第1話 【創造】

 何も無い空間に産み落とされた大きな存在。

 ――神。


 突如現れたソレは自身の産まれた意味をすぐに理解し、世界の創造を開始した。自身に与えられた力や知恵を巧みに操り、あらゆる法則を確立させ自身の住まう世界、自然豊かな天界を創造した。さらに神は自分の存在を確立させる為に自身の分身である天使をつかわした。上位、中位、下位とくらいを分けられ天使達はそれぞれに役割があり、その役目をまっとうした。神の意思は絶対であり、それにそむく者は容赦なく天界からはるか下へととした。何度も何度も。これにより天界は何者からも邪魔をされないとても平和な世界となった。


 だが、神はそうは考えていなかった。


 ある時、神は天使とは違う様々な生物を天界とは隔離された楽園エデンの中で創造し始めた。神への絶対服従というかせを取り除いた自由な生物を。それが何のためかは分からない。神の気まぐれか、それとも…。

 様々な課程の中で神は性を分けた2つの「人間ヒト」を創造し男をAdam[アダム]、女をEve[イヴ]と名付け楽園で自由に暮らすよう命じ、同時に絶対に破ってはならないおきてをふたりに言い聞かせた。


 ――いいかい?。楽園の丘の上にある赤く美しい果実は決して口にしてはいけない。それを破れば私は君たちをこの世界から追放しなければならない。いいね?絶対だよ?


 ふたりは神を見つめて大きく頷くと他の生物達と野を駆け遊んだ。その姿に神は満足し静かに見守ることにした。ふたりを信じて。


 だがその掟はしばらくして破られた。天界よりも時間の流れ方が早い楽園で変わらない日常を過ごすふたりには退屈で仕方なかったのだ。だからこそ神の言う掟は彼らにとって刺激的なモノなのだった。怒り悲しむ神は自身が決めた掟に従いふたりを楽園から追放した。堕とした天使と同じ場所へ。


 それがこの世界の誕生である。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 天界より遥か下にある死の世界。天使達はそこを地上じごくと呼んだ。そこにあるのは無残にも堕とされた天使の死骸と、天界とはかけ離れた荒れ果ての大地。よどんだ空気に包みこまれた地上には生物が住むには適さない場所であり、神が手を付けることはなかった。しかし、そんな場所でうごめく存在が居た。それは神が想定していなかった生物、天使の惨死ざんしから産まれた悪魔あくまと呼ばれる存在。悪魔はその勢力を徐々に拡大していき、遂に天をつらぬく攻撃を始めた。

 これを危機とした神は悪魔の殲滅せんめつを天使に命令した。多くの天使はその身を焦がしながら悪魔と戦った。神を守るべく。

 苦戦を強いられながらもなんとか悪魔の統括者であるSatan[サタン]を仕留め、神は地上の浄化の為、サタン討伐に同行していた天使に世界樹の種を渡し、その地に埋め世界樹を育てるあげることを命令した。世界樹は天使の力あってか急成長し、地上は完全に悪魔を消滅させることに成功した。

 世界樹は役目を終えてもなお成長をし続け地上へと根付いた。世界は再び平和を取り戻し、天使達もいつも通り働き始める。



 それから神暦10年。




 ――

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