第5話 ホームルーム1
さっきの入学式での話をみんなでしながら、俺たちは校舎の方へと歩いてたんだけど、着いた瞬間ここでも驚かされることになった。
「おっきーなー」
「これ、1年生だけの校舎でしょ? なんで二つも用意されてるの?」
「普通の高校ならこれだけで十分だよね」
みんなが驚くのも仕方ないと思う。
一年生の校舎だけで4階建てが対面同士にあって、近くにはしっかり運動場や体育館も設備されている。
二年生や三年生の校舎はまた別にあるみたいなので、この区域は本当に一年生の設備しか用意されていないみたいだった。
さすが日本一の高校である。
土地や設備に対する投資の量が普通の私立高校の比じゃないくらいすごい。
魔法専門の高校でもここまで広い場所はないと思う。
「獅子王学園って思ってたよりすごいみたいだね。最初、敷地外に出るの禁止って言われて結構キツそうだなーって思ってたけど、さっきちらっと見ただけでもショッピングモールとかコンビニとか、生活するのに困らなさそうだよね」
「だよな。これ、いくらお金かかってるんだろう」
「絶対戦争する気ないって嘘だよな。ここまでガチガチの教育機関を作っといてさ」
「まぁ、戦うのって人間だけじゃないしな。魔物とか、それこそ天使や神様、悪魔なんかもいつ暴れ出すかわかったもんじゃないしさ」
「蒼のくせに真面目なこと言って……明日雨降る?」
「それはあまりにも俺に失礼すぎだと思うけど?」
俺のツッコミに、朱音たちはクスクス笑っている。
軽く話が流れたが、魔力、ひいては魔法が生まれてから人類も神や精霊の類のものも可視化することができ、今ではしっかりとその存在も認知されている。
依然として、まだ不思議なことも多いのだが、最近魔物と思わしき存在が国内外ともに発見されているため、この国も自衛の手段は保持しておきたいのだと思う。
「この国、言ってることとやってることがおかしいんだよな……確か、世界でも今トップ3のはずだし」
湊の呟きに、俺たち全員静かに唸った。
この、世界トップ3とは魔法士の戦力の話であり、俺たち未成年を除いた魔法士の保有率や魔力の多さなど多くの要素を兼ね合わせた結果、確か日本は世界第3位だったはずである。
多分俺たちがこの学園を卒業する頃には、世界のランキングも大きく変わる気がする。
すでに宗一郎たち全員、国で重宝されてもおかしくないほどの実力を持っている。まだ未成年なのと、そもそも俺たち全員生まれてこの方身内以外に本気を見せたことがないため、気づかれていないのもあるが……
多分三年後には俺たち全員そこそこ注目を浴びる存在になってると思う。
「ま、その辺は大人に任せて、俺たちはとりあえず迷わずに1ーAに辿り着かないとね」
「蒼方向音痴だもんね〜その辺はこの朱音様に任せなさいな!」
「朱音も結構心配じゃない? 私にしときなよ?」
「蒼くん。私の方がいいよ?」
「どうしよう宗一郎。選びたい放題だっ!」
「蒼、あっちにエッチな女の子が……」
「どこだっ!」
「「「死ねっ!」」」
「ぐはっ……」
俺がふざけて宗一郎のノリにノルと朱音たちから思いっきりグーパンチが飛んできた。
しかも、じゃれあいのパンチではなく本気のパンチを頂戴してしまい、五メートルくらい先の壁に激突した。
コメディーだったら、笑って済ませられるけど、実際そのパンチを食らった身としてはほんと笑えない。
めっちゃ痛いし、これ俺以外だったら骨折じゃ済まないと思う。
俺の体が意外と頑丈で良かったよ。
「こいつ本当に救いようねぇな」
「まぁ、でもこれが蒼だよね」
俺が遠くに吹っ飛ばされるのを見て、龍之介と湊が2人で納得したように頷いていた。
俺はその間に贈り物で壊した壁を直しておく。
