第12話 星空の下で

「話って.......」

俺は屋根から滑り落ちないように気を付けながらレジェルの隣に座る。

「あいつの事なんだが.......もしかするとあの呪いを解けるかもしれない」

「え.......どうやって!?っとと!」

俺は驚きの余り屋根から落ちそうになる所をなんとか手で支えた。

「昔の馴染みが居てな。情報によるとそいつは隣国イサエラで解呪師をやっているらしい」

「解呪師…」

つまり、呪いを解く事を仕事にしている人ってこと?

「無事に解く事が出来ればいいが、そいつの腕次第だな」

そう言い、レジェルは天を仰ぐ。

「あぁ.......今日は満月だ」

「え…?」

俺もレジェルに続き空を見上げる。するとそこには綺麗な光を放つ満月が煌々と輝いている。それだけではない、周囲にはまるでプラネタリウムのような沢山の星が散らばっていた。都会で暮らしていた頃の空とは大違いだ。

「わぁ.......綺麗.......」

思わず、そう口にする。

「綺麗、か。言われてみれば確かにそうだな。いや.......子供の頃に見た時は綺麗だって思えたな」

「レジェル.......?」

レジェルは俺に視線を向けた。

「もし俺に何かあったとしたら、あいつの事任せたぞ。正直驚いた、あいつが会ってすぐにあそこまで人に懐いたのを見たのは初めてだからな」

「何かあったらって.......そんな、そんな悲しいこと言わないでよ」

「安心しろ、まだくたばる予定は無い」

その時、澄み切った星空から一筋の光が流れた。

「あ、流れ星.......」

反射的に願い事を唱えようとした俺。その様子を見たレジェルは小さく笑った。

「羨ましいな、その穢れの無い純粋な心が」

「あはは.......そうかな」

「アリス、お前はもう寝ろ。俺はもう少しばかり星空でも眺めておく。俺の心から失った物を取り戻すようにな」

そう言うと同時に、また一筋の光が流れた。

「うん、おやすみなさい」

「おう」

レジェルはそう言って俺の方を振り返らずに手を振る。俺はまたゆっくりと、出来るだけ音を出さないように梯子を降りた。

(ふぅ…ぎしぎし鳴って怖かった…)

なんとか降り切り、俺はようやく自分の寝室に入る。そこにはベッドと机と…基本的な作りは前に居た世界と少し通じる所がある。俺は柔らかそうなベッドに寝転んだ。

(明日から大変だな.......ていうか何でこうなったんだろう。あの時あの剣さえ抜かなければ.......。はぁ、今更言っても仕方ないか.......あーっ、明日から大丈夫かなぁ)

俺は明日からの事を思い不安に駆られる。

でも何だろう、この謎の高揚感は.......?

「もういいや、早く寝よ」

そう呟いた数分後、俺は夢の世界へと呑み込まれていった。

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