第11話 月夜
それから1時間程度で.......であれ程大量にあった料理が全て無くなった。
「ごちそうさまぁーっと、僕はもう明日に備えて寝るかな、また明日なぁ」
「あ、ネロ様.......食べてすぐ寝ると太っちゃいますよ?って.......行っちゃいましたね」
レジェルは黙って立ち上がると、ネロに続き寝室の方へと行った。
「全くもぅー.......仕方ないですねぇ」
レイチェルは不満そうにそう呟き、残された食器を全て縦に積んだ。そして全体に洗剤をかける。
「ん…?」
何をするんだろう?俺はレイチェルをじっと眺める。
「スプラッシュ!」
レイチェルがそう言った刹那、食器が水と洗剤で覆われ、次の瞬間には全て綺麗になっていた。
「凄.......今のも魔法?」
「はいなのです。あっ、実はアリスさんに言いたい事があるのですけど、良いですか?」
レイチェルはそう言った、その表情は早く言いたそうににやけている。
「言いたい事?」
「はい、実は.......アリスさんには攻撃魔法の素質があると思いますよ!」
「え…っ!」
俺が…魔法!?
「はい♪もし宜しければまた今度教えて差し上げますね♪ではでは、私もそろそろ休ませてもらいますのです」
「おう、おやすみな」
(俺が魔法…本当に使えるかな…)
俺は自分の手をじっと見つめる。俺もレイチェルに教えてもらえばこの手から魔法が…?
「ほーぅ、魔法たァ羨ましいねぇ」
手を見つめていた俺にレイヴが声をかける。
「て、レイヴは魔法は?」
「え?あぁ、昔街で調べてもらったんだがな、俺にはどうやら魔法の素質は全く持って無いようでなぁ」
レイヴはそう言って笑い、更に続けた。
「まぁ、魔法を使える人間はその分生命力が低く、俺みたいに魔法の才能が皆無な奴はそれを補うように生命力が高い傾向にある。だから剣と魔法の片方だけ使えても最強って訳でも無いんだぜ?」
「そうなんだ.......」
魔法を使えるとその分生命力が犠牲になる、初めて知ったな、明日からの為にも忘れないようにしよう。
「さぁて、俺も明日に備えて寝るかぁ。今日食ったドラゴンでどれだけ持久力が強化されたか試してみたいしな!」
レイヴは立ち上がる。俺もいつまでもここに居る必要も無いので椅子から立ち上がった。
「んじゃ、おやすみな、お前達も早く寝ろよ」
「レイヴ、おやすみ」
俺は無意識にレイヴに手を振る。
「俺も寝よう.......リィナも?」
俺は隣に居るリィナを見る。すると…リィナは椅子の中で上手に体を折り曲げて、ネコのように眠っていた。
「良くこんな場所で寝れるなぁ.......っと…んしょ…」
俺はリィナを抱っこする。女の子の体になって身長も力も以前よりだいぶ失われたからか、結構見た目より重く感じた。多少よろけながらも寝室へと足を進める。
この宿舎は寝室のみ個室になっており、二階にはどういう訳か宿舎の屋根の上へと繋がる梯子がある。
「ここだな…っと」
俺は「リィナ・レンフェイ」と書かれた札が掛かっているドアの前に辿り着き、ゆっくりとドアを開けた。そこで俺はリィナをベッドの上に寝かせる。
「おやすみ、リィナ」
俺はそう言い、ゆっくりとドアを閉めた。もう既に他の人は寝ている事だろう。起こさないように慎重に動かないと。
「さて、俺の部屋は…と」
俺は1番端の何も書かれていないドアへと辿り着く、恐らくここが俺の寝室だろう。俺はドアを開けようとしたその時、二階へと続く梯子に影が映っているのに気づいた。
(え、なんだろ…?
気になって梯へと向かい、下から外を見上げる。すると、月明かりの影響で顔は見えないが、梯を登り切ったその先に誰かが居るのに気づいた。
(だれだろ…こんな時間に)
俺は梯子を1段登る。もう古いのか、ぎし…と軋む音が静かな部屋に鳴った。
「誰だ」
その音に反応し、梯子の上の人物がこちらを振り返る。やはり顔は見えにくい。が、俺は声でそれが誰なのかすぐに理解った。
「レジェル…?何してるの?」
「アリスか、ちょうど良い.......少し話がしたい」
分かった、俺は頷きなるべく音を出さないように気をつけながら梯子を登りきった。
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