第3話 死ぬ方法

憎たらしい死神は嫌らしい笑みを浮かべて死神が死ぬ方法があると言った。


(それはなんだ?どうしたら俺とお前を殺せる?)


(それはだな、愛情を持つことだ。)


と死神はふざけたことをいった。愛情?何だそれは。意味がわからない。それはどういった感情だ。意味がわからず黙っていると


(前に死神が一人の人間に恋をした。ふざけた話だがそこからその死神はその人間と会話をし、触れ合っていくうちに死神はその人間に愛情を抱いた。その瞬間その死神は灰になって死んだ。つまり死神にとって愛情と言う得体のしれない感情を抱いたら死ぬってことだ。人間であるお前ならすぐにでも死ねるんじゃないか?オレはむりだけどな〜ケケケ)


(……………無理だ。)


(は?なんでだ?お前は人間だろ?すぐにでも誰かに愛情を抱くさ。ま〜それまでは気楽にやれや。お前は退屈しない楽しいことがしたかったんだろ?なら死ぬまで元の世界でできなかったことでもやるんだな。はぁ〜あ久しぶりこんなに喋ったからねむ〜、じゃあまたな〜)


と言ってまだ何も解決していないのに言いたいことだけいってどこかに消えていった死神を僕はただただ黙っていた。


退屈しない楽しいこと?僕はあの世にいけば退屈であろうと楽しくなかろうと構わなかった。ただ質問をされたから無難に答えただけだ。あの世さえ行ければなんでもよかった。それなのにまた僕は人生という苦痛に耐えないといけないのか!


それになんだ。愛情を抱くと死ねるって。愛情なんてものは僕の魂の中にはない。いくら新しい肉体を手に入れても魂は僕のままだ。変えられない。無理だ。だって僕は元の世界で子供の時に感情を捨ててしまったのだから。



夢を見た。前世の人生の夢だ。


僕は割と裕福な家に生まれた。何不自由なく生活をして学校でも友達がたくさん出来た。そんなある日父親が死んだ。交通事故だった。突然のことで僕は理解が出来ず涙すら流せなかった。ただ段々と時間がたつにつれ理解していき僕は大泣きした。そこから僕の人生は狂いだした。父親が死んだことで母親は荒れに荒れた。父親の残した財産を物や男に使いだし、綺麗なマンションも家賃が払えず別の安いアパートに引っ越した。


昔は優しい笑顔で僕の頭を撫でてくれた母親も今では怒り狂った顔で僕の頭を殴った。最初は僕のちょっとした失敗からだったが徐々にエスカレートしていき何もしてないのに殴られるようになった。


その後僕が小学校四年生の時に母親が再婚した。相手は少し父親に似てる優しそうな人だった。良かった。これで母親も安定して僕にまた優しくなるんだろうと思った。


でもならなかった。それだけじゃなく優しそうな人だった父親までもが僕を殴り暴言を吐くようになった、僕が中学生なったころからだ。そのときには何で殴られるのかとかどうしたらやめてくれるのかそんなことは考えなくなった。


段々とあざが増えていく僕に学校の子たちは最初は心配していたけど僕の態度などをみて徐々に気味悪がって避けるようになりある者はこいつは何してもいいと勘違いした奴らが僕を人気の無い所に呼んで殴った。でもなんとも思わなかった。


そんな日々が続いたとき一人の女のコが声をかけてきた。この子の名前は何だったっけ?その子は小学校のときから僕の事が好きだったみたいで中学生になり告白してきた。だがもうその時には好きという感情すら何なのかわからなかったので断ろうとしたら今は友達でいいと言われた。


僕としてはどうでもよかったので了承した。


それからはその女のコが僕の机に来ては話しかけ何がそんなに楽しいのかずっと笑顔だった。


僕としてはどうでもよかったがそれをよく思わないやつがいて、そいつに呼び出されては殴られ暴言を吐く。ただ僕は何も言わない。黙っていたらそいつが


「二度とあいつとはなすなよ!次話したら殺すぞ!」と脅してその場からそいつとその連れが離れようとした所で僕の中の何かが壊れた。もともと感情などはすでに壊れてたと思う。でも今回のは何かが違う。


そして気づいたら僕は僕を殴ってた人たちを


近くにあった椅子で殴っていた。急に殴って来られたからびっくりしたのか一瞬止まっていたがすぐに動いて僕に殴りかかってきたが僕は構わずその殺すと言ったやつを何度も何度も殴った。意識がなくなっても殴った。その後残りの二人も何度も何度も殴った。途中泣きながらやめてと言っていたが構わず殴った。


そして気がついたら目の前には血だらけで倒れてる3人。僕はその3人に向けて再度椅子で頭を殴った。


その後制服を脱いで家に帰る。すると家には両親が馬鹿笑いをしながらお酒を飲みテレビを見ていた。二人は僕が帰ってきたのを確認したあと


「なんだよ、いいところだったのにお前のせいで見る気失せたわ。まじで死ねや」


そんな理解のできない事を言ってテレビを消した父親。母親も僕をまるで汚物を見るように少し見てからお酒を飲んだ。その光景を見た僕は


(あ、そうか。これが殺意か。なんだ僕にも感情が残ってたんだ。)


僕はなんだか気分がよくなり台所に行き普段僕が使っている包丁を取り、なんの躊躇もなく父親を刺した。母親が目を見開きこちらを見た。さっきの汚物を見るような目ではなくそれは恐怖で恐れてる目だった。その目を見たとき僕は生まれて初めて興奮した。


僕は母親に近づき母親が何か言っていたが気にせず包丁で刺した。倒れてる二人を見て僕はさらに二人を包丁で刺した。気づくと目の前には血の海ができていて電源のついてないテレビには返り血をあびた僕がいた。その時見た僕は笑っていた。


しばらく笑ってなかった。感情が動かなかった僕が久しぶりに笑ったんだ。嬉しかったのかもしれない。僕もまだちゃんと人としての感情があったんだと。でもこの感情が急激に冷めていくのを感じる。


外の雑音がうるさい。僕はこの感情をなんとしても失いたくなくてでも冷めていく感情。ならいっそその感情を持ったまま死にたい。そう思ったときには僕は包丁で自分の心臓を刺していた。



目が覚める。僕は今日も無くした感情で生きている。

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