第13話 話し合いましょう
「意外とあっけなかったですね」
短剣を腰の鞘にしまい、嘆息します。
先程、槍を持った方のお相手をさせていただいたのですが、案外簡単に死なれてしまって残念です。
もう少し楽しめると思っていたのですが。やはり、槍は攻撃が単純になってしまいがちですから、人に向けて扱うのは難しいのでしょうか。それに、単騎でしたし。
「さて、あなた方はどうされますか? 確か、アンバーさんとライアさん……でしたっけ?」
女性2人はまだ残っています。片方……多分ライアさんは怯えた顔つきですが、アンバーさんの方は瞳に闘志が見られます。
「私を殺すのもあなた方の自由ですが、何も利益はありませんよ? 私、宝物は持っていませんから」
「でも、仲間の敵討ちっていう名目はありますよね」
あら、本当に勇ましいですね。
私をじっと見つめるアンバーさんは琥珀色の髪に琥珀色の瞳で、肌は白くツノも獣耳も生えていません。
パッと見純人間ですから、シーク側の方でしょうか。
それにしても、2人とも身長が高いですね。
あ、私が低いんでしたっけ? セナさんも低いので、つい自分がどうだったか忘れてしまいます。
「あの、あなたはシーク陣営ではないのですか……? だいぶPKに慣れていらっしゃるようですけど」
こちらはライアさんです。ライアさんは白装束に身を包んでいて、例えるならば教会の修道女でしょうか? 白ですけど。
「いいえ。私はハイドですよ?」
「「ハイド……!」」
とても驚かれてしまいました。そんなに驚くことでしょうか? このイベントは2つの陣営が入り混じるのですから、どちらでも不思議はないと思うのですが。
「その見た目で、ですか?」
「ああ、普通のエルフだからですね?」
セナさんも説明していましたね。ハイドでダークではない、普通のエルフは珍しいと。
「抗議は、妖精さんにお願いします。選んだのは私ではないですから」
お二方とも首を傾げていますが、構っている暇はありません。
私は一刻も早く琥珀に会い、セナさんと合流しなければならないのですから。
「さあ、お二人はどうされますか? 戦いますか? それとも――」
「共闘しましょう」
「……?」
突然のアンバーさんの提案に、今度は私が首を傾げる番です。まさか、共闘の申し出を受けるとは思いませんでした。
「どうしてその判断になったのか伺ってもよろしいですか?」
「る……じゃなくて、あなたに勝負を挑んでも勝てないこと。それと、あなたを殺す意味がないこと。その他諸々ですね」
「なるほど。賢明な判断、ありがとうございます」
「ちょっと、アンバーっ?」
あら、仲違いですか? ライアさんがアンバーさんを後ろに引っ張っていってなにか耳打ちします。
それを冷静にアンバーさんが応対すると、2人は戻ってきました。
覚悟を決めた様子のライアさんが切り出します。
「しばらくの間だけ、共闘しましょう。それで構いませんか?」
「ええ。私も急いでいたところでしたし、全然それで構いませんよ」
「では、あなたのお名前を教えて下さいませんか?」
そう言われれば、まだ自己紹介していませんでしたね。
「私はるりです。どうぞよろしく」
「えっ」
「どうされたのですか?」
アンバーさんが驚いています。
「いや、なんでもないです。………………まさか本当にそんなことがあるわけないよね……そうだよね……」
「では、行きましょうか? もう冷え切ってしまいましたし」
困惑した様子のアンバーさんを置いて、私は雪の上をさくさくと進んでいきました。
▼▼▼▼▼
「よし、これで一個目」
俺、セナはトレジャーボックスを閉じ、膝を立てて伸びをする。
ゲーム開始から15分。それまでに1個見つけきれたのはなかなか上出来ではないかというのが俺の評価だ。
しかしこの砂漠地帯、隠れる場所が少なくて折角のロリ化も役に立たない。
俺としてはさっさと移動してここを離れ、別の地帯――できれば森林辺りにでも行きたいものだ。
あいつ、るりがどこにいるかは全く検討がつかないが、なんとか合流したい。相手するのは面倒だが、万が一接近戦に持ち込まれた時にあいつの腕は信頼できる。
今回のイベントルールで、1時間経てば全プレイヤーの現在地が表示されるようになるから、それでどうにかこうにか探すしかないか。
「よっと」
それにしても、歩きづれえな。
砂に足を絡まれながら歩くが、一向にエリアの境界線は見えてこない。
確かマップでは、砂漠エリアの隣は湿原と雨林だったはずだ。で、都市エリアを挟んだ向こう側が氷山エリア。
湿原もこの調子で歩きづらかったら嫌だな。取り敢えず雨林を目指すか。
そこにあいつがいてくれたらいいんだが。
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