第10話 初めての食事
「も.......大丈夫、ずっと泣いて.......ばかりいられない.......から」
数分後、ようやく泣き止んだリィナは俺から離れる。
「良かった.......」
やっと泣き止んでくれた。そう安心した直後レイチェルが部屋へとやって来た。
「およ?お二人で何されてたのですか?」
「内緒」
説明すると長くなりそうだなと思い、軽く流した。
「え~!?気になりますよぉ」
「それよりレイチェル、何か俺に用が?」
「あっ、そうなのです!」
レイチェルは思い出したように言った。
「お待ちかねの夕御飯が出来たのですよ!ささっ二人共来てくださいのです♪今日はネロ様達が討伐して下さった小型ドラゴンの唐揚げですので♪」
「ドラゴンの唐揚げ…!?」
正直どんな味なのか全く分からないが…取り敢えずついていこう。
ーーーーーーーーーー
「ここなのですよ!」
レイチェルに案内された部屋に着く。既に皆集まっていて先に食事をしているようだ。
俺は椅子へ腰を下ろし、その食卓に並べられた見た事も無い食べ物を目にする。様々な料理の盛られた皿が並べられてあるがその中で一際目立つのが真ん中に大きく盛られた料理…恐らくあれがドラゴンの唐揚げだろうか?
「アリス…隣、座って」
「ん?あぁ」
そう言われ、リィナの間に空席の椅子を挟んでしまった事に気づく。俺は席を1つ横へ移動し、リィナの隣にずれた。
「んー…?やっぱりさっきリィナ様と何かあったんじゃないのですか?」
その様子を不審(?)に思ったレイチェルが俺に問い詰める。
「いや、何にも無いって、それより食べて良いか?」
「あ、はいなのです!!今日も皆様の為に腕によりをかけて作らせて頂きましたのですよ♪」
「じゃー遠慮なく」
俺は不安と好奇心が入り交じったような気持ちでドラゴンの唐揚げを口に入れた。
「どうなのです?」
牛肉と鶏肉の間のような味で、なかなかに美味しい。.......それよりも自分が今ドラゴンを食べている…という事実に謎の感動を覚えた。
「うん、美味しい…!」
「良かった…気に入ってもらえて何よりです!」
レイチェルはとても嬉しそうな顔で笑った。
「ドラゴンを食うと持久力が強化されるとも言われてるしな、明日からの冒険の為に沢山食っとかねぇと」
「ちょっレイヴ食べ過ぎだろ!?僕の食う分だって残しとけよ!少しでも身長伸ばしたいし…」
「悪いなネロ。こういうのは早いもん勝ちだぜ?というかお前の身長はそこで頭打ちなんじゃねえのか?」
レイヴはネロの頭をぽんぽんと叩く。
「なんだと!?そんなことねぇよ!その手ぇやめろぉ!」
…というようにネロとレイヴが競い合うように食べているから結局俺が確保出来た唐揚げは2、3個だったが…まぁいいや、他のを食べる事にしようかな。
そう思い他の料理に目を写した時…不意にリィナに肩を叩かれた。
「リィナ、どうした?」
「…いや、ごめん……そんな大した…じゃ…ないけど…」
リィナは一呼吸置くと…すぐ隣に居る俺にしか聴こえないような小さな声で呟いた。
「私も……こんな普通の家庭が欲しかったなって…」
「…リィナ……?」
俺は返す言葉が見つからずに黙ってしまう…。
「だから、だからね、今…凄く、幸せ…」
そう言うと、リィナはその小さな体で俺に寄りかかった。
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