第3話 Code神威

 「~~♪」


 あの後俺たちは先生に事情聴取を受け、解放されて現在、二人で下校中だ。


 委員長もとい美麗は俺の腕に抱き着きながら鼻歌を歌ってる。


 「美麗はなんで俺のことを好きになったんだ?」


 そういえば聞いてなかったな。とばかりに俺は質問をする。


 美麗は少し考えた後にこう答えた。


 「わかんない。」


 「ええ…。」


 あまりにも無茶苦茶な回答に俺は困惑してしまう。


 「最初は寂しそうな人だなって思ってた。でも、憶えてる?あの日のこと。」


 「え?なんのこと?」


 本当に記憶がない。この人と関わったことがあっただろうか?


 「高校に入ってすぐくらいかな?不良から恋人関係の男女を助けたでしょ?」


 「ああ、あったなそんなこと。」


 不良というか、あれはヤクザだったよ。


 なんか、「ボスがその女を気に入った」だとか何とかで女性を拉致しようとしてたんだ。


 その時、その女性の恋人らしき男性が泣きながら縋り付いていた。


 「金ならいくらでも払いますから」って


 取り敢えず、下っ端らしき奴らをボコボコにした。


 鍛えてたからか、それとも腕の影響で体感時間が引き延ばされていたかは定かではないが一瞬で片づけた。


 被害者の恋人たちは俺に泣きながら感謝してきた。


 俺は二人を見送った後、そのヤクザたちの事務所を襲撃、一掃したんだ。


 「彗君、あの時お金受け取らなかったでしょ。」


 そういえば、なんか百万入った封筒を出してお礼です、とか言って渡そうとしてきたな。


 受けとらなかった。別に金には困ってないから。


 「まあ、受け取ってはないな。」


 「その時の彗君の目、とっても暗かった。」


 「ん?」


 それのどこに好きになる要素が?


 「あなたの目には何が写ってるんだろう。そう思ったら、学校であなたを目で追うようになった。そしたらいつの間にか…。って感じかな。」


 「変な人だな…。」


 普通、そんなことで人を好きになるのか?


 「?」


 「どうした?」


 「彗君、何か言った?」


 「いや、変な人だなって。」


 「違う、その後だよ。」


 え?何言ってんだ?


 「俺、何も言ってないぞ。」


 「でも今、『ミツケタ』って…。」


 「空耳じゃないのか?」


 バチバチバチ


 「「え?」」


 突如美麗の背後に真っ暗な穴が出現する。


 何が起こっているんだ?


 「か……体が…。」


 俺が突然の事態に戸惑っていると美麗が穴に吸い込まれ始める。


 「美麗!」


 「彗君!」


 俺は必死になって美麗の手を掴もうとしたが、もう届かずに俺の手は空を切る。


 そして、ほんの一瞬で美麗の姿は無くなり穴も閉じてしまった。


 「な……んでだよ…。」


 掴みかけた幸せが、こうも簡単になくなってしまうのか…。


 高校生で付き合っているのが社会人になっても続くとは思ってない。でも、高校生活くらいは充実すると思ってたよ。


 なのになんで…。


 『空間歪曲のサンプルを入手。再現し、転移を試む』


 突如、俺の視界に文字が出現する。


 そして、俺の意志とは関係なしに腕が起動を始める。


 あれ?なんか煙出てる。


 「やめろっ!こんなところで起動したら…」


 騒ぎが起こってしまう。


 そう考えていると、起動が止まった。


 「一体今のは…。」


 『事象の模倣に失敗。再度計算をし、失敗理由を算出する』


 そんな文字が浮かぶと計算が始まる。


 計算に異様なレベルで強くなった俺だからわかる。


 この計算は有り得てはいけない物だ。


 物理法則を大きく無視した計算だ。


 この計算の結果は現実ではありえない物だ。


 だが、こいつのやろうとしていることは―――――


 異世界転移か?


 『算出の結果エネルギーの不足が原因とみられた。空間の歪曲を再現し、異世界に転移したいと考えるのであるのなら、即時帰宅、後にバイクユニットおよびアームズユニットCode神威の起動を』


 俺はその表示を見た瞬間、家に向けて走り出した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 「取り敢えず用意する物は…。」


 家に帰ると俺はすぐさまバイクをガレージから出して、荷物の用意をする。


 「念のために三日分の保存食と水。後は、腕の整備用品。あとは…。」


 そして、俺は荷物の準備を整えて気付いた。


 「荷物何処に置こう?」


 致命的だ…。


 俺が打ちひしがれていると、また文字が現れる。


 『先の空間歪曲によるサンプルをもとに簡易的な次元の穴を生成し、バックパックとします』


 非常に意味不明で便利である。


 なんなんだ、この腕?


 いや、さっきマニュアルを読み返してこの腕が普通じゃないことは気付いてるだろう。狼狽えるな俺。


 もう、どうでもいいので荷物を全て収納箱次元の穴に入れる。


 俺は現在馬鹿みたいに広い屋敷に一人で住んでいる。だから、俺が消えてもしばらくは誰も気づかないだろう。


 よし、この馬鹿みたいに広い庭を使う時が来た。


 俺はバイクにまたがり、エンジンをふかす。


 このバイクも義肢を提供してくれたメーカーだ。何故渡したのか分からなったが、今なら納得がいく。


 『これより空間歪曲の模倣を開始し、対象者――明星美麗のいる世界への転移を試みる。計算上なら成功率は97%』


 成功率たっか!


 本当に物理法則超えてるのか?


 『バイクユニットの搭乗者はアームズユニットCode神威の起動し、ユニットを発進、速度を146.3㎞/hまで速度を上げてください。速度到達後即時転移が完了します。


 ご武運を』


 今行くよ、美麗。


 俺の全てを、この力の意義を君に捧げるよ。










 「神威――――――装甲!」

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