第二章 ダンジョン探索開始

第8話「逃げろ!」

「薪は、どれくらいいるって?」

「抱えられるだけ持って来てくれ」


 そんなやり取りが聞こえて、あわてて木箱に入るのをやめた。ふたりが入っていたのは、まさに薪を入れた箱だったからだ。


 ロフトの裏に隠れて上を見ると、階段から海賊の足が見えている。


 ジェイドとベリルは、目の前のうず高く積まれた樽を登った。天井と樽に押しつぶされるようにして、樽の裏に身をひそませた。


 はっきりと姿は見えないが、数人が、ロフトへと降りてくる。さっきまでふたりが隠れていた木箱を開けると、薪の束を運んでいった。


「おい!それから、豆の入った樽も運び出してくれ!」


 階段の上から、そんな指示が飛ぶ。

 そして、足音がふたりに迫って来る。


 ガッ──!


 下段の樽に足をかけ、登って来る。そして、ふたりの隠れている目の前の樽を、ひとつ運び出してしまった。


 ベリルは、見つからないように祈りながら、息を殺して隙間から様子をうかがっている。そんなベリルの肩をジェイドが指でつつく。


 ベリルが顔を向けると、ジェイドが天井を指さしていた。

 少し奥の天井に四角い穴が開いていた。


 ふたりは、音を立てぬように気をつけながら、樽に抱きつくようにして、その穴の下まで移動した。


 木枠で補強されている四角い穴は、すべての甲板に開いていた。滑車を使い、船上から各層に荷物を運ぶための穴だった。


 今は、落下防止用の格子がはめられている。ジェイドが、ゆっくりとその格子を持ちあげた。ベリルも、頭を出して、周囲の様子をうかがう。


 どうやら、人はいないようだ。


 下では、ふたりを隠す樽がまたひとつ運ばれていった。選択の余地はない。格子をずらすと、樽を蹴って、ふたりは木枠に飛びついた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る