第一章2『温もりの余韻』
───「ぶ…じょうぶ…」
フワリとした意識の中、どこからか声が聞こえてくる。
気持ちの良い空間に漂っていたいともう一度意識を無意識に戻そうとするが、何度も声が響いてくる。
何やら焦っているようだが、こんなに穏やかな暖かい空気に包まれた空間で何を焦っているのだろうか。
───「大丈夫か!?」
叫ぶ声と共に目が覚めた。
自分を囲って見つめる大人達が視界にぼやけて映る。
ブルーは状況がわからず、起き上がろうとして、やめた。
いや、やめざるを得なかった。ガツンと頭に衝撃が走ったように
多くの大人が叫んでいるようだが、周りの声がはっきり聞こえない。聴覚に異常を起こしているようだった。
左手で頭を抑える。
触ると、包帯のようなざらざらとした感触を感じた。
手を離して見ると、赤い染みが左手にまで及んでいた。
そこで、ようやく自分の状況を理解した。
「エグ…マ……?」
自分を襲った正体の名前を呟く。
ゆっくりと起き上がり、少しずつ音が聞こえてくるようになった。
周りの大人の顔もはっきり見えるようになったが、そこに父親の姿はない。
「あぁ良かった…君、声は聞こえる?」
多くの大人が囲んでいる中、近くにいた男性が声をかけてきた。
叫んで起こしたのはこの男性だろう。
見ると、男性の腕には赤い染みが出来ていた。
自分を運んでくれたのもこの人だろうか。
「聞こえ…ます。一体何が…」
もう一度頭を抑えながら応答した。
ドクドクと脈を打つ感触が嫌な想像を掻き立てられるが、無理矢理意識の外に持っていく。
「森の方から爆発音が聞こえたと思ったら突然森が燃え出したんだ。そこに住んでいる人がいることを思い出して救助しに行っただけだから、俺達もよく知らない…すまん」
寝ている間に
なんでこんなことに…寝る前の記憶が呼び起こせない。
───いや、そうじゃない!
「父さんは!?父さんは無事なのか!?」
大人達がハッとした顔をして、顔を曇らせた。
嫌な予感がする。
静寂が、強くブルーの心を揺さぶる。
少しして、先程の男性が口を開いた。
「僕達が行った時は君一人だけだった。他に人は…見てない」
顔を暗くして俯く男性を見て、ブルーは切ない現実を悟った。
頭上を見上げ、照明が顔を照らす。
光がぼやけて見えるのはきっと、頭痛のせいだ。
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