第9話 十傑の権利

 みんな一通り適性検査を終えたようで、結局みんなも魔力以外は特に変化なしだったみたいだ。

 俺は魔力も測定不能って出てたけど、みんなはちゃんと測定できたらしい。


 この魔力量だが、300全世界の平均値であり、これだけあれば普段生活する中で魔力が枯渇して困るということはなくなる。

 ただ、あくまで日常生活においてという前置きがつき、魔法師になるのであれば魔力量も1000は無ければまともに魔法を使って戦えない。

 その中でこの学園で平均を取るときっと魔力量は3000を超えると思う。


 一応魔法専攻の学校なので最低値は超えている生徒がほとんどである。


 まぁ、魔力量は鍛錬で1万は超えるというのが実証されているので、これから学園の生徒たちはみんな必死に鍛錬してこの1万という数値を目指すことになる。

 この魔力量はその人を測る上での一種のステータスになるため、鍛えておいて損はないのである。

 多分、携帯端末にもこの情報は載るはずなので、明日からは明確な序列が出来上がっているはずである。


 まぁ俺たちは非公開にするんだけどね。


 ちなみに俺は測定不能と出ているので除くとして俺以外の6人で一番魔力容量が高かったのは宗一郎でなんと1億を超えていたらしい。


 はっきり言って化け物である。魔力タンクか? とツッコミを入れたくなるほどである。1億もあるとどれだけ魔力のいる魔法を使っても早々切れることはないので戦場でも魔力残量を気にする必要がなくなるためかなりのアドバンテージとなる。

 しかも俺たちは贈り物を使う上でも魔力を必要とするため魔力はいくらあっても困らないのできっと宗一郎もこれからもっと魔力量を増やしていくはずである。


 俺たちの中で一番魔力の少ない龍之介でさえ1000万は超えていたようなので、改めてこいつらは化け物だと思う。これは十傑に余裕で入るわけだわ。

 きっと軍の中でも1000万を超える魔法師は少ないと思う。宗一郎に関してはきっとこの国の中でも上から数えた方が早いくらいの魔力量をしている。

 

 さすが主人公だね。才能も努力量も他の生徒たちとは比べ物にならない。


 まぁこれは本人から聞いただけの話なので実際はどうかわからないけどね。さすがにジロジロ相手の紙を見るようなデレカシーのないことはできない。

 もう長い付き合いなので大体はお互いの能力はわかっていると思うけど、親しき仲にも礼儀ありってことで。


「よっしゃー。わったし、飯食いに行こうぜ」


「俺はパスタが食べたい」


「その前にこの端末を確認しようよ。確かこれが財布の代わりにもなるって葛木先生も言ってたし」


「そうだね。確認した方が良さそうだ」


「ここでバカと賢い奴の差が出たね。龍之介と蒼は宗一郎と湊を見習いなさい」


「ぐぬぬっ……真面目な奴め」


 琴葉に諭されて俺と龍之介は言葉に詰まってしまう。

 確かに言われてることはわかるんだけど、宗一郎と湊は真面目すぎない?


 朱音と佳奈も呆れてるし……


 俺の友達は龍之介だけのようだ。


「ま、まぁ気を取り直して早速起動させて……ふむ、これに学生証とお金と……って、俺の見間違えかな? 100万円振り込まれてるんだけど」


 ウォレットのアプリを開けると、そこにはすでに100万円が振り込まれていた。

 このお金はリアルマネーで確か外でも使えるし、口座とも連携してお金を振り込んだり預けたりできるので早速いくらか振り込もうとしたのだが、そこにはすでに100万円が振り込まれていた。

 しかも俺だけではなく宗一郎や、残り3人の十傑にも同じ額が振り込まれていた。


「えーっと、すごいね。十傑には毎月100万円の振り込みがあるみたい」


「十傑優遇されすぎじゃないか? これじゃあ何もしなくても世間一般の人の年収を超えるんだけど」


 確か今の日本の平均年収は500万円くらいだったはずだ。

 俺たちも家が結構な名家なので、別に年収1000万円を超えるくらいはそこまで驚くべきことでもないのだが、これを一生徒になんの労力も強要することなく給付しているというのははっきり言って異常である。


