第44話 透へのご褒美2
「あぁ〜憂鬱だぁぁぁぁ」
「お前、他の男子に知られたらマジで殺されるぞ……」
朱音たちが買い物に行っている間、俺は宗一郎たちとグラウンドで球技をして時間を潰すことにした。
今はスリーポイントシュートで絶賛接戦中だ。
その中で、今日これからの話を宗一郎たちにしたのだが、みんな若干引き気味である。
まぁ俺も宗一郎たち側で俺の話を聞いてたら「こいつ何言ってんだ?」ってなるのはわかる。
でも、仕方ないじゃん。
まさか透があんなお願いをするとは思ってなかったんだ。
そもそも女子会なら俺の部屋じゃなくても良くね?って思うんだけど、透が言うにはそれじゃダメらしい。
きっとうちにはティアやミカエルたちがいるから、彼女たちとも話をしたいんだと思う。
ってなると俺は今日ずっと孤独を味わうことになるんだけど……最悪ロキあたりに慰めてもらおう。
彼女は基本的にあまり人と群れるのを好まないから、朱音たちとも少し離れたところでお酒飲んでるはずだ。
「蒼、正直ちょっと役得だと思ってるでしょ」
「まぁ、ちょっとはね。でも、流石に友達だからなぁ……」
「こりゃ、透も苦労するわ……」
「今に始まったことじゃないでしょ。っと、これで僕も並んだよ」
会話をしながらもみんな真剣勝負である。
さっきの湊のシュートで、全員が並ぶことになり最後の一球で勝負が着くことになる。
なんだかんだ、素の運動神経はみんな良いので、スリーポイントシュートくらいなら余裕みたいだ。
今後、体育の授業とかもあるらしいけど、その時が楽しみだ。
「まずは俺から行こうかな。その後に龍之介、湊、最後に蒼の順番でどう?」
「賛成。ミスった人が今日の夜ご飯奢りな!」
「ちょっと待って、今日って確か全員のアウラも呼んでパーティーって言ってたからえぐい値段になるんじゃない? 大丈夫なの?」
「みんなそこそこ貰ってるから大丈夫でしょ。最悪、稼げばいい」
「確かにそうだけど……」
俺たち十傑には少なくない給付金が支払われているし、それがなくても全員それぞれ中等部の時に事業を展開しているおかげで勝手に収入が入ってきている状態だ。
唯一、俺は特に何もしてないけど、最悪ちゃちゃっと魔法を作って学園内でその術式を売れば人財産できるはずだ。
それに困ったらお金作れる人もいるからね。
ただ、負けるとそれをしなければいけないので普通にめんどくさいから誰もやりたがらない。
結局、負けた時のことを考えるとそこそこのスリルを味わえながら勝負ができるから丁度いいのかも知れない。
「まずは……よっと。成功!」
「俺も余裕〜」
「入れっ! やった。三人全員入ったね」
「後は蒼だけか……」
「俺も入れてサドンデスまで持ち込んでやるよ。ほら……」
「「「あ! あそこにエッチな女の子!」」」
「なにっ! どこだっ! あっ……」
「はいー。蒼の負け〜」
「ずるいぞお前ら!」
チッ。まさか宗一郎たちがこんなにせこい手を使うとは思わなかった。
全く。親友として非常に情けないよ。
「私からしたらお前の方が情けないけどな」
「だよねー。私たちというものがありながらっ!」
「蒼くん。後でゆっくりお話ししようね?」
「蒼……今のはないわ」
「すみませんでした」
丁度買い物から帰ってきた朱音たちにゴミを見るような目で見られて俺は思わずその場で土下座をしてしまう。
毎回同じようなやりとりをしているけど、そろそろ俺本気で嫌われないないだろうか……
流石に五割はネタだよ?
「それ半分本気じゃん。男子高校生って蒼みたいにエッチなの?」
「いや、蒼は特に欲望に忠実な方だと思う」
「宗一郎たちはそういったのはないの? いつも蒼は朱音たちに怒られてるイメージあるけど、宗一郎たちが朱音たちに怒られてるところ見たことないね」
「んー……人並みにはあるけど、正直女の子には困らないからね」
「うわっ。ってみんな今彼女いるの?」
「俺はいないよ。龍之介と湊はいい感じの子がいるっぽいけど」
「えっ! その話詳しく!」
え? ちょっと待って俺も初耳なんだけど。
龍之介と湊に彼女候補がいるだって?
まさか俺たちの仲間の中から裏切り者が二人もいるなんて……
「……何でバラすんだよ」
「っていうかなんで知ってるんだよ。僕、誰にも言ってないはずだけど?」
「この前一年生の女の子が話してたよ。湊と龍之介が女の子連れて歩いてたーって」
「へー。二人ともやるじゃん。どんな子なの?」
「んー。可愛い系?」
「僕は美人系だね。まだ付き合ってないし、そもそも向こうに恋愛感情があるかどうかは知らないよ」
二人の話を聞くと、龍之介は3年生の先輩らしく、自主練してた時に話しかけられたらしい。
一方、湊の方は名前すら知らないらしく、たまたま図書館で読書をしていたら出会ったらしく、その後も何度か会って話しているんだそうだ。
何はともあれ、二人ともそれぞれ自分の恋愛を楽しんでいるようだった。
「むむむ……ずるい」
「お前は素直に応援してやれよ」
「いや確かに応援はするけどさ……なんだか、置いていかれた感じがして悲しい」
「あー。それはわかる。俺もちょっとだけ寂しいな」
「宗一郎は作ろうと思えば簡単にできるでしょ。多分1年生の中で一番人気だよ?」
確かに、宗一郎の場合「作れない」じゃなくて「作らない」の方が正しい。
毎日最低一回は告白されてるからね。
ちなみに俺場合は後者である。
仲良い女の子はいるけど、基本的に朱音たちが一番仲がいいため、いまだに彼女ができる未来が思い浮かばない。
「俺は好きな人がいるんだよね。まぁ、だから当分はいいかな」
「へー……なるほど。宗一郎も難儀だね」
「でしょ? まぁ、しっかり諦めがついたら新しい恋を見つけるよ」
「うん。その時は応援するね」
「ありがとう。透も頑張りなよ」
「もちろん! 絶対に撃ち落としてやる!」
「二人とも何話してるの?」
「なんでもなーい」
後ろから撃ち落とすだのなんだの聞こえてきたから、二人に話を聞こうとしたらはぐらかされた。
若干揶揄われた感じがしないでもなかったけど、まぁいいでしょう。
とりあえず俺はみんなが集まれる場所を用意しないといけないので、少しだけみんなと別れて準備をすることにする。
せっかくだから、柊木先生と葛木先生、毬乃さんも呼ぼうかな。
結局まだミカエルについてちゃんと説明してないし、葛木先生と柊木先生は薄々俺のアウラがミカエルだけじゃないことに気づいてそうだから、この際共犯にしてしまおう。
宗一郎もまだ他に円卓の騎士がたくさんいるから、一気に説明した方が早いだろう。
ここで一気に説明して三人の助力を得た方が、後々助けになってくれると思うしね。
それに、個人的にあの三人からはたくさん吸収したいこともあるから、是非とも招待したいところだ。
「よし、とりあえずミカエルたちに連絡して、会場とかその他もろもろ準備しないとね」
宗一郎たちには一時間後に再集合と伝えると、俺は忙しく動き始めるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます