第7話 仲間達の帰還

その後はレイチェルと好きな食べ物や誕生日……他愛も無い話をしている内に随分盛り上がっていたらしい。気付けば部屋の中も薄暗くなってきた。

「あ、もうこんな時間だっ、待って下さいね、今灯りを……」

レイチェルは右手で握り拳を作り、ゆっくりと上へと突き上げ、同時に手を広げた。すると開かれた右手から仄かな光が発生し、部屋全体が丁度火を灯した時のような暖かみのあるオレンジ色へと変化した。

「おぉ.......もしかしてそれって魔法!?」

当然だが俺は目の前で本物の魔法を見たのは初めてだ。だからたかが灯りを付ける魔法を見ただけでもまるで子供のように興奮してしまった。

「え…?はいっ、先程説明した通り、私には魔法が使えますのです、といってもこのような便利な魔法や回復、体の異常を治す物や戦闘に出る皆様の後方から皆様の力や生命力を高める…という魔法ぐらいなのですけどね?」

レイチェルは笑って答える。レイチェルはこの程度だと言うが、魔法を全く使えないであろう俺からすればそもそも 魔法を使える時点で凄い話だ。

「凄い.......俺も魔法覚えたいなぁ、取り敢えずは何でも良いから……」

俺がそう言ったその時、後方で宿舎のドアがゆっくりと開く音が聞こえた。

「あっ…やっと帰ってきてくれたのですっ」

レイチェルはそう言ってドアの前まで急いで駆けていく。


「今戻ってきたぞーっと」

「皆さん、お帰りなさいなのです!」

ドアの方からレイチェルの声と一緒に複数の声が聞こえる。暫くするとレイチェルは部屋へと戻ってきた。

「ふぅ…今日は中々疲れたなぁー…ん、この人は?」

一瞬誰が入ってきたのか分からずに戸惑っていた俺だったが、新しく入って来た人数が3人だと知るとこの人達が誰なのかを理解するのにそう時間はかからなかった。

(この人達が俺の仲間か)

俺は上手くやっていけるだろうか?

「ネロ様、こちらが本日から仲間になったアリスさんなのですよ」

そんな俺の心配をよそに早速レイチェルは入って来たメンバー達に俺を紹介する。

「あぁ、君が例の召喚の人?」

レイチェルの一言により、一気に注目が俺へ集まる。

「えっと…アリスです、宜しく」

こんな軽い自己紹介で良いんだろうか……。

「そっか、君はアリスって言うんだな!僕の名前はネロ、このパーティのリーダーをやってんだ!後紹介する事と言えば…そうだ、僕の得意な武器は沢山あるけどやっぱり好きなのは双剣かなぁ、カッコイイしさ!まぁ、よろしくな!」

そう言ってボーイッシュな女の子は俺の肩をポンポン叩く。

「ネロさん、よろしくお願いします」

(リーダーって女の子だったのか)

俺はそんな事を思いながら頭を下げる。

「んじゃ、俺も自己紹介やるとすっかな、俺の名はレイヴ、斧の使い手だ、魔法は無理だが力には自信があるからな、何か困った事とかがあれば取り敢えず俺に言ってくれ、よろしくな」

「よろしくお願いします」

俺はレイヴにも頭を下げる。

「ほら、最後はリィナの番だぜ?」

レイヴはそう言い、ネロの後ろに隠れるように居た女の子を前に出す。女の子はおどおどしているが、その手には可愛らしい女の子とは不相応なチェーンソーが握られていた。

その子は緊張しているのか、何も話さない。

「俺はアリス、あなたは?」

とにかく話しかけてはみたが、その子は相変わらず何も話そうとしない。

暫くの間沈黙が流れる。

(な…っ、どうしよう…)

まさか第一印象で嫌われたか…?そんな被害妄想的な事を思っていると、不意にその子の重い口がゆっくりと開かれた。

「私…リィナ」

「リィナね、そんな警戒しなくていいよ、よろしく」

俺は俯いたまま正に警戒態勢万全という体勢のリィナと握手をしようと右手をリィナの前に出してみた。

「私は貴方を知らない…殺した方がいいの…?」

返ってきた言葉はあまりに恐ろしいものだった。

「え…っ!?」

ぞっ…俺は次の瞬間、恐怖で全身から鳥肌が立つのを感じた。

「知らない人は怖いから…怖いものは全部、全部…」

リィナの発言は泣きそうで震えている声、戦う手段など持たないような悲しい表情と合致しない。見ればチェーンソーの半分程、べっとりと赤い何かが付いている。

「なっ……」

俺は恐怖で体が動かない。


「おいリィナ?いきなり仲間にソイツはねぇだろ?まぁいつもの事だが…」

俺が恐怖を感じているのを察してか、レイヴは呆れたようにリィナに注意した。

「この子まだ半分なの、貴方が敵なら、この子の全てが真赤に染まるまで…貴方の。血で、綺麗にしようと思ったの…」

「リィナ……お前は相変わらずぶっ飛んでるなぁ…」

ネロは驚きと呆れが合わさったような表情をしている。

「え、ぇ…」

殺されるかもしれない…俺は半泣きでネロに助けを求める。

「あー、リィナの事ならしばらく待っててたら、すぐ元に戻るから」

俺の助けを求める視線を受け取れたのか、ネロはそう笑って答えた。

「…え?戻るって……?」

俺はネロの言っている言葉が分からなかったが、言う通りにしばらく待つと理解出来た。

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