 しかも俺たち十傑は学費も免除なので、学園に籍を置いているだけで月に100万円ずつ入ってくるのだ。

 俺たちからしたらありがたいが、さすがに優遇されすぎな気がする。


「AクラスとBクラスのみんなも月に10万円振り込まれてるみたいだよ。それ以降のクラスはないみたいだけど」


「ざっと月に1700万も生徒に給付してるのか……よくこの学園破産しなくて済んでるよな」


「それ以上に国から支援されてるから問題ないんじゃない?」


 寮然りお金の給付にしかり、十結というのは相当この学園では優遇されているのだろう。


 十傑でなくてもBクラス以上だとしっかりと権利を保障され、優遇対象なのできっと上位80人くらいは不便なくこの学園を謳歌できるようになっているようだ。

 逆にそれより下のクラスがどのような扱いを受けているのか少し不安にもなるが、まだ一度もAクラスの人以外に会ったこともないので、考えたところで無駄である。


「えーっと、あった。これが生徒情報ね」


 携帯端末には初期の段階でアプリが3個入っており、さっきのウォレットアプリ、学園のマップアプリ、そして生徒情報や学生証代わりになる獅子王アプリがある。

 それ以降は随時自分で入手していくようなのだが、ここにも生徒によっては制限が追加されてりするらしい。

 まぁこの三つがあれば生活には困ることないので別に構わないのだが、少し簡素なのでこれを機にメインの携帯端末をこっちに移す生徒も多いようだ。


 かくいう俺たちもこっちの端末に全て情報を移す予定なので、制限がかからないというのは非常に助かる。


 琴葉が開いた獅子王アプリには俺たちの学生証と、全校生徒や教員たちの情報が記載されており、俺たちはざっとそれを確認していく。


「おー、ちゃんと十傑のところに私たちの名前があるね」


 俺たち十傑は一年生の欄の一ページ目に載っていた。

 名前をタップすると、顔と基礎情報が全て記載されている。と言っても、名前、年齢、身長くらいだけどね。


 あとは基本的に非公開になっている。


 今後、テストや試験の成績があればここに追加で載せられていくようだけど、今の段階ではほとんど何も書かれていない。


「ちょっと待って……これやばくない?」


「ん? どした?」


 俺がみんなのプロフィールを眺めていると、琴葉が若干引きつった声で俺にある画面を見せてくる。

 そこには、同じ学年である一と書かれた欄の横にとある生徒のプロフィールが載っていたのだが、それが少し俺たちのものとは異なっているようだった。


「えーっと……これ、大丈夫なの?」


 俺がゆっくり画面を見ていくと、最初は特に変なものはなかったが、プロフィールを一度スクロールするとそこには魔力容量や贈り物やアウラの有無が全部記載されていた。

 それだけなら、さっき葛木先生が説明してくれた通りで特に驚くべきことではないのだが、さらにその下には恋人の有無や友好関係、所持金に住所など全て見ることができた。


 そして、極め付けは『十傑のみ』と書かれた部分をタップすると、さらに詳しくいろんなことが書かれていた。


「いや、だめでしょ。なんだこれ?」


「確認してみたらHクラスからは全部『十傑のみ』って欄があるわ。これは情報収集にも差が出るな」


「家柄まで見れちゃうもんね。でも、お金をかけると非公開にできるみたいだね」


 獅子王アプリの詳細画面を見てみると、隠したい情報があれば一ヶ月に一定額の課金を行えば可能らしい。

 ただ、その値段が尋常ではなく、一つの情報につき1万円の課金が一月に必要のため、Hクラス以降の生徒たちは俺たちと同じ情報まで制限するには一月にざっと30万円はお金を注ぎ込まなければならなかった。


「なるほど、ここで搾取してるのか」


「弱肉強食って言ったけど、これは流石に……」


 さっきまで学園のシステムに納得してた龍之介たちも、これを見て引き気味の様子だった。

 

 まぁ俺もこれは少しやりすぎだと思うが、学園のルールのため文句を言っても仕方がない。

 しかも、後々クラスで対抗しての試験もあるはずなので、情報収集の点で言えばほぼ解決してるので都合がいいと言えば都合がいい。


 よくこれで今まで上手くやってきたなーって思うけど、この学園からは非常に優秀な魔法師を毎年続々と排出しているため、国もあまり強く指摘できないのかもしれない。

 っていうか、国が支援している時点でそういうことだ。

 俺たちができるのは下のクラスに落ちないように十傑であることを三年間維持できるように頑張るということだけだ。


「気を取り直してお昼食べに行こうか。あまり考えすぎるのも良くない」


「そうだね。行こう」


 みんなが各々で考え事をしている中、宗一郎が一旦空気を変えるために当初の目的であったお昼ご飯と買い物をしに行こうと提案した。

 ちょっと冷淡かもしれないけど、これは成績の悪い生徒にも非があることだ。

 俺たちもこの学園を甘く見ていた節はあるけど、他の生徒たちもこれから挽回のチャンスはいくらでもあるだろう。


 俺たちにできることはその時に負けないようにするだけだ。


 この学園を卒業すれば嫌でも社会で強者からの理不尽に犯されなければならないので、いい社会勉強とも言えるしね。


 結局、その後は7人でお昼ご飯を食べに街エリアへと向かうことになった。

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