第29話 オリビエの報告(3)
「そう」
オリビエから遠話の魔法で報告を受けた魔女ファミンは目を丸くしていた。遠話の魔法は非常に高度なものだ。しかも高価な極めて特殊な水晶を使い捨てにする必要がある。
「それであなたも出演するの?」
「どうやらそのようです」オリビエはいつも通りの感情を感じさせない声で言った。
ファミンは思わずクスクス笑った。「ごめんなさい、オリビエ。あなたが演劇に出ることなど想像したこともなかったものだから」
「私はマスターの指示を完遂するためであれば、自己を破壊しない範囲で何でもします」
「そうね。でもうまくできるかどうかは別でしょう? 私はあなたにそんな機能を設計してはいないの」
「……それは困りました。命令を完遂できないかも知れません」
「大丈夫よ。バーソンたちがなんとか考えてくれるでしょう、きっと」
ファミンは表情を切り替えた。
「ところで、バーソンの宿命はこの謀反に関わると思うの。神々の悪戯はどこに関わっているのかしら」
「謀反を王家へ告発しようとしています」
「それはバーソンの狙いね。でもその通りになるとは限らない。むしろそこで何かの介入があって事態が急転すると思うべきではないかしら」
「そうかもしれません」
「その介入を逆に利用したいところだわ。そのためにはこちらの意図したタイミングで発動してもらうのが望ましいわね。バーソンが危機的な状況になれば、一気に事態が進む可能性があるわね」
「……。それは危険ではないでしょうか?」
「バーソンにとっては確かにそうなるわね」ファミンは酷薄に言った。「幾ら謝罪してもし尽くせないでしょうけど、ここは犠牲になってもらうことも考えなければならないところよ」
「……了解しました。タイミングを見計らってバーソンが告発しようとしていることを神殿か商人か公爵に伝わるようにします。アズガに伝えるとよいでしょう。それで刺客がやってくるはずです」オリビエの声は、しかし、いやいやという雰囲気がかすかにあった。
だがオリビエがそのような感情を表すはずはない。ファミンは気にしなかった。
「頼んだわよ、オリビエ。これが最大のチャンスかも知れない」
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