LOST OF BLADE ー転生の蒼剣ー

第2話 謎の剣を発見！そして転生へ.......

「くっそ…何だこれ、あっついな…」

草むしりから開放されて早や時刻は17時過ぎ。もう直、日が沈もうとする頃合にも関わらず、地獄の様な暑さは未だご健在の様子だ。

「だ、だめだ、死にそ……」

何時間も無報酬…そう、[無報酬](ここ重要！)で作業してその間少しの水しか飲んでなかったからリアルに死ぬ予感がしてきた…。はぁ、こうなると分かっていれば帰る時に顧問からスポーツドリンクでもぶん取ってくりゃ良かったか…。現在地から家までの距離はまだあり、その間とても喉の乾きに我慢出来るとも思えない。

「……ん…？」

だが…だが！幸運な事に神はそんな俺を見放さなかった。ふと目に付いた公園…その傍に自動販売機が設置されてるじゃないか！！

「有難てぇ…！」

今の俺にはただの自販機が神の救済にすら見えた。さらに僥倖な事に俺は財布を持っていた。先程の疲れはどこへやら、俺は救済の箱へ向かって猛然と駆けていった。

数分後、俺はコ〇コーラを手に見事に復活を遂げた。

「キンキンに冷えてやがるっ…！助かった…！」

ヤバかった、もしこの公園が無かったら今頃どうなっていたことか。喉を潤す炭酸を一口ずつ噛み締めながら、俺は公園内を見渡した。ここで俺は初めて気付いた。

「そういやこんな公園いつ出来たんだ……？」

よく考えれば学校から家まで、最短距離で進もうが遠回りだろうが、公園なんて存在しない筈なんだが。

「あー……もしや道でも間違えたかな……」

あまりの暑さに方向感覚が狂ったか？もしも帰れなくなったら……俺はその一抹の不安に駆られながらも取り敢えずは公園のベンチに腰を掛ける。古いのか、ギシッと軋む音がした。スマホさえあれば現在位置が分かるんだが、生憎今は持ち合わせていない。

「っとと、トイレ行きたくなってきた……」

喉が潤された事により催した俺は立ち上がる。大抵の公園に設置されている公衆トイレ、この謎の公園も例外ではなく、俺の腰掛けているベンチの１０数メートル程前にあった。そこへの道のりを半分程進んだ時…ふと視線を横へ逸らした先に何かを発見した。

「 なんだあれ？なんか光ってる」

その「何か」は砂場に存在している。この距離からはそれが何かは特定出来ないが、公衆トイレの数メートル横にある砂場に何かが刺さっているのを見つけた。あれは何だ、何故あんな所に？俺はつい好奇心が働いた。尿意に余裕があるのを確認すると、目標を変更して砂場へと向かった。

「これは…剣？」

刺さっていたのは薄く青色の光を放っている金属の塊。よく見るとその柄には小さな文字で何かが書いてあった。

「なになに…召喚者求む…？」

…何これ。

何だか分からないけど凄く…。物凄く…。

「くだらねぇ…」

これを刺した奴の意図が分からない、大方ゲームに影響された奴がお巫山戯で刺した物だと予想は出来るが、だとしても余りにも稚拙すぎる。俺は何か良い物が…例えばこう、金になるものとかが刺さっていると期待してた分がっかりし、気を取り直してさっさとトイレの方へ体を反転させた。こんな下らない物一体誰が作ったんだか。俺はそう思った。

思ったけど。

「……まぁ」

数秒間の空白後、トイレへ行く筈の俺の体は再び剣へと向き直った。確かに子供騙しだなんて分かっている。分かってはいたが、悲しい事に俺もまた子供の1人だった。地面❪砂場だけど❫にいかにも抜いてくれと言わんばかりに刺さった剣…リ○クのマ○ターソードを彷彿とさせるこの剣、厨二病の人なら誰しも抜きたくなるだろう…。

「へへ、折角だから付き合ってやるか…」

俺は剣を強く握る。目を閉じ、息を吐く。

いくぞ？

「よし…封印から解けろ、蒼き剣…！！はぁぁぁぁぁぁあっっ！！」

俺は厨二病全開で剣を思い切り抜いた。砂と金属が擦れ合う音と共に、それは思ったより簡単に、勢いよく抜けた。さぁ…何が起きる？

…………………………。

…………………。

………。

「………」

虚しい、俺の心に悶々とした感情が湧き上がる…。

いや、まぁ何も起こんないなんて最初からわかってたからね？うん……冷静になって考えてみれば俺は一体何をしてんだ。来年受験生になると言う奴は。いやそんな事はどうでもいい。それより。

「今の…誰も見てないよな…？」

シンと静まった辺りには、人がいる気配はない。いつの間にか先程まで鳴いていた蝉もすっかり押し黙っていた。どうやら余りの痴態に蝉すらもドン引きしてしまったようだ……。

「あー……取り敢えず、家に帰って頭でも冷やすか…」

俺は辺りを見回し、先程の黒歴史級独り茶番劇が誰にも見られていない事を確認して安心した後、抜いた剣を再び刺し直そうとした。

「あれ、っかしーな…」

だが、どういう訳か刺さらない。先程抜いて穴が空いた所に刺し戻そうとしても、何故か収まらない。

「んー…？」

なんとか戻そうとしていた、その時。

「うわ…っ！？」

突如剣を中心にして円状の結界のようなものが張られた。そして次の瞬間には剣全体から眩しい青光が迸り、俺を包み込むように覆った。そこから…。

「なんだこれっ…？ちょっ…！」

俺の意識は光の中へと消えていった…。