主人公(女性)の家に突然、骨壺を抱え、ずぶ濡れになった少女が訪ねてくるという、謎めいたシーンから話は始まる。読みだすと、ぐいぐいとその世界に引き込まれてしまう。主人公の心理描写が、とてもきめ細かく納得性が高い。訪ねてきた謎の少女のキャラクターも魅力的で秀逸だ。傷心の過去と、なかなか穏やかに過ごせない現在とが交錯する、構成の妙が光る。途中には修羅場的シーンもあるが、最後はとても優しい気持ちになれる。難しい設定を破綻なく生き生きと描き切った作者の筆力は、並大抵のものではないと感じた。