第37話 相談と告白から記憶を取り戻す
俺たちは宿の部屋まで戻った。
アコーギが呪いを受けていて命の危険にさらされたことで強力なゾンビとかしたことは衝撃だった。バークメやボーオウも同じ危険性がある。
アズガのいうにはあのゾンビは非常に強力な存在で、普通に実在すれば騎士団が総力戦でも相当な損傷を出すという。今回倒せたのは奇跡的だったのだ。もしバークメやボーオウをゾンビ化させてしまえば、氾濫以前に王都は大打撃を受けることとなってしまう。
「つまり暗殺すら手段として有効性を失ったということか」プレヤがいう。
「暗殺自体の効果は変わってはいないだろう。ただ暗殺する手段が難しい」俺は言った。
「私が建物ごと一気に破壊すればゾンビ化する前に倒せると期待できます」オリビエが言う。
「確実に?」
「そうとはいえません」オリビエは首を振った。
俺たちが議論している間、アズガはずっと黙っていた。本来ならばゾンビ化の呪いについて最も詳しいのはアズガのはずなのだが、彼はじっと床を見て何かを考え込んでいた。あまりの衝撃と疲労にやられているのだな、と俺は思っていた。
「少し休むか」
「それがいい」プレヤも同調する。「お前たちは疲れただろう。俺が寝ずに見張っているよ」
「それは助かる」
俺たちの会話を、しかしオリビエが手を挙げて遮った。
「アズガ。何か話すことがあるのではありませんか?」
「……!」
アズガは驚いて顔を上げた。
俺たちも驚いた。オリビエがそんな風に人を気に掛けたような発言をするとは思いもよらなかったのだ。俺に言わせればほぼロボットのようなオリビエなのだ。
「ゾンビを見てからずっとアズガは何かを悩んでいます」
「オリビエが人の悩みに……」プレヤが少しからかうような声を出すと、オリビエは
冷たい眼差しでそれを押しとどめた。プレヤも途中で口を閉ざした。
「さぁ、話して」
アズガはオリビエに促され皆を見回した。
そして最後に覚悟を決めたように口を開いた。
「あのゾンビの呪いのことです」
「はい」オリビエが促す。
「あの魔力には覚えがあります」
「知っている魔法使いなのか? いや、そもそも魔力にそんな違いが」俺もつい口を挟んでしまい、オリビエに冷たい眼差しを向けられてしまった。
だがアズガは気にしない風に言った。「はい……あれはダーワル神の奇跡の力です。それは間違いありません」
ダーワル神の名が呪いと共に聞こえたそのとき。俺の記憶が一気に爆発した!
異世界転移するときに俺は天界で賭けの対象として壇上で晒されていた。そして転移直前に聞こえた台詞はこうだった。
「さてこの私、ダーワルの司会で行って参りました異世界転移ショーも次で最後...」
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