第52話 十傑会議1
十傑会議当日、昨日は龍之介たちが合コンをしていたわけで、その結果をそれとなく宗一郎に聞いてみると、二人ともダメだったみたいだ。
まぁ仕方ない。
きっと合コンと言っておきながら女の子の方は宗一郎が目当てだったのだろう。
あいつも結構鈍感だから、自分が好意を持たれていることに気づかずに誘ったのかもしれない。そして、龍之介たちはその犠牲になったと……
しょうがないから今日はあいつらに優しくしてあげよう。
十結会議はお昼からあるようで、十傑は午後の実技の時間は出席せずにとある場所に案内されることになっている。
なんでも、十傑以外立ち入り禁止の場所があるらしく、獅子王アプリで調べてみると秘境の地と名付けられていた。
「うおーすごいね」
「外国のお城みたいだね。っていうか、外から見たら絶対に目立つと思うんだけど、今までこんなの見かけたっけ?」
「この敷地一帯に常に認識阻害の魔法が仕掛けられてるみたいだよ。他の生徒には内緒にされているらしい」
「へー」
秘境の地に足を踏み入れてみると、そこはまるで別世界のように煌びやかな場所になっていた。
大きなお城が立っており、その周りには十傑御用達のお店や遊戯場が設置されていた。
ここだけ、学園の中だと思えないほど豪華な場所になっているけど、これも十傑特典の一つなのだろう。
少々十傑が優遇されすぎてやいないかと突っ込みたくなるけど、この世の中が実力主義なのは確かなので、今更突っ込むのもおかしいのかもしれない。
「なるほど、外で他の学年の十傑を見かける機会が無かったのはここが原因か……」
「ここに比べると、街エリアとか不便なんだろうね。変に注目されるし、他の生徒に声をかけられまくるし」
「でも私は街エリアの方がいいなー。あっちの方が学生生活してる感じがする」
「それわかるかも。ここって豪華すぎてたまになら来てもいいけど、普段から通ってると感覚がおかしくなりそう」
意外にもこの秘境の地は女性陣からは不評のようだった。
確かに、たまに特別な理由で来るのは全然いい……というかむしろ最高なのだけど、普段からこんなところに通ってると、外に出た時にギャップで苦しめられそうだ。
あと、個人的にあんまりキラキラした場所が好きじゃないから俺もどちらかというといつもの街エリアとかの方が好ましかったりする。
「集合場所はあのお城の中だよね?」
「うん。城の前で案内してくれる人がいるらしいよ」
「メイドさんかな?」
「また蒼は……」
いやだって重要じゃない?
現代の日本ではメイドという文化はほぼ残ってないし、健全な男子高校生ならちょっと憧れたりするだろう?
異世界に行けばまだメイドの文化があるようだ。
というか、そもそも異世界の文化らしいから、そっちでは主流なのかもしれない。
今度の長期休みの時に旅行に行こうかな。
「ほら、馬鹿言ってないでさっさと行くわよ。蒼は大人しくしときなさいよ?」
「大丈夫、こいつが調子に乗りそうになったら俺が止めるよ」
「宗一郎が見張ってくれるなら安心ね」
「俺ってもしかして犬か何か?」
ひどい!
ちょっとメイドさんいないかなぁって思っただけじゃん。
あ、あっちにえっちなお姉さんたちがいそうなお店が……
「こらっ」
「うげっ」
気配を消そうにも、ほぼゼロ距離の位置に宗一郎がいるためダメだった。
うぅ……ちょっと気になっただけなのに。
ちなみに、俺と宗一郎のやりとりを見ていた龍之介と湊はため息を吐いていた。
「ようこそ。すでに他の十傑の皆様は揃っております」
「あれ、集合時間間違えた?」
「いえ、みなさまのことが気になって早く集合なさっているみたいです」
よかった。
別に遅刻してもお咎めはないと思うけど、余計な火種を作りたくは無かったしね。
今日の俺の仕事はずっと静かにして嵐が過ぎ去るのをただただ見守っているだけだ。
一年生の進行役は宗一郎と朱音の二人がやってくれる手筈なので、俺はリンと戯れているだけでいいという実に簡単なお仕事だ。
大事なのは目だないことだ。
「蒼、絶対に綺麗な先輩を見て興奮するなよ?」
「やれやれ、俺を誰だと思ってる? そんな万年女の子の尻を追いかけてるような奴とはちが……」
「あそこにエッチな格好をした女の子が……」
「どこだっ!」
「「「はぁ……」」」
そんなにあきれなくてよくない?
なんだか、どんどん宗一郎たちから呆れられている気がするので、流石にそろそろ落ち着かないとダメっぽい。
案内してくれている人も、俺たちのやりとりを見て気まずそうに苦笑いをしているしね。
もちろんこのやりとりは八割はネタなので安心して欲しい。
「こちらの部屋になります。入って右の席が一年生の席となっておりますので、そちらに着席をお願いします」
「わかりました。ありがとうございます」
「いえ、初めての十傑会議で緊張されているかもしれませんが、頑張ってください」
案内人の男の人は最後にそう言って、俺たちの元から姿を消した。
しっかりと魔法を使って、一瞬で姿を消せるあたり案内人の人も只者ではない感じがしたけど、今はそれよりも部屋の中から感じるただならない気配に気を向けないといけないっぽい。
さすが上級生の十傑だ。
この学園に一年以上も滞在しており、なおかつ各学年のトップに君臨しているだけあって、強そうな人が多そうだ。
まだ室内には入ってないけど、それは俺だけじゃなくて宗一郎たちも感じ取っていると思う。
それでもなお、笑みを浮かべて楽しそうにしている彼ら彼女らは本当に頼もしいと思うよ。
さて、無事に終わってくれるといいんだけどね。
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