剛力のG/暗がりの嫉妬
第6話 試験
「これでどうだろうか…。」
そう言うと、クルルは人間体に変身した。
しかし……
「なして女に?」
「……?私は人間でいう女だぞ?何か悪いことをしたか?」
「申し訳ありませんでした…。」
俺は全力で土下座する。
今の発言はあまりにも浅はかだった…。
性差別問題が蔓延るこの現代社会でなんて失言を…。
「そんなこと気にしていない。話が進まないからさっさと面を上げい!」
そう言われ俺は顔を上げる。
と、同時に美麗が気絶から復活する。
「う、化け物が……助けて彗君…。」
「美麗さーん。しっかりしてくださーい。」
「彗君…?」
美麗がやっと起きた。これで話が進むぞ。
「彗君、私とてつもなく怖いものに遭遇する夢を見たのよ…。」
デジャヴである。
「美麗、それさっきやった…。」
「おぬし…。」
「はい…?」
クルルが美麗に話しかけるが、美麗はそこにいるのが誰なのか不思議でならないみたいだ。
「貴様が見たのはこんな姿をしていなかったか?」
と言いながら神龍としての姿になる。
「きゅう…。」
また、美麗が気絶した。
「なあ…。」
「なんだ?」
「話進まねえから、美麗で遊ぶのやめてくれない?」
「バレた?」
バレバレだよ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その後、美麗が復活した後状況を説明して今後のことを神龍に聞いている。
「で、俺たちはこの世界の学校に途中編入しろってことか?」
「そういう事だ。もう一度言うが、この世界では学校の成績などで戦闘力などのランクが決められる。
まあ、それはある一種の示準であり活躍すればランクアップもある。ただ、学校卒業時Sランクの者に比べランクアップしてなったSランクは若干収入が下がる。
それに、Sランク卒の方が良い職に就きやすいな。」
簡単に言うと、大学卒業でも東大と無名大学。みたいなものか?
「要するに、私と彗君が学校恋愛をやり直せるってことよね?」
「まあ、そうだな。貴様たちの様にイチャイチャするカップルが学校に何人いるかは知らんがな。」
クルルさん、嫉妬してませんか?
俺がニヤニヤしていると、クルルがキッとにらみつけてくる。
「ええい!そんな目で見るな!気色悪い。これから町に行って編入申請をするからついて来い。」
「彗君、学校だって。今度こそ一緒に登校しましょう!」
「おう。今度の学校でもよろしくな。」
そう言うと俺たちは手を繋いでクルルを追いかける。
「あ、そうだ。」
クルルが思い出したとばかりに声を出す。
「どうしました?」
「何故急に敬語を?まあ、いい。学校の編入のクラス分けの示準は魔法だ。だから、落ちこぼれるなよ。」
急にどうしたんだ?そもそも現代日本に住んでいた俺がそんな非現実的な……
そう考えかけて神威のことを思い出す。
やっぱ、何でもないです。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
魔法
この世界に存在するすべての生物は魔力を内包している。しかし、その総量は全員変わらない。ほぼすべての生物が魔法を使えるが、どの程度の威力を行使できるかは、その者の才能しだいだ―――――。
「じゃあ、クラス分けのために魔法の実力を見るからね。」
「「よろしくお願いします!」」
「うん。元気でよろしい。」
俺たちの威勢のいい返事に、試験監督は笑顔で対応する。
「試験内容は、初級レベルの魔法の火、水、風の基本三属を放ってもらう。
見るのは、射出の精密さ、射出までのスピード、威力について見るよ。」
「あのー。」
「はい。ミレイ アキホシさん。」
「私、魔法を使ったことが無いんですけど。」
その質問に試験官がなんの問題も無いとばかりに答える。
「本来魔法は詠唱して発動する物ですが。今は、魔法陣の上でするので、イメージを浮かべて名前を思い浮かべるだけで発動します。」
へー。そんなに簡単に魔法って発動するんだ。
「本当だ!魔法陣の上に乗ると体の中を駆け回ってる何かが見える!
えーと……これをこうしてー……できた!『フレイム』」
そう言うと、美麗の掌に炎の塊が出現する。
その炎を見た試験監督が慌てた様にそれを凝視する。
「な、ま、まさか!その炎の魔法は初めてなんですよね?」
「そ、そうですけど…。」
突然詰め寄ってきた試験監督に美麗は戸惑いを隠せないようだ。
そんなことお構いなしに試験監督は続ける。
「早く水と風の魔法を発動させてくれたまえ!」
「は、はい!うーん……えい!『アクア』
もう一個、『ストーム』」
「二属性同時だと!天才だ!」
どうやら、美麗は魔法の才能があるらしい。
これで美麗はBクラスが確定した。
なぜAクラスじゃないかというと、Aは王族とかのクラスらしい。ややこしいな。
「じゃあ、次のケイ キリュウさん。」
「じゃあ、いきます。」
次は俺の番なので、俺が魔法陣に乗る。
美麗の言った通り魔法陣に乗った瞬間、俺の体に何かが通ってるような感覚が見えた。
何言ってるか分からないが、これが魔力。
これらを繋ぎ合わせて、形にし、炎を形成する。
それを掌に移動させて……あれ?
移動しない?なんでだ?
「どうしたんですか?もたもたしてるとどんどん評価が下がりますよ。」
中々魔法を発動しない俺に、試験監督は注意してくる。
言うべきか?
俺は少し考えた結果、監督に言う事にした。
「あの、なぜか魔法が掌で形作れなくて…。」
「つまり魔法が使えないと?」
「まあ、そういう事になります。」
「はあ…。」
溜息!?失礼な奴だなあ。
「行きますよ。編入の手続きをします。」
こうして俺のクラスはFクラスとなった。
魔法が使えない者などの劣等生の集まりのクラスだ。
まだ、俺は知らなかった。魔法が掌の上で発現しないことがどれだけ蔑まれるのかを。
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