第6話 僕はオオカミ

僕はオオカミ。パパとママと3人で暮らす。

でも僕たちは普通のオオカミ家族とはちょっと違うんだ。

「ご飯できたわよ。」

ママがご飯を運んできてくれた。

今日も特製ソイミートバーグ。

そう、僕ら家族は動物を食べないんだ。

「人間を食べるなんてもう昔の話。

 我々は殺生せずに自分の命を守っていくからな。」

小さい頃からそうパパに言われて育ってきた。

僕は一度もお肉というものを食べたことがない。

パパとママは毎日朝から沢山の作物を育ててるんだ。

たまに僕もお手伝いする。



「こうやって足で土を掻き回すと稲にたくさんの栄養がいくんだ。

 そうなれば美味しいお米がいっぱい食べれるぞ!」

「うん、わかった、パパ!」

冷たい泥の中に裸足で入るのは冷たいし気持ちがいいんだ。

最初のうちはちょっと気持ちが悪かったけどもう慣れっこだい!




「おっ稲穂が垂れてきたな。そろそろ収穫かな?」

「ほんとに?やったー!」

「うん、もうすぐ食べれるからな。」

僕はお米の収穫を心待ちにした。




「いってきまーす!」

「鐘が鳴ったら帰ってくるのよー!」

「はーい」

僕は玄関を走り抜け、稲を横目に公園へと遊びに行った。




太陽が焼けてきた。そろそろ鐘が鳴ってしまう。帰らなきゃだなぁ。

そんなことを考えていた時だった。

バーン バーン バーン

耳を塞ぎたくなる音が家の方から聞こえてきた。

僕は怖くなって茂みの中に隠れた。

しばらくすると二足歩行の生き物たちが細長い棒を持ってかけていった。




彼らの姿が見えなくなると僕は茂みからそっと体を出して急いで家まで帰った。


もう辺りは薄暗かった。




家が見えてきた、と同時に家の前に何かが落ちている。



僕はつい目を瞑った。手で目を覆った。

「ママ?」

この時間にはご飯の用意をしてくれているはずのママが返事をしない。

裏庭の畑に向かって

「パパー?」

そう叫ぶ。辺りは静まり返った。

恐る恐る目を開けるとそこには信じられない光景が広がっていた。

「パパ、ママ…」

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