第25話
足湯が利用できる場所は、階段があり降りて川沿いに木の板で作られた床が設置されていて温度が気に入ったらそこに腰をかける感じだった。
源流から近いほど温度が高いようで、温度が高い所には注意書きの看板がされている。
腰掛けるところは結構濡れていて、渋々ミナトか手持ちのタオルを敷こうとしたらアキに止められた。
「まぁ、待ちなさい子供達。
言い出しっぺは、私だから下に敷く物くらいは用意しているわ。」
アキはピクニックに使うような小さめのシートを足元に敷くと先にそこに腰をかけて足をつける。
いや、やっぱりママやん。
そう喉に出かかったミナトだったが、アキの満足そうにしている顔を見るとどうでも良くなった。
オオダに続くようにミナトも足湯に足をつける。
耳を澄ませると川の流れる音や木々の擦れる音が聞こえた。
暖かい季節なら鳥や虫の鳴き声も加わってかなり賑やかになるのだが、水の音が好きなミナトは雑音が少ない今が1番好きだ。
「これがマイナスイオン…。」
「水辺や森にマイナスイオンがあるとは聞くけど、温水には発生するの?」
ミナトがポソッと言った後にアキがそう聞いてきた。
原子記号もろくに覚えていない人間に聞いちゃあかんよ。
困った時は、ほにゃらら先生だね
ミナトがそう考えながらスマホをとりだそうとしたらオオダが口を開く。
「分子に強い衝撃が加わって分かれた電気がプラスイオンとマイナスイオンだから、温泉でも川のように流れていたら大なり小なりあるんでない。
それに今は葉っぱが落ちたけど、山の中だし足湯から出てなくても時期によってはマイナスイオンでいっぱいよ。」
ふんふんとご機嫌に足をパタパタとさせているオオダ。
なんで自分の友人は知識が豊富なのだろう。
「そういえば、ミーちゃんはレンタカーを借りた時があったんだっけ。
何処に行ったの?」
「結構脱線したね。
レンタカー借りたのは…たしか免許取ってすぐの話だったかな。」
当事者のくせにうる覚えかよ。
そんな野次を聞きながらミナトは話をつづけた。
分からない駅周辺の道や慣れていない山道、ちょっと奮発した旅館の話など。
「けっこう映えそうな話だけど…男っ気がある話じゃないから面白みに欠けるわね。
…75点。」
アキは、ふぅ…と息を出してそう言った。
「人の楽しい思い出を聞いておいてその態度か貴様ぁ。」
「いけない、バスの時間が近いわよ。
皆、撤収!!」
はぐらかされるように、そういったアキ。
まぁいい、バスの中でみっちり問いただそう。
そう胸に秘めたミナトは、アキの後に続くようにバス停に向かって歩いた。
因みに、その秘めた思いうっかりバスの中で寝てしまった為に叶うことは無かった。
ミナトさん旅行記 登別編 鷹美 @astta1x224
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