ちなみに、贈り物に関しては後で適性検査などで公開される予定なので、それまでのお楽しみということで……
そんなこんなで、俺たちは大きな校舎に驚かされつつも、1ーAの教室はすぐに見つけることができた。
教室の中は意外にも普通で、他の高校でも同じような作りになっていると思う。強いていうなら、魔法専攻の学校なので、それに関する道具が置いてあるくらいだろうか。
それでも、そこまで珍しいものではなく、俺たちはそこまで驚くことなくすんなりと教室の中へと入ることができた。
「なぁ朱音、俺めっちゃ睨まれてるんだけど……」
俺たちが教室の中に入ると、朱音や琴葉、佳奈には男子たちの視線が一気に向き、宗一郎たちには女子たちの視線が向いていた。
つまり、この教室にいるみんなが俺たちの方を向いているわけだが、どうしてか俺にだけは羨望の視線ではない別のものが向けられていた。
「そりゃ、あれだけさっき余裕かましてたら敵視されても仕方ないんじゃない? ぼっち生活どんまい!」
「高校に入って早々ぼっちは流石に鋼のメンタルを持ってる俺でも泣くよ⁉︎」
流石に俺も高校生ライフを楽しみたい。
貴重な三年間を一人で過ごすなんて正気の沙汰ではない。人間は一人だと生きていけないんだぞっ!
「ほら蒼、わけわからないこと言ってないで、さっさといくよ。俺たちが最後みたいだしさ」
「……俺が悪いのかな?」
俺がそう呟くと、宗一郎たちは「何を今更?」と逆に不思議そうな顔をしながら、各々指定された席に座った。
その反応にリアルにショックを受けながらも、俺も自分の席に向かう。
俺たち十傑は席は後ろの方になってて、俺は運良く窓際の一番風が気持ちいいところをゲットすることができた。
「っと、悪いな」
そういうわけで、俺は機嫌良く自分の席に向かっていたのだが、その途中で一人の男子生徒から思いっきり足をかけられてずっこけてしまった。
せっかく格好をつけて、スカして席まで移動してたのに台無しである。
これには俺もムカっちーんしようとしたけど、ここで怒ると本格的にダサいため、なんとか冷製を装って足をかけてきた男子生徒にスマイルを送ってやった。
それを見た男子生徒は俺を見て満足げに笑っていやがった。
……そろそろ怒っていいよね?
「はいはい。どーどー」
俺が怒って立ち上がる前に朱音が暴れ馬を落ち着かせるように抱きついてきた。
「俺、怒った」
「落ち着いてねー。蒼はかっこいいねぇー」
「本当?」
「うん、すごいクールだと思うよー」
「その絶妙な棒読み、すっごい腹立つな」
朱音の宥めによって、俺は一旦は落ち着いたが依然として睨まれているこの状況はあまり気持ちよくない。
朱音のおっぱいの感触がなかったらきっと暴れてた。うん、柔らかいは正義だ。
「あなたも、あまりこいつを刺激しないで。確かに、あなたたちからしたら鬱陶しいのはわかるけど、悔しいなら正々堂々こいつに勝負を挑みなさい」
「ご、ごめんなさい」
「うん! 分かればよしっ!」
朱音に説教をされた男子はなぜか少し嬉しそうにしながら俺と朱音に謝ってきた。
俺が何を言っても敵視しかしてこないのに、朱音に少し注意されたらコレだ。さすが、十傑第二席様は違うね。俺も初対面でこんなに可愛い女の子に注意されたら無条件で言うことを聞きたくなるね。
うん。十傑関係ない!
まぁ、入学してまだ始まったばっかりだし、これから仲良くしていけるだろう。
まだ俺もみんなの人となりを知らないし、逆もまた然りである。
その後はみんな各々緊張しながらも席が近い人同士で話し合い、先生が来るまでの時間を過ごすのであった。
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