第28話
私はタイムマシンが欲しい。そしてお母さんにもう一度会いたい。
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お母さんはあの木で首を吊った。なにか理由があるはずだ。私はそれを知らなくちゃいけない。知った所で、何かが変わる訳じゃない。でも知らないとタイムマシーンで戻ってもお母さんを助けてあげられない。
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この街に不穏な側面がある。定期的に行方不明者が出ている。特に若い女の子が多い。何か暗いどろどろとしたものが、街を覆っている。
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あの木のところへ来た。あの木がお母さんを惑わしたのか。そんな事はないはずだ。あの木はとても優しい。私はそう思う。
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友達ができた。志村という。とても退屈そうだ。私と一緒だ。私と志村で何か楽しい事ができそうだ。楽しみだ。
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志村とショッピングセンターへ侵入した。志村と一緒なら安心だ。志村も危険かもしれないけれど、志村は弱い私に勇気をくれる。私は知りたい。知りたい。知りたい。でもここには何もないようだ。
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志村といる事が楽しい。このままお母さんの事を忘れてしまいそうだ。でもあの木を見ると、お母さんの魂を感じる。どこにも行けないお母さんの魂を感じる。痛くて辛くてどうしようもないお母さんの魂を感じる。
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ついに手がかりを見つけた。慎重にいかなくてはいけない。逸る自分の気持ちを押さえなくてはいけない。冷静に。冷静にだ。
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とても慎重だ。とても。でもかならず見てやる。見てやる。
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今日一日あの人を尾行した。得体の知れない中年とよくいる。あの人が隙を見せなければ、中年を見張る事にしよう。
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あの人とあの中年は悪い奴らだ。これまでにしようか。タイムマシーンなどない。志村と楽しく過ごせればそれでいいのかもしれない。どうするべきか、志村に話すべきなのだろうか。でも志村が大事だから言えない。言えない。
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お母さんの自殺はあの木のせいじゃない。あの人に会ってしまったから首を吊ったのだ。あの人は怖い。怖い。でも私は知らなきゃいけない。知らなきゃいけない。あの人のした事を。
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またあの木の所へ来た。お母さんが首を吊った木だ。とても不穏な空気がある。でもやっぱりどこか優しい。
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見つかった。見つかった。見つかった。やばい事になった。
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志村。この日記を志村に託す。志村、私のお母さんは神社にある呪いの木で首を吊った。その理由は、あの人とその仲間の中年が、お母さんに目をつけ、追い込み、薬を使い、如何わしい事をさせていたから。お母さんは洗脳され、自分で徐々に判断する事ができなくなってしまった。その様子に気付いていたけれど、私は何もできなかった。お母さんは一人で悩み、傷つき、絶望して自殺した・・・。それが奴等のやり方・・・。私は知ることができた。でも逃げることはもう難しそうだ。家の前には奴等がいる。家には電話がない。このままでは、お父さんも危険だ。家の下にこの日記を隠す。お父さんなら見つけてくれる。日記のスペアの鍵は木の根本に隠している。志村なら必ず見つけて、この日記に意味がある事をわかってくれるはず。志村どうかあの人には関わらないで欲しい。そしてこれ以上犠牲がでないようにして欲しい。でも・・・。志村どうすればよかったのだろう。わからない。私はおそらく消える。けれど私の魂はあなたに会いに行く。必ず。待っていて欲しい。あの木の下で。必ず会いに行く。
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