第5話 傍観者

はー。浦島さんのおかげでなんとか生き延びた。

また近いうちに復讐をしにいかねばならないな。

「かぐや姫、お前さんはどこへ行くのだ。」

「かぐや姫さん、そんなに走ったら遠心力で宇宙まで飛ばされてしまうぞ。」

「おじいさん、おばあさん、安心してください、亀さんのところに行くだけよ。

 あとおばあさん、宇宙まで飛ばされる前に燃やされてしまうわ。」

「かぐや姫さんが燃やされてしまう!大変だ!」

なんと滑稽な老夫婦とその孫娘なことか。

さ、俺は早いところ陸の方に…


「亀さん。」

「…」

「オオカミさん!」

「あぁ?!俺のことか。なんだ?」

そうだ、俺は今亀だったんだ。

うっかり忘れていた。

「私、見ちゃったんです。あなたオオカミさんなんですよね。」

「なにっ⁉︎どこから見ていた?!」

「私先日竹から産まれたかぐや姫と申します。

 竹から出ようとしていたらあなたが亀に化けるのを見てしまって。」

「なにが…言いたいんだ?」

「その…浦島太郎さんに謝りに行った方がいいかと…」

「どうしてこの俺様がそんなことをしなければならないのだ!」

かぐや姫が大きく息を吸った。

「自分がオオカミだということを明かしに行くべきです!

 本当のあなたの姿を見せるべきです!

 私、あなたのことを一目見た時から世界がキラキラ輝いて見えて。

 なんでもない日常が楽しくてしかたがなくなって。

 でもあなたは浦島さんに嘘をついている。

 そんな人のことを好きになっていいのか。

 そんな想いが段々募っていきました。」

「あぁ…。大体なんであなたみたいな人が俺のことを…。」

「あなた、昔は人間を食べなかった、そうですよね?」

「?!なんでそれを…。」

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