第3話 存在
王宮は広く滅多なことが無いと他の兄弟や母には会うことがない。
もちろん父は王様の為自ら会うことは出来ない。
オルトだけ除いて。
オルトは軍を最前で率いる、言わば軍の中で最も偉い立場なのだ。
そんなオルトは父であり王様であるディハエンには特別気に入られていたため、よく2人で朝まで呑み明かす所を他の兄弟は知っていた。
そしてその光景から、次期国王はオルトであると皆悟っていた。
ディハエンがオルトを特別扱いするのは他にも理由があった。
それは、ユエンとミホンの母親をディハエンが嫌っているから。
2人の母親は異国の貧乏人だった。
王様の興味で遊ばれた母親はそれを愛だと勘違いした。
王様もその姿が面白く王宮に迎えた。
しかし、ユエンが産まれてから王様の興味は消えた。
しつこく近寄ってくる女が鬱陶しくなり自分から遠ざけた。
王宮から追い出さなかったのはミホンとユエンが男だったからである。
それから、母親は存在を忘れられ、さらに子供に会えないその寂しさから、自ら命を絶った。
ミホンとユエンがその話を聞かされたのは、母親が死んでから2年も過ぎた時だった。
王宮の誰もがその女の存在を忘れ、更に、2人に近づく事さえ嫌がっていたためだ。
異国の血が混ざりみんなとは違う黒髪、黒目。
この国特有の鮮やかな金髪、太陽に反射され輝く黄金の瞳は2人には一切受け継がれていなかった。
そして2人は母親同様、存在を忘れ去られるようになった。
そんな時、兄のミホンは剣術を習い始め才能が現れた。
オルトの次に腕のいい剣士となり今では国で有望な剣士の1人となり国民からの支持もある。
その反面、弟のユエンは何も出来ず泣くことしか出来ない弱虫。
周りの人は皆ユエンだけ実は王様の本当の子では無いとまで言われたこともあった。
そんな中唯一ミホンだけは血の繋がった弟としてユエンを護り、叱り、褒め、慰めた。
ミホンはユエンにとっては親のような存在だった。
それは今でも変わらない。
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