14 時雨龍の祠
属性魔法について、周りの人に聞いてみた。
・エンテカの場合
「そりゃあ、火魔法一択だろうよ。
火魔法は強いぜ!。圧倒的な攻撃力。近距離での殴り合いにおいて最も強い。
遠距離からチマチマなんて根暗野郎のやることだからな。
男はやっぱり腕っぷしが強くないと。
あと火魔法はロマンだぜ。」
サーシャの予想通りだな。
・村長の場合
「わしは強化系じゃから光魔法を主に使っておるがの。
この世界は厳しい世界でな。戦いを避けるように生きていてもなにかしら争いの火種に巻き込まれるもんじゃ。そんなときに自分を守れたり友人を守るには光魔法がピッタリじゃよ。わしの友人もくだらん争いに巻き込まれて何人も死んでしまったの。
習得までに時間がかかるが、それ以上の価値があるでの。」
村長様の言葉は含蓄が深い。
確かにこの世界での唯一の回復手段と考えるなら生き残るために学んでおいていいんじゃないかと思う。
・ノームの場合
「土魔法こそが最強じゃ。今立ってるのはどこだと思う地面だろう。
この無限に広がる地面を味方につけている土魔法こそが最高よ。
今はまだ魔力が回復していないから特殊な鉱物は生成できないが、極めるとこの世界の最高硬度の矛と盾が手に入るんだぜ。
しかもお前には直々にこの私が教えてやるからな。栄誉なことじゃ。」
押しがやや強すぎるが確かに土魔法は使い勝手やよさそうだ。
・サーシャの場合
「私は風魔法をメイン、水魔法をサブ、契約で氷魔法を使ってるけど。最強の属性って結局ないわね。相手の能力と環境を見極めて最適の能力を使うってことが重要だから。
そのうえでいうけど、遠距離においては風魔法は他の追随を許さないわ。なんといっても射程が違う。
私の戦い方は相手に距離を詰めさせないさせないってことが重要になってくるんだけど、相手を近づかせないって点では水魔法は粘度の高い水による拘束、霧による視界妨害ができて優秀だし。契約してるツララ姫の氷魔法は水と相性がよくて広範囲の複数の敵への制圧ができるし、自分でいうけどなかなか隙がないと思うわよ。」
たしかに最近は属性魔法を絡めて魔法の修行をしているが、まったく勝ち筋がなくいつも障壁で守ってるだけでおわってしまう。
分かっていたことだが、それぞれの魔法にそれぞれいいところがあるため優柔不断な俺は結局決めることができなかった。
最終的にはまず、属性魔法をすべて練習してみて自分に合ったものを選んでいくということで落ち着いた。
それからは運動、構築、強化の魔法は練習しつつ、土魔法を主とした属性魔法の練習をおこなった。
土魔法はエンテカとの試合前に契約したノームに教えてもらい、火魔法はエンテカに、風魔法、水魔法はサーシャに、光魔法は村長に習った。
氷魔法はサーシャの契約精霊の氷柱姫が教えてくれず、本などでの独学となったが、なかなか思うようにいかなかった。
エンテカはやはりサーシャのことが気になっているようなので、サーシャにエンテカとの良さを伝えたり、合同で魔法の練習をしたりなどで2人の接点を作ることによりエンテカからはかなり感謝された。
試合のときの敵対関係とは一転し、今ではよく飲む仲になっている。
エンテカとの試合があってから村の人も俺のことを認めてくれたようで良好な人間関係を築いている。
こうして数か月が過ぎ、村の生活にも慣れてきた頃だった。
普段、ゆったりとした村の皆がいそいそと何かを準備しているのに気が付いた。
サーシャに聞いてみると、1年に1回の祭りがあるそうだ。
農業にいそしむものは1年の実りの一部を、狩猟に勤しむものは狩りの獲物を、建築、工芸に勤しむものは神殿にささげる鉾をそれぞれ用意しているそうだ。
自分にも何か手伝えることはないかと聞くと、神社の周囲の掃除をしてほしいといわれたので、今日はサーシャとの修行は早々に切り上げ、神社へと向かうことになった。
エンテカも一緒に行きたいだろうからと声をかけると、「もちろん行くぜ」とのことだ。
エンテカも普段狩りして生計を立てているが、祭りのときにはエンテカの家は代々祭りの火を灯す役らしく、祭りの前にはあまり準備をすることはないとのこと。
こうして3人で神社に行くことになった。
「そういえば、お祭りってなんの神様を祀ってるんだ?」
「ああ、竜だな」
とエンテカ。
もう少し情報が欲しかったが目をそらされた。
サーシャに目を目を向けるとしょうがないわね。
といいつつ嬉しそうに語り始めた。
「竜とはいえ普通の竜とは違うわよ。時雨龍と呼ばれているわ」
ちなみにこの世界は普通に竜がいる。
数はそんなに多くないらしいが。
「この世界は3柱の精霊によって作られたといわれているのは知ってるわよね。
時間、空間を創ったクロノス様、大地、海、空を創った時雨龍様、そして人を創ったセト様」
村長さまの家の本でそういえばよんだな。
「その3柱の1柱。時雨龍様に日ごろの恵みの感謝を伝えるのがこのお祭りの趣旨ね。
おいしいもの食べて、踊ってるだけじゃないんだかね。聞いてる。エンテカ?」
「おお!当たり前だろ」
全然話きいてなかっただろうが、まあまあと、とりなしておく。
「ほら、あれが神社かな」
神社は簡素な作りだった。
人と同じ大きさぐらいの石が周りに並べられ、真ん中に龍の石像、彫り物を守るような簡単な屋根がついている。
半分、自然に侵食されていて、雑草は伸び放題だ。
「去年も掃除したんだけどねー。植物はほんと強くって」
サーシャがため息をついた。
3人で手分けして草をむしったり、積もった落ち葉を掃いたり。
裏手に回ってみると、さきほど気付かなかったが、石像の後ろに苔むした石碑のようなものがあった。
せっかくなので、苔を取り除き、石を磨いていると文字が彫られているのに気づいた。
「こんな石あったか?」
いつのまにか2人がすぐ後ろにいた。
「なにか書いてあるんだけどね。古代文字なのか。
私たちが使う言語とは全く違って解明されていないのよね」
「俺、これ読めるかも」
「え!」「ほんとか?」
2人が驚いて声を上げる。
異世界にきてからの唯一の能力かもしれない。
「読んでみるぞ」
「汝、この精霊文字を理解する者。いにしえの約束を果たし、冥界からの試練を授けん」
ん?なんだかよくわからな
ストンと突然地面がなくなり俺たちは落ちた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます