ループ・ライフ

@aruru00

第1話 プロローグ

『どこで俺は間違えたのだろう?』

そんな問いに答えてくれる人なんているわけもなく、ただの独り言として虚しく消えていくのである。


■■■――■■■―――■■■

いつものように家族4人で楽しく食卓を囲んでいた。

思春期真っ只中な14歳の俺でも、家族全員で夕食を食べるほどに家族仲は良かった。

「お母さん、僕おおきくなったらタイムマシーンを作るんだ!」

どうやら先月小学校に上がったばかりの悠樹はタイムマシーンに興味津々らしい。

そんな時「タイムマシーン....ない」なんて微かな声が母親から聞こえた気がするが、誰も気づいていないようなので、聞き返すようなことはしなかった。

「おぉ!そうか!悠樹には俺の血が流れてるみたいだな!!」嬉しそうに父が笑っていたので、なんだか僕も嬉しくなっていた。

ちなみに僕の父親は今タイムマシーンの研究をしていて、今まで色々な研究で名を残しているらしい。

何となく気になって1度父の名を調べてみると、なんだか難しい資料と一緒に父の顔写真や名前が出てきていた。

見る気にはならなかったが何となくタイムマシーンのことも書いてあるような気がした。

俺はタイムマシーンなんて作れるわけないだろう。

なんて思いながらその話を聞いていた。

母に「悠介、早く風呂はいっちゃいなさい!」と促されたので、何も言わず入ることにした。

風呂から出ると、みんな眠りについていた。

明日の朝はみんな早いらしい。

俺と悠樹は学校で、父はタイムマシーンについての論文を提出しに、母はその付き添いらしい。

なんだかんだ研究が進んでいるみたいだが、いくら父でも、タイムマシーンは難しいだろう。

とりあえずその日は眠ることにした。

朝起きると、悠樹が朝早く起きてゲームをしていた。

友達とやってるゲームと言ってたが、友達がいない俺からしたら少し羨ましかった。

悠樹と二人で朝食のパンと冷めたベーコンエッグを食べながら、なぜタイムマシーンを作りたくなったのかを悠樹に聞いてみたところ、ゲームで出てきてかっこいい主人公が使っていたからだそうだ。

なるほどそういう事か、なんて思いながら、父には黙っておこうと思った。

学校に行ってもとくに話してくれる人はいるわけもなく、今日も今日とて1人を満喫しつつ(本当は誰か話しかけてくれないかずっと待っている)気づいたら昼休みになっていた。

全く、時間の流れは早いのか遅いのかよく分からない。

クラスの一軍男子(うるさいだけ)が発狂しているところに、先生が教室に入ってきて、一気にしんとなったが、先生はそいつらを注意するのではなく、俺のところに駆け寄ってきた。

何も悪い事をした覚えはないので、堂々としていると、

「ちょっといい?」

と半ば強制的に呼び出され、先生について行くと、昇降口で、車に乗って泣いている悠樹と辛そうな顔をした母が待っていた。

ただごとでは無いことを悟った俺は

「何かあったの?」と母に聞いたが母は答えずに

「帰る準備をして来て」と俺に言い、急いで帰る準備をしてもう一度昇降口に行った。

車の中の空気は酷く重く、とても話せるような空気ではなかった。

家につい着くと、俺が疑問に思っていたことは聞く必要もなかった。

「父さんが自殺した」と母が俺と悠樹に言う。

「え?」と聞き返す俺に

「何度も言わせないで!」と少し強い口調で母な言い放つ。別に聞こえなかったわけじゃない。ただ、理解が追いつかなかった。

父が自殺するような人ではないというのは多分、悠樹でも分かるだろう。

少しすると、目から涙が出てきて、俺はその場でテーブルに突っ伏した。

それ以上は頭が回らなかったせいもあり、それ以外の記憶は残っていない。

その日からだろう。

―――俺の家族が壊れたのは―――

次の日から母は狂った。

と言っても別にものを壊したりするわけじゃない。

ただ、俺たちに向かって、あんた達のせいよなんて意味わからないことを投げてくるだけだった。

そんな母を、俺が止められる訳もなく、ただ見ていることしか出来なかった。

日が経つ事に母は狂っていき、ついには俺や悠樹にまで手を出すようになった。

悠樹には、「タイムマシーンを作るなんて馬鹿なこと考えてるんじゃないわよ!」と言いながら悠樹を叩いたり、「人殺し」と言いながら俺を殴ったりした。

ある日の夜、俺は家出を決意した。

悠樹を連れて2人で母が気づかない場所まで行ってやろうと思った。

父の銀行の手帳があったので、それと食べれそうなもの、家にある使えそうなものはすべてバックに詰め込んだ。

母が寝ている隙に悠樹を連れ出して家を出た。

最近は悠樹は母と一緒に寝ていなかったので、というより、一緒にするわけにはいかなかったので連れ出すのは簡単だった。

辛い思い出も、楽しい思い出も、全て家に置いてきた。悠樹はまだ、何をしているのか分からないようで、寝起きだからか目を擦っていた。

ここから、過酷な日々が始まるのである。

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