第24話
「ミナトが声をだして笑うのは珍しいね、どったん?」
「いやだって…こんなん笑うわ。」
首を傾げて問いかけるアキに対してこれまでの経緯を話す。
光の当たり具合のせいで後光が差した妖怪、天井と床のギミックにまんまとやられた自分、余韻ガン無視のアキのダッシュ。
因みにアキはと言うとやや疲れ気味でベンチに座っている。
「因みにオオダドンは?」
「ギミックに近づき過ぎると反撃しそうだから、壊してしまわないかドキドキしてた。」
ドキドキの種類が違うんだよなぁ。
なんでいつも思考回路が武道家なんだよ、お前さん学生時代の活動も武道から程遠い園芸部やったやん。
「オオダドンもスリルを味わったようで何よりです。」
「うむ。」
諦めたような表情を浮かべるミナトとフンスと満足そうに胸を張るオオダ。
アキはそんな二人を眺めた後にハッとした表情で腕時計をみた。
「チームお馬鹿さん、そろそろここをでないと札駅行きのバスに間に合わないわよ!!」
「お馬鹿ブラック了解!」
いや、なんでオオダはそんなノリノリなのだろう…。
そしたら、私はホワイトなのだろうか。
そんな事を考えながらも、タクシーに乗って登別温泉まで戻る。
「今さらだけど、3人だったら行きもタクシーで良かったんじゃね?」
「シャラップ。
微妙にバスの方が高いのよ。」
ほんの数十円差だろうに。
ミナトはその言葉を飲み込んで、タクシーの座席に乗り込む。
11月中旬ならギリギリ雪は積もっていない。
バスを待つ時間帯でミナト達は登別の天然の足湯に向かって行く。
昨日は到着の時間の都合で後回しにしたが、せっかく来たのだからと無理やり予定に組みこんだ。
温泉街から足湯までは歩いては行けるものの、それなりに距離がある為にギリギリの所までタクシーで移動してそれから歩いて向かう。
タオルは足湯の場所に一切ない為、小さなタオルは必須でミナトとオオダは事前にアキに何度も持ってきているか聞かれている。
「ふふふ、心配性だなアキも。
ウチは、そんなチャチな忘れ物はしないさ。」
持ってきたタオルを見せつけるようにクルクルと回しながらオオダは歩く。
道は、木でできた簡易の柵があり迷わないようになっておりガチガチに整備されているわけではないが、可能な限り自然の外観を崩さないように作られていて冒険心のようなものを擽られた。
「紅葉だったら、よかったのにね。」
アキは枯れた木々を眺めながらそう言った。
パンフレットやレビューの写真を見ても映えるからか、紅葉が多く寒暖の差が激しい北海道で綺麗に色づきやすいから実物で見てもかなり幻想的だろう。
「いいや、そのジーズンの水辺だとアイツらがホバーしてるからウチは今がいいな。
気温が低いと温泉も気持ちがいいし。」
アキの話に対して忌々しそうにそう返したオオダ。
オオダの言うアイツは、秋の風物詩みたいに可愛くイラストされることもあるトンボ。
アキは、可もなく不可もない人らしいが、オオダとミナトは苦手だ。
「まぁ、トンボの他にも虫刺されを気にしなくて進めるのはいいね。
それに気温が寒い分、温泉が気持ちいいから私はこのタイミングの方が好きだよ。」
そう歩いていると、柵の向こう側からモクモクと煙が薄らと上がっている。
柵を眺めると、川のような物が見えた。
恐らくここが目的地の足湯だろう。
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