第3話


「御指導ありがとうございました」


「ふふ。真陽まおちゃんたら、私は指導出来る程、料理上手ではないわよ」



「ご謙遜を。私が子供の時から私は村瀬さんのご飯で育ってきたんですよ?村瀬さんの料理が私にとっての母の味なんです」


「まあ!そんな事、言われたら楓ちゃんに怒られちゃうかも。ふふふ」



「いや、だってウチのお母さん、全く料理しないし、してる所見た事ないし」


「あ〜、まあ、かえでちゃんは、なんと言うか、ねぇ?頭は良いのだけれど、克人かつとさんのお嫁に来た頃から、料理だけは、その、えーと…なんと言えばいいかしらねぇ……そう、覚えが、覚え?が悪かったのよ。最初の頃は克人かつとさんの為に頑張っていたのよ?」



「いえ、村瀬さん、普通に下手っぴで問題無いんで。どんなに取り繕っても、下手っぴは下手っぴなんですよ、うちの母は。でも、うちの母って、薬学部の教授とかしてるのに、料理下手って謎なんですよね?手先が不器用って訳ではない筈なんですが…」


「ああ、そうね。でも楓ちゃん、お菓子作りは得意よね」


「お菓子作りと料理ってたいして違わないと思うんですけどねぇ?」



「あら?お菓子作りは正確性が大事よ?家庭料理は、作り手の好みや誰にお出しするのかによっても変化するでしょうし、多少は感覚的なものになるのではないかしら」


「そんな事いったら、お料理の方は、毎回味が変わっちゃうじゃないですか?秘伝の味とか無くなっちゃいます!」



「まあ、その辺りは、料理人自身の味覚頼りになるのかしら?それでも、家庭料理は食べる人にあったものが1番なのだから、いつでも試行錯誤で記憶に残る味に近づけてゆくものよ。そして、それこそが作り手の、その人の家庭の味になっていくだから」


「うーん。確かにそう言われるとそうですね。精進します」



「まあそうね、次代に引き継がれる味だとしても多少のアレンジはいいのではなくて?結果が不味くなるのなら、ともかく、美味しくなるのなら、何も問題無いのではないのかしら」


「まあ、それはそうですね。流石、村瀬さん、亀の甲より年の功ですね!」



「それにしても、克人かつとさんもかえでちゃんも忙しそうねぇ。真陽まおちゃん、何時も一人で寂しくない?」


「まあ、何時もの事ですから。それに、私には村瀬さんも居ますし、隣りに誠一せいいち叔父さんは余り居ないけど、さき叔母さんとあずちゃんもいるし、そんなには淋しくはないですよ?」



「なら、良いのだけど。何かあったらちゃんと頼ってね?勿論、最初に頼るのはご両親によ?」



「……はい。一旦持ち帰って検討させていただきます」


「それやらないヤツじゃないの!もう真陽まおちゃんたら」



「ふふふ」


「ふふふ、では私はもう帰るわね」


「はい、お疲れ様でした」



 村瀬さんが帰って家に1人になる。


 村瀬さんだって主婦なのだから18時には帰宅する。



 村瀬家の夕ご飯は家で作って持ち帰って貰っている。


 村瀬家御家族と同じ物を家の家族が食べていると思うと何だかほっこりする。



 後で美味しく頂こう。


 どうせ今日も2人共遅いのだろうから。



「さてと、お風呂入っちゃお」



 着替えを取りに部屋へ向う。



「昨日の裏クエスト面白かったな。ああいうのなら私ももっとハマれるのにね」



 実は昨日、余りに暇だったのでお風呂とご飯を適当に済ませ[トワイライトプリンセス]にINしたのだ。


 村瀬さんだって毎日来るわけではないのでね。



 そこで何と裏クエストなるものを発見した私は、久しぶりにやりごたえのあるクエストにどっぷりとハマってしまったのだ。


 内容的には、記憶パズル的要素がふんだんに盛り込まれていて、かなり私好みの内容だった。



 お陰でクエストトップクリア。


 裏クエストだった為なのか参加人数も少なく、私は500人以上ものライバルを蹴落として、アイテムゲットしたのだった。



 ただ、アイテムは後日お楽しみにとの事だったので未だに正確なアイテム内容情報は知らない。


 ただ、運営の裏掲示板には目玉が飛び出す程のアイテムと書かれていた。



 因みに、この運営の裏掲示板も効率良くゲームを丸裸にしている時に見つけた。


 しかし、改めて見ても公式の裏サイトとは何ぞやである。



「はぁ〜、一体、何貰えるんだろ。SSR確定の召喚カードとかだったら、超ラッキーなんだけどなぁ〜。私、課金勢じゃないから、課金ゴリ押し系の力押しクエストって辛いんだよねぇ」



 ちゃぷん



「はぁ〜、気持ち良い〜。疲れがとれるねぇ〜」



 ちゃぷちゃぷ



「明日のお弁当何入れようかなぁ〜」



 ちゃぷん〜ざばぁぁーー



 湯船で伸びをして軽くストレッチをする。



「うーん。よし、もう上がろ」



 ガチャ



「ふぅ〜、暑っつい〜」



 バスタオルで身体の汗とお湯を拭き、寝巻きに着替える。


 着替えた後、部屋のマットレスの上で更にストレッチをしていく。



「ふっ!ふぅ!ふっ!よし!」



 明日の準備をチェックし、髪を軽く三つ編みしてリボンで巻く。


 それから徐ろにベッドに転がりヘッドセットを被る。



「ではでは、今日も行ってみようかな?」



 こうして、私は再び[トワイライトプリンセス]の世界へと旅立つのだった。

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