第6話

 たくさんころした。


「最初は、あなたがいなくなってから数日後」


 言わないようにしてたのに。彼に何も言わないでしぬべきなのに。もう止まらない。


「いきなりおそわれて。びっくりして。近くにあった石で応戦したの」


 がんばって叩いた。


「気付いたら、血だらけだった。そう。今みたいな感じ」


 せいいっぱいの、冗談。これがぎりぎり。


「おんなのひとだった。転がってて。しんでた」


 それが最初。


「わたし。ひとをころしたのに、何も感じなかった。わたし、ひとじゃないんだなって」


 そう思った。何も、思わなかったから。よく分からなくなってきた。血が足りないのかな。ふわふわしてきている。


「定期的に誰かが攻撃してくるから、応戦したの。みんなころした。小さなこどもが数人かけて突っ込んできたこともある。ぜんぶ、ころした」


 それでも、何も、感じなかった。


「わたし。最初におそわれたときに、しぬべきだったのかな」


 わたしが生き残ったから。たくさんのひとが、しんだ。わたしのせい。そして、わたしには、罪の意識がない。


「わたしね」


 あなたと一緒にいたかった。

 あなたのことが好きだった。

 あなたがいれば、何があっても大丈夫だって。思ってたの。突然引っ越しちゃって、残念だった。

 ねえ。

 きいてる。

 わたしの声。

 あれ。わたし。うまく喋れてるかな。

 なんか、眠くなっちゃった。

 鐘が鳴ったら、帰らなくちゃ。鐘が鳴らなければいいのに。

 ずっと。

 あなたのとなりに。

 あなたの隣に。いたかったなあ。

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