第7話

 それを、信じたくなかった。


「ねえ」


 話しかけても。

 動かない。

 静かなまま。

 もう、何も聞こえない。


「俺の話をしてもいいかな」


 静寂に、耐えられそうになかった。


「俺。街から出て、探偵になろうと思って」


 彼女のことを、見つけ出すために。


「きっと、普通に会ったりできないから」


 人を探す術と、人のこころの裏側を把握する仕組みを得た。


「その頃かな。最初の事件があって」


 彼女だと、思った。すぐに行きたかったけど、やめた。ぐちゃぐちゃになる感情を、とにかく閉じ込めて、冷静に。


「お祓いの訓練受けたんだよ。真面目に」


 だめだったけど。自分には、霊感とか第六感とか、そういう類いのものがなかった。それでも、いろんなところに行って。


「そうそう。パワースポット巡ったりもしたんだよ」


 そのうちに。どんどん数が増えていって。そして、その事実に耐えられなくなって。彼女を探した。この街に戻ってくるとあたりをつけて、そして戻ってきた。

 彼女はここにいる。

 そして、動かない。


「最初から、わかってた」


 何かがいた。彼女のなかに、何か、消せないものがあって。それを、どうにかして、消してしまいたかった。


「こどもだな、俺も」


 だめだった。

 結局、彼女は。

 もう。


「こんなことになるなら、ずっと一緒にいればよかった」


 探偵とか、お祓いとか。そんなの放り出して、最初からずっと。一緒にいるべきだったかもしれない。


「なあ」


 静寂。


「だめだなあ、俺」


 何も聞こえない。

 隣の彼女は。


「なあ」


 呼びかけに応えない。

 もうすぐ、朝になるだろうか。

 空が、蒼くなってきている。

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