第4話 転移

 「はあ…はあ…。」


 美麗は突然見知らぬ場所に放り出されて、何もないところを走っていた。


 いや、何もないわけではない。


 「助けて……彗君…。」


 美麗は今、人型の化け物に追われているのだから。


 美麗は突如現れた穴の中に引きずり込まれた後、あの化け物に遭遇した。


 すぐに警察に連絡しようとしたが圏外で携帯が機能しなかった。


 「いや…死にたくない…。」


 ついに叶った自分の恋はここであっけなく終わってしまうのか。


 と美麗が考えた時、遠くからバイクの音が聞こえてきた。


 美麗は助けが来たのだと思い、それにすがる気持ちで音のする方に向かった。


 しかし、その乗り物に乗っている人物は、全身をシルバーに青のラインが入り青い目をしたメカメカしい鎧を纏った人物だった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 「神威――――――装甲!」


 そう言うと、義肢の一部が開きそこから粒子が散開し、俺の体に定着し始める。


 これは完全に蒸着システムを適用している。


 本来の蒸着より明らかに性能がぶっ飛んではいるが原理は同じっぽい。


 装着が終わると全身にエネルギーが通り始め、力が溢れ出てくる。


 『速度を146.3㎞/hまで速度を上げてください。速度到達後即時転移が完了します。』


 俺の視界に文字が現れる。


 もうここまで来たんだ。美麗助けに行くからな。


 俺はバイクを走らせて、異世界に転移した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 「大丈夫か?美麗。」


 「その声、もしかして彗君?」


 俺はバイクから降りて、美麗に怪我がないか確認する。


 「怪我はない?敵はあいつだけか?」


 「怪我はないし私を追いかけてたのはあいつだけ。でも、彗君それは?」


 「あとで説明する。今はあいつに集中だ。」


 敵を認識するとすぐさま俺はバイクに搭載されている剣を手にする。


 もう、あからさまに非常識なので何も言わないことにした。


 『ユニット005【武御雷】装備。敵を捕捉。敵の推定能力の査定を開始する。』


 武器の名前微妙にだせえ。


 そんなことを考えていると、査定が終わったらしいのか文字がまた表示される。


 『査定完了。外形から想定される筋力量から勝てない相手ではないと想定。これより戦闘フェーズに移行する。構えを。』


 そんなこと言われても、戦うのは俺の意志だろ。


 まあ、やるけど…。


 「 文字化㑠」


 なんか、化け物が声を発してるけど関係なし!


 「いくぞ!」


 『言語解析の結果、あれはうめき声に当たるものです。』


 今言うか?


 俺は、文字を見流しながら剣を振るう。


 得物は片手直剣。


 野球で鍛えられていたイメージで何とかなる。


 「 文字化㑠」


 「うおっ!あぶねえなあ。」


 やられてばかりではいかないとばかりに怪物は反撃してくるが難なく避ける。


 「……」


 「なんだ?」


 攻撃を避けた後、なぜか怪物の動きが止まる。


 「繧ョ繝」繧「繧「繧「繧「繧「繧「繧「繧「?」


 「ぐ…。」


 絶叫?なんだ今のは?


 俺は敵の攻撃(絶叫の高周波攻撃?)をもろに受けてダメージを受けてしまった。


 『絶叫による高周波攻撃と思われます。あと二メートル近づいていたら神威でも耐久出来ませんでした。』


 「なにそれやば!」


 あと二メートルとするとギリギリ剣の射程範囲だ。


 『ユニット005の変形を推奨します。』


 「了解!」


 ん?まてよ…。


 なんでこいつに指示されてんだ?


 まあ、いいや。


 俺は、剣を持ち換え刃を切っ先から半分に分断する。そこから、刃の真ん中あたりから折り畳み銃口を展開する。


 最後に握りと鍔の付け根を90°回転させ握りを倒す。


 これで、変形完了。


 『ユニット005から変形移行

 ユニット006【タスラム】アクティブ。』


 これ以上長引くといつ美麗に飛び火するか不安だからな。


 一撃で決めるよ。


 『必殺技へのアクションをし、技名を決めてください。』


 必殺技ねえ。どうしようか…。


 取り敢えず、技の起動はしておく。


 『リミッターオフ。技名を口に出して、終わりにしてください。』


 雑


 俺まで雑になったじゃねえか。なんだよ終わりにしてくださいって。


 名前、名前、名前、名前…。


 「【バースト・イクスティンクション】」


 掛け声とともにトリガーを引くと、銃口からとてつもないエネルギーが放出される。


 弾は見事に命中し怪物を吹っ飛ばした。


 「繧ョ繝」繧「繧「繧「繧「繧「繧「繧「繧「?」


 吹っ飛んだ化け物は雄たけびを上げて―――


 ドオオオン!


 爆発した。……ナンデ?


 「彗君!」


 俺が変身を解除すると美麗が俺に抱き着いてきた。


 「美麗、大丈夫か?」


 「怖かった……怖かったよう…。」


 うん。なんだ。俺の知る委員長のキャラがどんどん崩壊してるがもういいか。


 こんな美麗も可愛いじゃんか。

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