閑話 誤算と恋バナ

ー柊木叶視点ー


 前から気になる子たちがいたんやけど、正直ここまでとは思ってなかったわ。

 北小路を筆頭に同世代に『天才』と言われとる子たちがいるゆーとったから、僕も気になってたけど、実物見て思たわ。


 あれは『天才』なんかやない。『化け物』の類や。


 僕も周りからは天才やゆーてもてはやされとるけれども、この子達はまた別次元でやばそうやわ。


 葛木くんもなんや焦っているみたいやけども、これは少し気持ちもわかるわ。


「北小路くん。すごいよねー」


「ねー。どうしたらあんなに簡単に精霊たちに懐かれるんだろ」


「私たちとはレベルが違うよね。水無瀬さんとか西園寺さんたちも私たちとは比べものにならないくらい強いしね。ほんと、今年の十傑には勝てる気しないよ……」


 アウラの召喚の授業が終わって、今は休憩時間をとってるんやけど女子生徒の3人がそんなことを話していた。まぁ気持ちは僕にもわかるよ。

 北小路くんたちは歴代でも最高レベルで成績がいいと葛木くんからも聞いてるし、パッと見てもそれは間違えじゃなさそうや。


 本来なら第八席の子……確か姫宮くんやったな。彼女が第一席になる予定やったらしいけど、北小路くんたちのおかげでそれも全部狂ったらしいしな。

 姫宮くんでも十分他の年なら十傑第一席としてやっていけてたやろうけど、それより上の7人が凄すぎたわけや。

 第七席の一条くんですら歴代の第一席の評価のトリプルスコア以上を叩き出してるらしいからな。どうしても他の子に勝ち目はないわ。


 僕も今まで下の子達には注目してこーへんかったけど、これはちょっと注意しとかな大変なことになりそーやわ。

 欲を言えば今すぐにでも北小路くんたちを部下として迎え入れたいわけやけども、みんな名家の子らしいから、慎重に立ちまわって行かなあかんわけや。

 

「北小路くん、本当になんでもできるよね。私たちにも優しく話しかけてくれるし、イケメンだし!」


「ね! 強くてお金持ちでイケメンで将来性もある。こんないい人他にいないよー!」


「でも、水無瀬さんたちが近くにいるから、私たちじゃ振り向いてもらえないよね。水無瀬さんたちもすごい綺麗だしね」


「うーん。でも、北小路くんたちが水無瀬さんたちと付き合ってるって話は聞かないよね。一条くんはよく水無瀬さんたちにいじめられてるけど……」


 さすが十傑第一席、北小路くんや。

 まだ入学して日が早いのに既に女子からモテモテか。僕の時もそうやったけど、第一席は色恋の方も大変やからなぁ。


「なんやなんや。みんなはあの中やったら誰がタイプなんや?」


 ちょっと気になった僕はついに3人の会話に入ることにした。

 生徒とのコミュニケーションも大切やからな。

 たまにはこうして初々しい恋バナを聞くのも乙なもんやろ。


「ひ、柊木先生!」


「大丈夫、誰にも言わへんから」


「わ、私は北小路くんです」


「私は一条くんかな。4人ともイケメンだけど、あの雰囲気がいいよねー」


「あ! わかる。一条くん、ちょっとエッチそうだけど、めっちゃ甘えてくれそう!」


 ふむ、僕はてっきり全員北小路くんに票を入れるかと思ったら以外にも一条くんかぁ……


 確かに顔は北小路くんに引けをとらへんほどかっこいいわ。なるほど、最近の女の子が好きそうな感じやわ。

 白い綺麗な髪の毛におしゃれなピアス、着崩した制服と本来なら獅子王学園は校則が厳しいから一条くんの格好は即指導もんやけど、十傑はそれがないからな。

 しかも一条ゆーたらあの一条なわけやし……意外と最近の女の子たちは顔だけじゃなくて将来性も気にしとるんやな。


 ほんまに、しっかりしとるわ。


「でも、今日は一条くんだけ寂しそうだったよね」


「途中から三角座りしてたもんね。あれも可愛かった」


「十傑にも苦手なことがあるんだねー」


 女の子たちはさっきの一条くんの話で盛り上がってるわけやけども、これは僕もちょっと気になっててんな。

 というのも、十傑言われるくらいやねんからアウラ自体とは契約できているはずやねんけど、あの様子を見るととても契約までこぎつけるはずがないねんな。


 下級精霊ですらあの様子やと、5級以上のアウラが出てきたら暴走して大変なことになるはずやけど……それでも北小路くんたちと肩を並べてるっちゅうことはそれなりのアウラと契約してるはず……

 僕も一条くんだけはちょっと実力がはっきりと測りきれへんな。

 

 彼も僕に似て道化の節があるから、油断してるとこっちが寝首かかれるところや。

 僕のアウラもさっきから疼いてるし、まぁこれは一条くんに限った話ではなくて北小路くんたちにも当てはまるわけやけど……


 7人とも少なくとも1級以上、いや厄災級のアウラと契約していてもなんらおかしくないからな。

 これを政府や他の大人が知ったらどないすることやら。

 少なくとも、高校生のうちは青春を楽しませてあげたいし、僕の方でも色々と手回ししとかなな。


 まぁ、あの学園長がいることやし大丈夫やと思うけど。


「柊木先生は北小路くんたちを見てどう思いました?」


「あの子たちは特別やな。多分、僕にもわからんいろんな才能をまだ隠し持っとるはずや」


「そうですよね……やっぱり私たちじゃ……」


「でも、才能が全てじゃない。君たちも頑張って努力すれば北小路くんたちに追いつけるかもしれん。一番大事なのは諦めずに努力をし続けることや」


 僕がそういうと、早速女の子たちは次の模擬戦に向けて体を動かし始めたわ。

 さすが、若いから行動力も高いけど、何より健気やし今年は豊作やな。

 目標が高いことで、他の生徒たちにもやる気が伝染していっとるわ。まぁ、その反面大きな影を生み出すこともあるんやけど……現状Aクラスの子もBクラスの子も大丈夫そうやな。


 心配なのはそれよりも下のクラスやけど、これはどうしようもない部分があるからなぁ……


「柊木くん。次の模擬戦の準備を頼むよ」


「わかった。それにしても葛木くん。面白い生徒を持ったな」


「あぁ、彼らは面白い。これからが楽しみだ」


「僕もちょっと本腰入れて指導していくわな」


「お、君にしては珍しいね」


「何、君に対する罪滅ぼしと僕の興味が北小路くんたちに向いただけや」


「それなら良かった。頼りにしてるよ」


 葛木くんは平然な顔をしながらそんなことを言ってるけど……参ったな。







 北小路くんたちもそやけど、ここにも一人『化け物』がおったわ。

 

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