第45話 お疲れ様会

「それじゃあ、今日はお疲れ様! 乾杯!」


「「「「かんぱーい!」」」」


 俺の言葉で、みんなと乾杯すると、それぞれ話したい相手の元に行き、自由に食事を食べ始めた。

 今回は立食形式の方が都合が良さそうだったので、食事もそれに適したものを用意した。


「……僕頭が痛いわ」


「奇遇だね。僕もかなり圧倒されているよ。あそこにいるのはティアマト様でしょ?」


「そうだね。始祖の神に破壊神、そして幻界の王までいる。ここは本当に日本か?」


 先生たちはさっきから飲み物を持ったまま、この異常な空間に唖然としている。

 まぁ、確かに今まで厄災級でも騒がれていたのに、ここにはそれを超えるものが3名いるのだ。それに加えて、厄災級の中でも最高位のアウラたちがみんな仲良くお酒を飲んだり食事をして笑っているのだ。


 普通なら信じられるはずがない光景だ。


「先生たち、きてくださってありがとうございます」


「一条くん。僕はお疲れ様会や言うから参加してんけど、これはどういうことや……」


「あぁ、紹介しますね。まず僕のアウラから……」


 俺はそういうと、ティアたちに一度きてもらい先生たちに挨拶をしてもらう。

 普段のままだと、いくら先生たちでもティアたちの圧力に負けると思うので、事前にこちらで結界を張っておく。


「神界の最高権力者、ティアマトよ。蒼の先生なんでしょ? よろしくね」


「妾は魔界の最高権力者、ロキ。よろしくな人の子らよ」


「私はアーニャだよ〜。一応幻界の王様やってまーす」


「厄災級第一位のリオンよ。これからも蒼のことよろしく頼むわね」


「そして私が厄災級第五位のミカエルです。今日は皆様お疲れ様でした」


 最後にミカエルがお辞儀をすると、柊木先生たちも慌てて頭を下げてお辞儀をした。

 厄災級だけでもお腹いっぱいなのに、ティアたちを見てもうどうしていいのかわからないと言った様子だった。


 まぁもう先生たちは手遅れである。


 これからはいろんな意味で仲良くしていきたいものだ。


「ということです。あと、先生たちが見ていないのは宗一郎の円卓の騎士だけですね」


 宗一郎はアーサーだけでなく、円卓の騎士全員と契約しているため、人数もそこそこいる。

 その中でも、特に注目すべきは厄災級第58位のランスロットと213位のガウェイン、287位のパーシヴァルだろうか。彼らもとても強いので、もし宗一郎が戦争で大人数で戦うとなった場合は非常に厄介だ。


 それ以外の騎士もみんな第一級のアウラなので、決して弱いことはない。


 数だけなら俺よりも多いので、宗一郎が敵に回れば非常に厄介極まりない。

 そもそも、厄災級を複数相手にしたくないね。


 今日はそんな彼らも全員参加しているため会場には結構な数の参加者がいる。

 もちろん、柊木先生のアウラである安倍晴明も、毬乃さんのアウラであるゼウスも参加している。今は、二人とも酒呑童子とかカレンちゃんとかと話している。


「ちなみに私も初めてティアマト様とか見たんだけど……」


「ふむ、お主が新しい女か。良いの。ちょっとこっちで妾たちと話をしようか」


「え……でも……」


「大丈夫よ。別にとって食おうってわけじゃないんだし、これからのことを話すだけよ。あなたも蒼のこと、色々気になるでしょ?」


「頼むから変なこと話さないでね?」


「私もついてるから大丈夫ですよ。安心してください」


 最後のミカエルの言葉が決定打になったのか、透は恐る恐るではあるが、ティアたちの輪に入っていった。

 もちろん俺の言ったことは無視である。

 多分一時間後には透に恥ずかしいエピソードとかも知られるんだ……


「よく、今まで国に知られることなく生きてこれたね」


「僕の場合は妹が公式のパーティーとかには出席してもらってましたからね。中学生の頃はほとんど隠居してましたよ」


「まぁそれが妥当だろうね。今の一条くんの考えを教えてくれるかな?」


「それって将来的にってことですか?」


「うん。この学園で何をして、将来自分が何をしたいのか」


 葛木先生は少しだけ真剣な表情でそういった。

 きっと、ここで答え方を間違えると、葛木先生は二度と俺たちの味方をしてくれないだろう。


 確信はないけど、言外にそう伝えている気がした。


「そうですね……俺はあいつらとずっと仲良くいたいなって思います。もし、それを邪魔する要素があるのであれば、僕が排除します」


「もし、他国やこの国の偉い人が相手でも?」


「もちろん。調子に乗ってると思われるかもしれないですが、僕はそのために鍛えてますからね。あまり戦うのは好きじゃないですけど、それ以上にあいつらと楽しく笑えないのは嫌なんです」


 俺は堂々と葛木先生の目を見ながらそういった。

 もしこれで、敵対されたり怒られるのであればその時はその時だ。誰であろうが、俺の守りたいものを汚すのであれば容赦しない。


 もう昔みたいに後悔したくないからね。


 ちなみに、妹に手を出す不届き者がいたらその時は俺の剣の錆にして……


「あいたっ! 何で叩くんだよ」


「絶対今妹さんのこと考えてたでしょ。せっかく真面目に話してるんだから、少しはそのままでいろよ」


「そういうのはお前の仕事だっ!」


 後ろから宗一郎に頭を叩かれちゃった。

 そんな俺たち二人のやりとりを見て、葛木先生と柊木先生は面白そうに笑っていた。


「そっか。わかった。僕たちも君たちの平和を願って、頑張ってサポートするよ」


「僕も一応S級魔法師やしな。軍の方には僕から圧力かけとくわ」


「助かります。ほら、蒼も!」


「あ、ありがとうございます」


 別に宗一郎に言われなくともお礼くらい言えるんだけどな……

 いったいコイツの中で俺の精神年齢がどのくらいなのかを小一時間くらい使って問い詰めたいところだが、その前に宗一郎に首を引っ張られて朱音たちのところまで運ばれた。










「ほんまに仲ええな。羨ましいわ」


「昔を思い出すね。さて、僕の大切な生徒たちが悲しまないように、頑張らないとね」


「やね。まぁもう少し世界を見せてもええと思うけどね」


「それは同感。ただその前に軍のお偉いさんが出張ってこないように気をつけておかないと……」


 渚と叶は二人でお酒を交わすと、この現実味のない集まりの会を楽しむために食事に舌鼓を打つのであった。

 なお、後半は毬乃も含め三人で、酒を煽りながら元気にはしゃいでいる蒼たちを見て笑みを浮かべていたのであった。

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