第24話 消えた楽器を探せ(3)
楽器の音色をプレヤが聴くことができれば特定できる。だがいつ・どこで演奏されるかわからない。演奏されないという可能性はここでは考慮しない。
俺たちが疑っているのは商人アコーギ、ダーワル神殿の法王ボーオウ、公爵バークメだ。
アコーギは奪った物資のうち出所がわからないようなものを横流ししても受けているようだ。ボーオウの狙いはよくわからないところがあるが、アズガの捜索を妨害するほどだ。何かあるとみるべきだろう。
バークメは浪費家として知られている。宝石類をコレクションしている可能性はあある。そういった道楽ができる余裕のある立場だ。だとすれば楽器もここと考えるのがよいだろう。
「こう考えてみると楽器の音色を聴くまでもなく、バークメを疑うべきだな」
「だが、聴かないとわからないぞ」
「仮に聴いて音色から楽器の作り手を特定できたとしても、疑いをかけること以上の効力はないじゃないか。いくらなんでも公爵の家から盗まれた楽器の音がしたんです、といっても誰も信じたり、捜索をしてくれたりはしないだろう?」
「それもそうだ」
「だが音色を聞ければ楽器がそこにあることの確認ができる。押し入る場所とタイミングを決めるのに役立つわけだ」
俺の意見にプレヤもうなずいた。「了解した」
「ただどうやって押し入るのかが問題だな」
「公爵の邸宅だからな。警備も厳重だろうな」
「捕縛されてもいけないが、単に盗み出しても意味がない。白日の下にさらさないと俺たちがただの盗人になってしまう、最悪、こちらが野党側にされてしまう」
プレヤは肩をすくめた。「それは無理難題なんじゃないか」
「俺もまったく方法を思いつかないな」
「アズガが突入してくれればな。その証言なら信じてもらえるだろう」
「上から締め付けられているから無理だろう」
「そもそもなんで神殿は野盗を認めてるんだろうな」
「そこだな」俺もうなずいた。「それが予想もつかない。アコーギはも受ける。バークメは貴重品を収集する。相関が得れば納得できる。だが法王は?」
「ダーワル神殿はこの国で急激に力を付けているそうじゃないか。その資金源か?」
「それだとアコーギと目的が重なってしまう」
「それじゃ宗教的な狙いか? こういってはなんだが、ダーワル神の教えは真面目なものじゃないんだぞ」
俺は首をかしげた。「俺はあまり詳しくないんだが」
「一言で言えばダーワル神は遊興・享楽の神だ」
「遊びに真剣なわけだな」俺は現代地球で聞いたことのある言い回しを思い出した。
「そういう意味じゃぁここの王家とはそりは合わないな。今の国王陛下はとても真面目で国民の生活のことを考えている。いささか節制が過ぎるといわれるぼどだ」
「それなのにダーワル神殿が興隆を?」俺は目を細めた。「おかしくないか?」
プレヤは鼻で笑った。「お前は人間というものをもっと学ばないといかんな」
「?」
「苦しいときに真面目なだけでは息が詰まるじゃないか」
「なるほど」
「だがそれだけだな。ボーオウの狙いがわかる話じゃない」
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