第5話 罰

次の日の朝、ユエンは目が覚めてからすぐに自室に戻った。


いつも通り外出用の服を着てまたミホンの部屋へと向かう。


「兄様!!おはようございます!!」


そう言ってミホンの上に飛び乗った。

ミホンは少し怒った顔をして上に乗ったままの弟を振り落とした。


「ユエン。いつも言ってるが、もうちょっと優しく起こしてくれないか?」


「でも、兄様はこのくらいしないと起きないじゃないですか。」


「そ、それは、そうかもしれないが…。」


ユエンはミホンを無理矢理布団から出てくるように手を引っ張り、服を素早く用意した。


「じゃあ、兄様、私は部屋の前で待ってますね。早くしないと兄様の分のご飯も私が食べますからね!」


ユエンは元気よくそういうとミホンの部屋を出ていった。


ミホンは笑いながらユエンの用意した服を身にまとい、愛刀を腰に刺し鏡を見て、身なりの最終確認をしていると、部屋の外からユエンの大きな声が聞こえた。

何事かと思い部屋を出ると、そこにはユエンと父である王様とその臣下が数十人いた。


「父様、違うんです!ミホン兄様は私が切られそうになったところを助けてくれただけなんです!だから、決してアルト兄様に脅迫として剣を振るった訳ではありません!」


ミホンはその言葉で直ぐに何の話かを悟り同時にマズいと思った。


ユエンはお世辞にも頭がいいとは言えず、何も考えず感情的に発言するため人を怒らせることが多い。


これは、兄弟と喧嘩が絶えない原因の一つだった。


しかし、相手が王様となると、いくら血の繋がりがあろうと、発言次第では怒らせ死ぬ可能性もある。


ミホンはすぐに間に入った。


「父様。御元気そうでなによりです。こちらには何用でいらっしゃったのですか?」


そう訪ねると王様は視線をミホンへ移し、静かに距離を詰めてくる。


「ミホン。昨日剣を抜き、あろうことか兄へ向けたそうだな。王子に剣を向けるということの意味をわかっての行動か?」


ミホンは直ぐに膝をつき頭を下げた。


「申し訳ありません。どのような罰でも受けるつもりです。」


王様は静かに少しのあいだミホンを見ていた。

そして、やっと発せられた言葉は、残酷なものだった。


「ミホン、お前には罰として明後日の戦の前線に行ってもらう。敵の首を持って帰ってこい。それまではここに帰ってくるな。」


ミホンは一気に血の気が引いた。

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