるのか?」
ジェイドも寄ってきた。
真っ暗でよく見えない。ジェイドは、置いてあった薄汚れたランタンを手にすると暗がりを照らした。
あちこちで「チュチュッ!?」と、あわてたネズミの鳴き声がした。真っ暗な部屋が奥につづいていた。
木箱で隠れているが、裏に、もう一つの出入り口があったのだ。
「こっちのほうが安全かも」
ベリルは、ジェイドを見てそう言った。ジェイドもうなずく。
「木箱を押しのけて奥の部屋に入ろう」
そう言いながら、ジェイドは、テーブルに引きかえし、刺していたロープ通しをポーチにしまった。
「押しのけた木箱は、ちゃんと元の通りにしとこうね。怪しまれると思うから」
「…………」
「ジェイド?」
ジェイドは、テーブルの上を見つめたまま黙っている。
「やっぱり、玉ねぎ持ってく?」
肩をすくめてベリルは訊いた。
「何か役に立つものはないかなと思ってさ」
ジェイドはそう答えた。
「そのポーチの大きさなら、持ってけるのは一個くらいだよ?」
「わかってる」
テーブル上にあるのは──ニンジン。玉ねぎ。ベーコン。トウガラシ。チーズ。
──さあ。何を選ぶ?
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