第43話 最終話(とりあえずおしまい)
「だから!」
俺は思わず声を大きくして言った。
「幾ら合理的でもその軍隊の力を借りて行ったら駄目なんだって!」
「そうは言いますけれども、あの地域に立ち入るには軍隊に随行する以外には認められないですし、潜入も困難ですよ」困ったようにファミンが答える。
俺たちは隣接する王国との境界にあるある村の取材を試みていた。両国の緊張状態があって、実質その村は封鎖されていた。封鎖によって村人たちの生活は困窮していると予想された。そこで取材をして事実を明らかにしようと考えていたのだ。
だが両側を国家が封鎖しているため潜入することはとても難しかった。
そこでファミンは独自にこちらの軍隊に交渉して警備任務に随行する手配をしようとしていたのだ。
だが俺の考えとしては両国の緊張状態がもたらしていることであるので、どちらかの国の支援を受けてしまっては公正なジャーナリズムとはいえないと考えていた。
軍隊の手を借りないとそもそも達成できない。軍隊の手を借りてはゆがんでしまう。
その矛盾はまったく難しい問題だった。
生き返る?前のファミンであれば魔法を使って姿を隠し、空から潜入することもできただろうが、今のファミンは健康になった半面、平凡な魔法使い以上の力はない。もちろん俺には魔力の欠片も感じられない。
「それがジャーナリズム?」
「俺はそう信じてる」
「それならしかたがないですね」ファミンはうなずいた。「別の手段を考えましょう」
「声を荒らげて済まなかった」俺も謝罪した。
「いいんです。私がまだまだ理解できないところですから」ファミンは笑った。
「俺の説明力が足らないんだ。さて、どうしたものかな」
この世界にジャーナリズムを広めるのはとても難しいだろう。
きっと俺の生涯では結果は見えない。
それでもその種をまくことができて、後身が続くようにできたら大成功だろう。
もといた地球ではどちらかといえばジャーナリズムとは正反対の力を有する自衛隊に所属していた俺だった。それはそれで直接に人々を守ることができた。
転移後にここでは学生時代からの夢だったジャーナリストを目指して生きている。それが許されているだけでも幸せな人生に違いない。両方の立場を二つの異なる世界でしっかりと経験できるのはおそらく俺だけだ。
「まずは困った状況にある村があって、その状態すらわからないことを両国で広めよう。まずは調査を認める気運を作るところからだ」
素人ジャーナリストではまだまだふがいないところだらけだ。でも諦めるつもりもない。ファミンも手伝ってくれている。何か役に立てるときもあるだろう。
これで俺の物語は一旦終わりとなる。次はジャーナリストとしての記事を読んでもらえたら嬉しいな。
異世界転移したけどジャーナリストになりたい!~異世界転移は胴元神の興行。加護は言語理解だけでその対価にペナルティ付与されました~ ホークピーク @NA_NA_NA
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