第53話 十傑会議2
「一年、十傑第一席北小路宗一郎入ります」
代表して、宗一郎がそう言って扉を開けると、中からの多くの視線を感じた。
室内にはコの字型に机が設置されており、右に一年生、左に二年生、そして奥に三年生が座ることになっているようだった。
そして、さっき案内人の人が言っていた通り、俺たちが最後だったようで他の一年生の二人や他の学年の十傑の人たちはすでに座って俺たちのことを待っていた。
緊張はしてないけど、緊迫した空気に少しだけ居心地が悪くなってしまう。
あくまでも俺は今日サブキャラなので、静かに席に着席をする。
リンはすでに俺の肩に座って楽しそうに鼻歌を歌っている。
この空気でここまでリラックスできるのであれば、問題ないだろう。
しかも例のごとくしっかりと警戒を怠らないあたり、もし戦闘になってもリンが足を引っ張ることはなさそうだ。
むしろ、俺が助けられそうだ。
ここで、リンが本当に普通の妖精なのかという疑問が浮かび上がってくるが、これがまた謎である。
昨日、アーニャにリンのことを聞いてみたんだけど、本人曰く「わからない」だそうだ。
アーニャは幻王ということもあり、妖精や精霊たちは全て把握しているはずなのだが、そのアーニャですらリンのことはわからないそうなので、一旦考えるのはやめにした。
一応、ティアやロキにも確認してみたが、リンのような妖精は知らないとのことだ。
リンも何か隠しているみたいだったけど、現状俺たちに悪いようなことはしないのは確信しているので深く追求することはしなかった。
ティアたちとも仲良くしていたのでよかった。
「これで全員揃ったな。これより、十傑会議を始める」
俺たちが着席すると、三年生の一番真ん中に座っている人がそう宣言した。
「一年生は初めてだとは思うが、あまり気負わないで欲しい。まずはそれぞれ、自己紹介から始めよう。私は三年十傑第一席の加藤伊織だ。生徒会長も務めている」
「私は三年十傑第二席、生徒会副会長の倉木萌よ。よろしくね」
この学園にも生徒会ってあったんだなーとか考えていると、三年生の挨拶が一通り終わった。
加藤先輩はいかにも真面目な人といった感じで、副会長の倉木先輩はきっちりしてそうだけど、言動の節々でゆるっとしている部分もあった。
きっと、三年間学年の1、2として他の人たちを導いてきたんだろうな。
二人はずば抜けて威厳のようなものもあるし、きっと三年生の中でも二人はトップクラスに強そうだ。一度戦ってみたいけど、その機会が果たしてあるかどうか……
「じゃあ次は二年の俺たちだね。二年十傑第一席、小倉慶太だ。どうぞよろしく」
「二年十傑第二席、織田静香。風紀委員長をしている。よろしく」
「ん?」
織田先輩が一瞬龍之介の方を見て笑った気がしたけど気のせいか?
確か、織田と武田ってあまりいい関係じゃ無かったはずだし、何か因縁でもあるのかな?
でも、龍之介の方も軽く会釈をして少し嬉しそうだし……まさかな。
「二年十傑第三席、五十嵐霧野です。よろしくお願いします」
今度は五十嵐先輩と湊が何か会釈をしている。
こいつら昨日は合コンで失敗しているはずだし、流石に宗一郎も十傑の先輩を合コンに呼ぶようなことはしないはずだ。
となると、違うどこかで出会っていたということになるんだけど、まぁ何はともあれ二人とも仲がいい先輩がいてよかった。
……ちょっとしか嫉妬してないよ? 九割は龍之介たちにいい人っぽいのがいてよかったと思ってる。
でも悔しい。
あんなに美人な先輩に可愛がられるなんて、俺には一生訪れない未来だ。
ティアたちは先輩というかお姉さんっていう感じだしね。
その後、俺たちも自己紹介をし終えると、早速議題に入るようで、加藤先輩が話し始めた。
「今日はまず顔合わせが目的だ。そういうわけで、一つ面白い試みをしたいと思う。萌、説明頼んだ」
「えぇ、ちょうど三学年全ての十傑が揃っているから、三人一組を組んで決闘をしましょう。もちろん、全て別の学年でね」
「決闘のルールはチームによって任せる。攻城戦にしようが決闘戦にしようが、なんでもいい」
ふむ、早速第ピンチである。
まさか、顔合わせ一発目から戦うことになるとは思わなかった。
確かに楽しそうではあるけど……
「まぁでもその前に一年生に説明しておかなければならないこともあるから、先にそちらから行こうか……」
加藤先輩は俺たち一年生のためにこの十傑会議でのルールだとか、獅子王学園で過ごしていく上で、十傑が注意すべきこととかを話してくれた。
特に、この十傑会議は月に一度は必ずあるそうで、絶対に参加しないといけないそうなので、予定を入れないようにと言われた。
毎月一日に行うようなので、その日は予定を入れないように気をつけよう。
他には秘境の地は十傑でいる間はいつでも利用可能だということだったり、その他もろもろ教えてもらえた。
まぁ「わからなくなったら獅子王アプリに書いてあるということなので、そっちを見てくれ」とのことなので、そうすることにしよう。
正直今は最後の親睦会のことで頭がいっぱいだ。
誰とチームを組むのが一番安全か。
ここで、変な先輩に目をつけられでもしたら非常に面倒なので、ぜひ適当な先輩と組みたいところだ。
あ、可愛い女の先輩でもよしだ。
もしそうなったら途中でフィードアウトしてどこかで休憩という名の……
「雑念!」
「あいたっ! 宗一郎お前……ごめんなさい」
「うん。それでいいよ」
俺が何かを言う前に、宗一郎は無言の圧で脅してきた。
こうなると俺には謝る以外の選択肢がなくなってしまうため、強制的に負けが決定してしまうのだ。
理不尽極まりない話だが、こんなところでこれ以上揉めても注目されるだけだから大人しく引き下がってやろう。
「よし、じゃあチームを組もうか。そうだな……くじ引きでいいか?」
加藤先輩の提案に誰も異議なしということで、1から10が書かれた紙を学年ごとに引いて、同じ番号になった人とチームになることになった。
俺が引いた番号は7。
ちょうど自分の席と同じ番号で縁起がいい。
これは可愛い先輩で濃厚だな。
「あなたが7番?」
「えぇ、もしかして倉木先輩も……」
「ふふっ、7番よ。よろしくね」
よっしゃぁぁぁぁぁ!!!
来たっ!
俺の豪運が炸裂したっ!
ふっ、俺レベルになるとこのくらい……
「喜んでるところ悪いけど、私伊織と付き合ってるわよ?」
神様はいなかったみたいです。
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