エピローグ_グッドエンド:面会

「……久しぶりね、“ジョーカー”」


面会室で、あなたは数日ぶりにシュネーと再会する。彼女は一瞬驚いたような、安堵したような複雑な表情のあと、仕切りなおすように月並みな挨拶をした。


「差し入れはないの?……冗談よ。その元気そうなしかめ面で十分」


 シュネーも嫌味を言う程度には回復しているようで、あなたは苦笑いを返す。とはいってもその口調から再会を喜んでいるのは確かなようだ。


「私? ぼちぼちね。今朝はあんたが出てくる……いえ、出てこない変な夢を見て、目覚めが最悪だったわ」


 シュネーの不思議な恨み言に、返す言葉に困ったあなたはゴメンと謝ってしまう。シュネーはニヤリと笑って言った。


「少しでも申し訳なく思うなら、今度何か食べる物持ってきて。次に会うころには固形物を食べても大丈夫になってるはずだから」


 勝手に土産を要求するシュネーに、警備員がじろりとにらみを利かせる。しかし彼女は臆することなく、あなたに質問を投げかけた。


「あんた今日の裁判は傍聴していくの?」


 あなたは首をかしげる。


「……なんだ。知らずに来たのね。今日は一回目の裁判よ。傍聴していく? それとも弁護側の証人席に座ってくれるかしら」


 あなたは首を横に振り、今日はコックピットの録音データを確認しに来ただけだと答える。


「あぁそう、例の音声記録の確認に来ただけ……ね…………」


 あなたはマイクに問題があり、自分の声がほとんど録音できていなかったのだと説明した。そのため自分の発言を思い出してデータを補完する必要があったのだ。


「やっぱり壊れてたか……ん? 確認? あれを聴き直すってこと?」


 あなたは頷く。


「待って、私最後の方何言ったかよく覚えてないけどなんか……ダメ! ダメな気がする! せめて私が先に聴いてからになさい! え? もう面会時間終わり? 話は終わってないっての! こら! 無視するんじゃないわよ! 待ちなさいって──」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る