第9話

「彼女のことが好きか」


「何を」


「好きなら、ついてこい」


 女が、彼女を背負って、歩き出す。


「話してやるよ。狐のこととか、色々とな」


 狐。

 なんのことだろうか。


「この街には、狐が出る。色々とわるさをするやつらがな。細かいことを言うと、RCCがマイナスの物体のことを指すんだが、そういう面倒なのは今は重要じゃない」


 RCC。狐。何も知らない。知っても、もう彼女は戻ってこない。


「彼女は、生まれながらにRCCがプラスに出すぎていた。狐の天敵だな。狸や他の動物でも、こんなにはならないだろう。先天的なものだ」


「それが、なにか」


「彼女がころしたのは、ぜんぶ狐だ。人はしんでいない。人に害をなすやつらを、彼女はひとりでに処理してたってわけだ。誰にも知られずに、ひとりだけで」


 信じる理由は、特に何もなかった。宗教か何かだろうか。


「信じてないだろ。だから、まあ、残りは彼女と一緒に聞けよ。とりあえず治療が先だな」

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