第4話 異世界の家族

前世の夢を見た。だからといって何か感じることもない。そして今日も苦痛な一日がはじまる。


この異世界での僕の一日は起きたあと部屋にメイドと呼ばれる人が来て笑顔で僕のお世話をする。その後しばらくしたら母親がこれまた笑顔で僕に話しかける。二人の笑顔を見るのは苦痛だ。一体この笑顔の裏にはどんな感情があるのかわかったものじゃない。


その後は母親からの食事を取り眠くなり眠る。そしてしばらくして起き、次は……そうだった。兄と姉が遊びにくる。ふたりとも笑顔で僕に構う。そしてまた食事を母親からもらい眠くなり眠る。ここ何日かずっとこれの連続だ。当然だ、僕は生まれたばかりの赤ん坊なのだから。


夜になり誰もいなくなった部屋に死神が話しかけてきた。


(ケケケ、どうだ?しばらく時間が経ってこれからどうしていくか決めたか?)


何日かぶりに会うそいつは変わりなく嫌らしい笑みを浮かべて僕に聞いてくる。僕をこんな世界に連れてきたこいつはいつか殺してやろうと思うが不思議とこいつの笑みは気持ち悪くならない。


(……まあ、何かしようにも僕は赤ん坊だからどうすることもできない。しばらくはあの気持ちの悪い人たちの世話にならないといけない。)


(ケケケ、気持ち悪いね〜あんなに優しい笑顔でおまえに接しているのにな〜。だいぶ人として終わってるみたいだな)


(受け入れられないのだから仕方がない。ああいう奴らは行動と考えが違う奴らが多いからな。その点お前はマシだ。表も裏も真っ黒だ。そっちのほうが受け入れやすい。)


(おっ!それは嬉しいね〜そんなことを言われたのは初めてだ。やっぱりお前は変わってるな。ケケケ!嬉しいことを言ったお礼に一ついいことを教えてやろう)


(いいこと?)


(そうだ。この場所から早く出る方法だな。教えてほしいか?ほしいだろ〜?)


嫌らしい笑みを浮かべて僕が今一番欲しいものを寄越してくる。憎たらしいが今はそれよりも


(ああ、教えてほしい。僕はすぐにでもここから出ていきたい。)


(いいだろ。ていうか簡単だ、この世界にはお前がいた世界に無いものがここではすごく重要になる。それは魔法だ。魔法さえ使えるようになればここから出ることもできるし何でもある程度は一人でできる。どうだ?魔法さえ覚えれば力を付けさえすればすべてを拒絶できるぜ!な?簡単だろ?)


驚いた。この世界には魔法という物があり存在するらしい。しかもそれさえ覚えれば僕を邪魔する存在はいなくなるらしい。どうせしばらくは死ねないんだ。なら死ねるまで誰にも邪魔されず一人で生きていきたい。それに死ぬ算段はもうついてる。ああ、僕はここに来て初めて少し異世界がよく見えた。


僕は若干気持ちが高ぶるのを感じながら死神に


(僕に魔法を教えろ)


すると何故か死神が


(………お前、いきなり殺気を出すなよ?あと真顔過ぎて若干怖いぞ?ま〜教えるのはいいけどな。とにかくその殺気をしまえ!)


といい引いていた。殺気?なんだ、そんなもの出した覚えがないが何より魔法を教えてもらえるみたいだ。


今後は死神に魔法の使い方を教えてもらいつつこの世界の事を調べないといけない。何が悪で何が僕の邪魔をするのか分からなければならない。あと、死神が言うには


(お前はこれから死ぬ算段がつくまでなるべく普通に、人として普通にしろ!じゃないといろんなやつに目をつけられて結果お前の邪魔になる。なら普通にしてれば邪魔は多少減る。いいな!)


死神の言う普通がわからないがそれは追々だ。だがその後に言った死神の言葉が矛盾を産んだ。


(あっあと、お前は10歳まではここで生活しろ。魔法が使えても小さな子供が一人でいたらそれこそ邪魔者がやってくる。)


はぁ?10歳までここにいろ?意味が分からない。こいつは言った。ここから出たければ魔法を覚えろ、そしたらここから出られると。なのに魔法を覚えても10歳まではここから出てはならない?こいつ、ふざけてるのか?僕は憤りを感じ死神を見た。


(ひっ!お、おい!その殺気を俺に向けるな!確かに矛盾だ。でもこれもお前のためだ。お前はオレが思ったより人として終わってる。なら今は我慢してここにいる奴らから人としての生き方を学べ。そしたらお前は自由だ。少しの辛抱だ。)


納得はできない。こいつの言ってることは支離滅裂だ。信用できない。ただ現時点で僕よりもこの世界に詳しく何よりこいつには魔法を教えてもらわなければならない。なら


(……わかった。とりあえずはお前の言うとおりにしておく。ただ次にわけのわからない事を言えば死にたくなるくらい殺す。いいね?)


(あ、ああ。わかった。)


死神はらしくないくらいにトーンを落として頷いた。


とりあえずは10年間僕は人としての仮面を被って苦痛に耐えよう。10年だ。大丈夫、僕は前世でより長い時間耐えたんだ。造作もない。


僕は一人意識を新たに眠りについた。





眠りについた赤ん坊を前にオレは


(なるほどなるほど。このオレが一瞬ビビったのも無理なかったわ。こいつ既に人じゃなくなってるわ。こいつは)


オレは目の前の赤ん坊のステータスをみて確信した。こいつはいずれオレを従来の死神殺しとは違うやり方で殺してくれると。

そう思い静かに死神は笑った。



ステータス


名前 クロム・スチュワート

種族 死神(死神ルチアの死神の加護の影響とこの人間の人格破壊により死神へとクラスチェンジした)

生命 unknown

魔力 7777777+

身体 unknown

運  0

精神 break

加護 死神ルチアの加護


×以上をもって所持者クロムを人格破綻者認定、人としての存在を否定。クラスチェンジにより死神へと移行する。



×死神ルチアの加護発動を確認。ルール適応


×ルール

1.悪者を感知次第即断罪を決行。


2.所持者が愛情という人としての感情を獲得後速やかに所持者を処分。


3.死神ルチアが死亡した場合、死神ルチアの加護が消失し、所持者は二度と死ぬことができなくなる。これは愛情を得てしてもである。


4.所持者が死亡した場合、死神ルチアは肉体を得て所持者の代わりにこのルールを引き継ぐ。引き継ぐのはルールだけでなく前所持者の精神も引き継ぐ。


以上、上記のルールは死神ルチア、所持者クロムは閲覧不可。×のマークは閲覧不可。これは死神ルチアの加護に生命の女神ヨハネの加護を上書きしたものを採用。


これは私の呪い。決して只では死なせてあげません。むしろ死ぬことを貴方方が望むことを否定し拒絶させていただきます。


ではさようなら。 生命の女神 ヨハネ




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そして僕は……… 無色透明 @nonono000

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