第46話 女子会1

 お疲れ様会は無事大成功をおさめ、最初は遠慮気味だった柊木先生たちも最後の方には楽しそうにしていた。

 ティアたちともそこそこ話せるようになっていたし、この調子で仲を深めて欲しいものである。


 まぁ一番ティアたちと仲を深めたのは間違いなく透だろう。

 終始ずっと誰かには絡まれていたし、その中でもロキがすごい透のことを気に入ったみたいだ。


 ロキにしては珍しいが、きっと閻魔も認めた透のことが気になっているんだと思う。

 実際、閻魔とも久しぶりに話せて楽しそうだったしね。

 閻魔の方はすごいやりにくそうに恐縮していたけど、ロキが楽しそうだったので全て良しだ。


 そんなわけで、お疲れ様会は終わって各々解散……というわけにはいかなかった。

 そう、今からお泊まり会もとい女子会が俺のフロアで開催されるのだ。

 朱音たちもまだまだテンションが高いので、多分まだゆっくりできないね。


「別に明日休みなんだしいいじゃん」


「明日透の成績結果が出るんだよね? 楽しみだね」


「透なら余裕でしょ。話を聞いてる限り、ちょうど十傑に穴ができたからそこに入るんじゃない?」


「じゃあ明日は透の歓迎会をしなくちゃいけないね」


「お前ら毎日記念日にしないと気が済まないタイプだろ……」


 何をするにしろ、そう言ったパーティーを主催して準備をするのは俺なのだ。

 今日ですら結構しんどかったのに、明日も同じ規模でパーティーするのは流石に体とお金が持たない。

 

 ちなみに、宗一郎たちは俺を省いて宗一郎の部屋で男子会をするらしい。

 どうせなら俺もそっちに混ざりたかったけど、透がそれを許してくれなかった。

 わかってますよ。


 せいぜい雑用としてこき使わされることにします。


「うむ。いい心がけじゃ!」


「ロキの口調はそんなに幼くないんだけどなぁ」


「そこでロキさんが出てる時点で、蒼も若干思ってるってことじゃん。あとでロキさんに言っておこーっと」


「頼むからやめてください。有る事無い事ロキにバラされるのはこっちなんだぞっ!」


 ほんと勘弁してほしい。

 俺が彼女たちに逆らえない一つの理由だけど、俺は彼女たちにあまりに弱点を握られすぎている。

 中学の反抗期の時の話をされでもしたら多分明日から学校行けない。


「買い出しは先に済ませてあるから、このまま蒼の部屋に行こう」


「そだねー」


「なんで、俺の意思がないのかね……」


 まぁここで反抗したところで無駄なので、大人しくフロアに招待しますけどね。

 ちなみに、すでに結構Aクラスの友達とか知り合いに朱音たちを連れて歩いているのがバレているせいで、次教室に行くのが少し億劫である。


「お邪魔します。わっ、意外と綺麗」


「失敬な。毎日きちんと片付けてるよ」


「蒼って意外と綺麗好きだよね。この前来た時も全然汚くなかったし」


「ふっ、いつ女の子を部屋に連れ込んでもいいように部屋だけは綺麗にしてあるのだっ!」


「「「「はいはいよかったね」」」」


「流石に雑すぎない……?」


 





 すでに寝る準備などはミカエルに頼んで空間を拡張してもらってベッドを追加してもらっているので、今すぐにでも寝ることはできる。

 ただまだ追加でもう少し飲み食いしながら話そうということで、リビングでさっきの続きが始まった。


 今回は、朱音たちの邪魔をしては行けないとティアたちは俺の部屋に引きこもって五人で各々の世界の仕事をしてくれている。

 久しぶりに仕事をしてくれるとさっきミカエルの部下の天使からお礼の連絡があった。


 普段俺のお世話をしてくれているから、天界の仕事は全くしてなかったらしい。

 他の面々も今まで全く仕事をしていなかったらしく、天界からは『生命の果実』、魔界からは『命の炎』、幻界からは『世界樹の実』が送られてきた。


 どれもこの世界にはない一級品で、普通こっちの人間が手に入れられるものじゃないものが送られてきた。

 渡される時にみんな泣きながら感謝していたし、いかに普段彼女たちが仕事をしないのかがよくわかった。

 

 ひと段落したらきちんと言っておいた方がいいかもしれない。


「乾杯!」


「「「乾杯!」」」


 そんなことを考えていると、すでに二次会が始まっていた。

 みんな向こうではジュースしか飲んでいなかったのに、手にはお酒を持っていた。


 別に法律では15歳を超えているので飲んでも構わないんだけど、男の家で酔っ払うって意味を彼女たちは本当に理解しているのだろうか?


「襲われても知らないぞ……」


「ふんっ、襲えるもんなら襲ってみなさいよ。ほら、チャンスよ?」


「くっ! 今日はこの辺にしといてやる」


「何この茶番?」


 佳奈のツッコミで場が和やかになった。

 まぁ多少なら酔ってても大丈夫だろう。それに、もし彼女たちに手を出したら大変なことになるのはしっかりと理解しているため、絶対に大丈夫だ。


 もし理性が崩壊しそうになったら自分に電流を流すのをお勧めする。


 邪な考えなんてできないくらいキツいから、最悪それで今日は乗り切ろう。


「でも、本当に透はよくやったと思うよ。私だったら気持ち悪くてアウラは殺してたね」


「みんな通る道だよね〜。ちょっと挨拶しただけで付き合った気になるのだけは勘弁して欲しいわ」


「あー。あれ、ちょっと困っちゃうよね。私は今でも告白を断る時すごく申し訳なくて泣きそうになるんだよね」


「佳奈は優しいね。私も真剣に告白してくれた男子にはきちんと誠意を持って返事をするけど、最近勘違い野郎が多くて困ってるのよね」


 ……どうしよう。すごい心が痛い。

 いやまぁ朱音たちがモテてるのは知ってるし、世の中にはそんな男の子もいるんだろーなーとは思ってたけど、そこまでボロカス言わなくてもいいんじゃない?


 俺だって可愛い女の子に笑顔で「こんにちは」なんて挨拶された日にはホイホイついていきそうになるね。

 だって可愛いんだもん。


 可愛いは正義だ!


「なんか一人抗議したそうな人がいるけど?」


「はい! ちょっとくらい優しくしてあげてもいいと思います!」


「却下ね。世の中には冷たく突き放す優しさもあるのよ。いつまでも叶わない恋をしてても可哀想でしょ? 無理なものは無理って言ってあげたほうが相手のためよ」


「むぅ……珍しく琴葉が真面目なこと言ってる」


「燃やされたいの?」


「いえ、それよりお飲み物は何がよろしいでしょうか?」


「そうね。果汁酒を持ってきてちょうだい」


「直ちにお持ちしますっ!」


 うん。やっぱり女の子には逆らわない方が良さそうだね。

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